鼻のムズムズが止まらない、鼻水が止まらない、もうたまらない!とドラッグストアに駆け込むと、点鼻薬が棚にズラッと並んでいます。「いったいどれを選べばいいの?」というご質問をよく受けます。また「ぜんぜん効かない!」という声もよく耳にします。実は誤った用法で、スプレーするほど症状を悪化させている人が少なくありません。

価格帯が広い点鼻薬、高いほど効くの?

市販の点鼻薬は、安い物で500円程度、上は1500円ぐらいと価格差が大きい薬です。この価格の差は、主成分の差でもあります。点鼻薬の主な成分は次の3つ。

・ステロイド剤 

・抗ヒスタミン剤 

・血管収縮剤

このうち鼻炎にもっとも効くのは「ステロイド剤入り」の薬です。ステロイド剤が入った花粉症の市販薬は、現時点では点鼻薬のみです。

鼻炎とは、鼻に炎症が起きて腫れている状態です。これに効果があるのがステロイド剤なのです。アトピーの方は病院で処方されるのでご存知だと思います。処方されるステロイド剤にはさまざまな種類がありますが、市販の鼻炎薬に使われているのは「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」というステロイド剤がほとんどです。市販薬として出ているステロイド剤は、安全性や有効性の点から限られたものを少量使うことになります。

「コンタック鼻炎スプレー」「パブロン鼻炎アタック」「AGアレルカット」「ナザールαAR」などがベクロメタゾンを有効成分にした点鼻薬です。ステロイド剤が入っている薬は値段も高い。1000円以上するのはこのタイプです。

「抗ヒスタミン剤」は炎症を抑えてかゆみを鎮める成分です。成分としてはケトチフェンフマル酸塩やクロルフェニラミンマレイン酸塩、クロモグリク酸ナトリウムなどが代表的です。

そして「血管収縮剤」。

一見、もっとも即効性があるのが血管収縮剤を主な有効成分とした点鼻薬です。鼻腔の腫れている血管をキュッと絞めて細くするので、鼻の通りがよくなるのです。有効成分としてはナファゾリン塩酸塩が有名です。ナファゾリン塩酸塩をメインの有効成分にしている点鼻薬は500円ぐらいから買えるものが多いです。

現在市販されている点鼻薬には抗ヒスタミン剤と血管収縮剤を配合したものが多いです。炎症を抑えるには少々時間がかかりますが、血管収縮も入っているので即効性も持たせようという薬です。

というわけで価格は、血管収縮剤メインの薬<抗ヒスタミン剤メインの薬<ステロイド剤入りの薬という順で高くなります。

効き目は、そのとらえ方によりますが、炎症を治す薬としては「ステロイド剤入り」が一番で、即効性なら「血管収縮剤」が一番です。もっとも効くといってもあくまで市販薬ですので、処方薬と比べると有効成分の配合量が少なく、効能も限定的です。

スプレーするほど炎症が悪化するわけ

点鼻薬で注意してほしいのは用法・用量を守ってほしいということです。

特に血管収縮剤がメインの点鼻薬は注意が必要です。初めは効いても、使いつづけているうちにだんだんと効果は弱くなります。効かないからといって、1日に何回も、1回に何プッシュもする人がいますが、これは絶対止めてほしい使い方です。効かなくなるだけでなく、炎症を悪化させてしまうおそれがあるからです。

噴霧したときは血管が収縮して鼻水が止まるでしょう。しかし強制的に血管を絞めているだけなので、血管はやがてまた元の太さに戻ります。そこで鼻水がダーッと流れることになります。そこでまたスプレーを噴霧。これが悪循環を呼びます。スプレーするとシュッ!と勢いよく薬剤が鼻腔に当たります。これが刺激になって鼻炎を悪化させてしまうのです。

スプレー“シュッ”➡鼻の粘膜に刺激➡炎症が悪化➡鼻が詰まる➡スプレー“シュッ”➡鼻の粘膜に刺激➡炎症が悪化

点鼻薬も薬です。用法・用量は「1日6回が限度、1回1噴霧」など決まっています。不思議なもので飲み薬だと用法・用量を守るのに、点鼻薬や点眼薬(目薬)などの外用薬だと守らない、という傾向が見られます。なぜでしょう。おそらく飲み薬は口に入れるので、守らないとこわいという感覚があるのでしょう。でも外用薬は局所的に効くのだから、大丈夫だろうという感覚なのだと思います。

しかし、飲み薬だろうと外用薬だろうと、薬の成分が血管に入って吸収されるのは同じです。末梢の血管にまで浸透して初めて効くのです。「点鼻薬だから何回使っても大丈夫だろう」なんてことはありません。用法・用量を守らなければ、効能が落ちるだけでなく、副作用のリスクも高まります。しょっちゅうスプレーをシュッシュッしていること自体が副作用と言ってもいいでしょう。

血管収縮剤入りの点鼻薬を使っていけないわけではありません。実際、ドラッグストアに並ぶ点鼻薬の多くにはナファゾリンが入っています。ナファゾリンがメインの点鼻薬は低価格で手に取りやすくもあります。だからこそ気をつけてほしいと思います。使いすぎたときのリスクを知って、本当に必要なとき、必要な分だけ使ってください。

点鼻薬をつづけてスプレーすると、かえって炎症が悪化するおそれあり。注意!



■賢人のまとめ
点鼻薬の効き目はステロイド剤入りが強く、血管収縮剤入りは即効性があります。いずれも使いつづけているうちにだんだん効果が薄れ、用法・用量を守らず使っていると鼻炎を悪化させてしまうので注意してください。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。