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もくじ

どんなクルマ?
ー 後輪駆動化によって50kgを減量

どんな感じ?
ー 純度が増したステアリングフィール
ー ドライビングに深く関われるシンプルさ

「買い」か?
ー 後輪駆動モデルの序章となるか

スペック
ー アウディR8 RWSのスペック

どんなクルマ?

後輪駆動化によって50kgを減量

12年に及ぶモデルライフにおいて初めて、アウディ製のミドシップ・スーパーカーに後輪駆動モデルが追加となったことは、前回一度ご紹介した。

このR8 RWSは、クワトロとなる標準モデルから、センターデフと、フロントのドライブシャフトとプロペラシャフトを取り外し、軽量化と純粋性を高めたモデル。フロントタイヤを駆動するシステムを降ろすことで、50kgの軽量化を実現している。キャビン後方のべアボーンフレームを外したり、アルミニウム製のボディパネルを段ボール製に置き換えでもしない限り、実現できない数字だと思う。

もちろんR8のシャシーやボディはそのままで、むしろ純度の増したロードレーサー然としたクルマとなった。ただ、車内には依然として分厚いフロアカーペットが敷いてあり、パワー・レーザーシートとフル装備のインフォテインメント・システムを装備している。

そして、もしアウディ・スポーツのエンジニアが単純に4輪駆動システムを外しただけなら、RWSはまともに走ることはできなかったはず。ドライビングマナーを維持するため、サスペンションのジオメトリーを見直し、フロントのアンチロールバーは太いものに交換されている。クルマの持つ性質を若干アンダーステア方向に振り、安定性を高めているのだ。さらに、標準のR8と比較すると、全面的な見直しも施されている。

ライバルで見ると、スパルタンなポルシェ911 GT3と、スポーツ志向のカレラGTSの中間に位置するモデルといったところか。

ここまで読むと、クルマの特別感からして、価格もそれ相応に上がっていると想像できるが、実際のスターティングプライスは11万2450ポンド(1686万円)。実はRWSは、R8のラインナップの中で、最も安価なモデルなのだ。

では改めて、英国の道での走りを確かめてみよう。

どんな感じ?

純度が増したステアリングフィール

ちなみに、RWSは「Rear Wheel Series:後輪駆動シリーズ」の頭文字。さまざまな事案を考慮した上で、RWSクーペはR8のラインナップに加わることとなったはずだ。

ドリフトをしやすくしたことで、R8の魅力を高めたわけではない。実際、ミドマウントされたV10がワイドなリアタイヤを強く路面に押し付けるから、ドライ状態ではクワトロのR8とトラクションの面では大きな差はない。一般道ではオーバーステアに振る自由度は、それほど高くないといえる。

その代わり、フロントタイヤへ駆動力が伝わらなくなったことで、純度が増したステアリングフィールは楽しさに溢れている。

4輪駆動システムには一長一短がある。ステアリングからの入力に加えて、ドライブシャフトからの駆動力も加わることで、標準のR8のステアリングフィールには一貫性がなく、読みにくいところがあった。

そこに可変するダイナミック・ステアリングが装備されるとなると、さらに純然さは削がれてしまうのだ。もちろんRWSにはオプションリストにも備わらない。

このRWSは直感的に操舵でき、路上でのライン取りもずっと容易だから、ドライバーとクルマとの一体感も高い。重量が軽くなった分、車体前部の慣性も少なくなっているから、エイペックスに向けて飛び込んでいく気持ちも高まる。

ドライビングに深く関われるシンプルさ

R8 RWSにはアダプディブダンパーの設定はないが、乗り心地は非常によく詰められている。ガチガチに締め上げられているわけでもなく、充分な減衰力でしっかりと姿勢を維持。低速域では硬さが目立つのは仕方ないが、速度を上げれば荒れた路面でもスムーズにいなしてくれる。

アダプディブダンパーとダイナミックステアリングが備わるクワトロのR8と比較すると、RWSのピュアでシンプルな性格が輝いて見えてくる。機能が省かれたことで、クルマがドライビングに介入してくる度合いが減り、自らがドライビングに関われる領域が広がったということだ。

トランスミッションは極めて高速に変速を完了し、レスポンスにも優れたツインクラッチのみで、マニュアルは備わらない。自然吸気の5.2ℓV10エンジンはマスターピース級のできで、高回転まで、全域にわたってスムーズ。また、特に車外から聞くエグゾーストノートは、息をのむほど素晴らしい。

ひとつRWSに関して触れなければならない点は、アウディのV10ユニットの中からハードコアな611ps仕様ではなく、少し穏やかな540psの方が搭載されているということ。ただ、直接交互に乗り換えて確かめない限り、気づかない差異だとは思う。

また、生産台数はわずか999台の限定で、クーペとスパイダーのボディスタイルが選択可能となっている。

「買い」か?

後輪駆動モデルの序章となるか

R8がターゲットとしている層には、間違いなくお勧めできる。

このレビューで記した以上に、RWSからは様々な奥行きのようなものを感じられると思う。より煮詰められたシャシーに軽量化された車重、グリップ力の高いタイヤ、高出力のエンジン。走りでの真のライバルは、911 GT3となるだろう。

R8 RWSはシーンによらず、最もスリリングなドライビングを味わわせてくれるR8だと思う。今後も購入する機会は得られるだろうか。先は読めないけれど、「Rear Wheel Series:後輪駆動シリーズ」という名前から察すると、アウディから後輪駆動のハイパフォーマンスカーが登場する、序章なのかもしれない。

このR8 RWSが、1度限りの限定車で終わらないことを、強く望みたい。

アウディR8 RWSのスペック

■価格 11万2450ポンド(1686万円) 
■全長×全幅×全高 ― 
■最高速度 320km/h 
■0-100km/h加速 3.7秒 
■燃費 8.0km/ℓ 
■CO2排出量 283g/km 
■乾燥重量 1590kg 
■パワートレイン V列10気筒5204cc 
■使用燃料 ガソリン 
■最高出力 540ps/7800rpm 
■最大トルク 54.9kg-m/6500rpm 
■ギアボックス 7速ツインクラッチAT