「頭の回転が遅い人」にはどんな特徴があるのでしょうか(写真:Tomwang112/iStock)

すばらしく頭の回転が速く、次々に結果を出し、「いったいこの人の頭はどういうつくりになっているのだろう」と思わされる人もいれば、知識も豊富で決して頭が悪いわけではないのに、なぜかまったく成果を出せない人もいる。
本稿では、どうすれば頭の回転を速くして結果を出すことができるのか、『頭の回転を速くする45の方法』から抜粋しお届けする。

方法1:頭に求めるパラメータを増やす

車の運転がどんどんうまくなっていく人と、いつまで経っても運転が苦手な人がいる。同じように仕事でも、日々生産性が上がっていく人、どんどん成果を出す人と、いつまで経っても進歩しない人がいる。この違いはどこからくるのだろうか? これは、「頭に求めるパラメータの数」を増やしているかどうかの違いだ。

パラメータとは、「結果やプロセスに影響を与える変数」のこと。車の運転であれば、「車幅感覚」「ブレーキの踏み方」「ブレーキを踏む回数」「停車時のスムーズさ」「縦列駐車の正確さ」など、運転技術を高めるためのさまざまなパラメータがある。

車の運転がどんどん上手になる人は、車に乗るたびにこれらのパラメータを増やして運転している。1つのパラメータが無意識のうちにうまくできるようになったら、さらにパラメータを増やすというサイクルを繰り返している。たとえば、まずは車幅感覚に慣れることを意識し、そのうちに、車幅感覚は意識しないでも運転できるようになる。そうすると次はブレーキの踏み方に集中する……というように。こうやって運転技術は高まっていく。

一方、いつまで経っても運転がうまくならない人は、運転するときに何にも意識せずに毎回同じように運転を繰り返してしまう。だからパラメータが増えていかないのだ。

パラメータが1つならば、脳はその条件を満たすようにはたらけばいいので、比較的負荷が低い状態で動作することが可能となる。「車幅感覚」しか制約がないのであれば、「車幅感覚」にだけ気をつけているような状態である。しかしこれでは、全体としての運転技術は向上しない。あらゆる技術に通じるためには、同時にいくつもの「パラメータ」を満たさなければならない。頭に求めるパラメータを増やす必要があるのだ。

仕事においても同じことが言える。たとえば、プレゼンの資料を作るとする。ボリュームは20枚くらいのスライドだと設定したとしよう。この仕事で求められる最初のパラメータは、「締め切りまでに」「時間どおりに」という、「時間」のパラメータだ。

与えられた時間が20時間だとすると、10時間で作成することを目標に設定。10時間はバッファ、もしくはブラッシュアップの時間とする。これで「時間」パラメータが設定できた。

最初は「時間」パラメータだけで精いっぱいかもしれないが、慣れてくると頭の負荷が下がってきて、あまり意識しないでもできるようになる。この次にパラメータを増やすことで、頭の負荷を上げなければ進歩はない。

2つ目のパラメータとして、「論理性」を設定することにする。ロジックに矛盾がなく、プレゼンを聞く側がより納得感を受ける資料作りを目指す。

さらに3つ目のパラメータとして「意外性」を入れてみよう。時間に制限をかけながら、かつ論理性の高いものにしなければならないうえに、「意外性」まで演出しなければならない。

プレゼンにかぎらず、あらゆる仕事は精度を高めようと思えば、いくらでもパラメータを増やすことができる。

このようにパラメータを増やしていくことで、頭に負荷をかけることができ、頭の回転を速くすることができる。ここではプレゼンの資料を例に説明したが、頭に求めるパラメータを増やすことで、そのほかの分野の能力も向上する。それが、知識や技術の運用能力、すなわち「素アタマ」の性能が上がるということなのだ。

いきなり3つ、4つとパラメータを設定しても、頭がパニックになるだけだ。はじめは1つからでもいい。何事も一足飛びにはうまくならない。一つひとつ、プロセスを楽しみながら取り組めばいい。

方法2:ツールに頼らずにアイデアを出す

アイデアマンはよく頭の回転が速いと言われる。誰も考えつかないようなアイデアをパパッといくつも思いつくのだから、確かにアイデアマンは、ビジネスで付加価値が高い。それではアイデアマンは、世の中にあふれているアイデア発想ツールに頼っているのだろうか?

優れたアイデアマンが、マンダラチャートやKJ法などの、アイデア発想ツールを使っているとは到底思えない。AKB48をはじめ、数々のヒット作を生み出している秋元康氏が、机のうえでツールを使っているだろうか。また、良いアイデアがアイデア発想ツールによって生まれたという話も聞いたことがない。

ここで勘違いしてほしくないのは、アイデアを生み出すためのツールがすべて意味がないと言っているのではないこと。アイデアを生み出すのに、ツールに頼る問題点は2つある。

第一に、「このツールさえあれば良いアイデアが生み出せる!」と思っているその態度や姿勢が問題だ。ツールというのは、使えば使うほど、実はアイデアから外れていく。なぜなら、アイデアとは思いつくものであって、ロジカルに考えれば生まれてくるというものではないからだ。

良いアイデアが生み出せる絶対的なツールなど存在しないし、そんなツールがあるだろうと考える態度や姿勢が、アイデアが出てくるのを阻害してしまう。

第二に、そもそも「ツールは、アイデアを生み出すもの」という考えが間違っている。ツールでアイデアが出るなら、誰でも同じ良いアイデアが出せるはずだ。

ツールはアイデアを出すためにあるのではなく、頭の中を耕すためにある。つまり、既成概念で凝り固まった頭の中をいったんぐちゃぐちゃにし、その後にアイデアが生まれやすい素地を作っているのだ。では、ツールに頼らないでアイデアを出すためには、何をすればいいのだろうか。

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ゼロに何を掛けてもゼロだ。アイデアも同じで、インプットもろくにないのにアイデアが生まれるはずはない。アイデアを生み出すための材料(知識)は絶対に必要だ。アイデアを思いつかないと言っている人の多くは、単にインプットが不足しているだけなのだ。

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同じ知識を、いつも同じ角度で見ていても新たな発想は生まれない。アイデアを生み出すためには、違うものを、違う角度から見る必要がある。

本屋ではいつもは行かないコーナーをのぞいてみる。たとえば、いつもビジネス書売り場ばかり見ているのであれば、たまに建築や物理学など、自分になじみのない分野の棚を眺めると、新たな発想が湧きやすい。

また、わざと通勤経路を変えてみたり、いつも乗っている車両を変えたりするだけでも、新たな発見があり、アイデアが出やすくなる。

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「ひらめき三上(さん じょう)」という言葉をご存じだろうか? これは中国の言葉で、ひらめきが生まれる場所は「馬上(移動中の馬の上)・枕上(ちん じょう)(寝ている時)・厠上(し じょう)(厠の中)」という意味だ。「馬上」は現代でいえば、電車やタクシーの中だろう。

つまりひらめきとは、机の上でウンウン考えて生まれるものではなく、気が緩んでいる状態で生まれるということだ。

ただ気を緩めるだけでは意味がない。考えて考えて、思考を詰めて詰めて……。それを緩めた瞬間に思いつくのがアイデアなのだ。

方法3:経験をメタ化する

「一道は万芸に通ず」。これは宮本武蔵の言葉だ。

彼は生涯一度も負けることなく、まさに剣豪というにふさわしい人物だったが、その名声は剣だけのものではない。宮本武蔵は書画にも通じ、また文才にも秀でた人物だった。彼の残した書画は国の重要文化財に指定され、いまも残されている。また彼の著した『五輪書』は、いまも世界中で読まれる名著となっている。

また世阿弥も同じように「一芸は万芸に通ず」という言葉を残している。

これらの言葉の意味は、「1つの道を極めていけば、他の道を理解する力がついてくるものだ」ということだ。確かにある道を極めた人は、多芸の人が多くいる。白隠禅師など、禅を極めた人は書画に通じ、すばらしい作品を残している。

しかし、一方で「専門バカ」という表現がある。1つの分野についてはすばらしいが、他のことだとからきしダメで、常識はずれだったりする人のことを指す。このように一芸に通じながら、万芸に通じる人物に成長する人と、専門バカになってしまう人とでは、何が違うのだろうか。

具体的な事象をメタ化する

それは「メタ化できるかどうか」の違いだ。

「メタ」とは、「超〜」「高次の〜」という意味。つまり、対象の背景や高次の情報、より抽象度の高い情報を「メタ〜」と表現するのだ。言いかえれば、その「対象を生み出す、より高次なもの」を指す。「メタ知識」であれば「知識を生み出す知識」、「メタデータ」であれば「データを生み出すデータ」。たとえば「太郎さん」だとすれば、メタ情報として「男性」「日本人」「人間」などが挙げられる。「太郎さん」という具体的な対象に関して、より抽象度を上げた情報がメタ情報である。

1つの分野に関して理解を深めながら、人は日々、具体的な学びを蓄積していく。

たとえば料理人の世界であれば、段取りの仕方、仕込みの仕方、料理を出す間(ま)などがそれにあたる。

「料理は前の料理を食べ終わるか終わらないかぐらいのタイミングで出す」「そのタイミングでちょうど良い温度になるように段取りを組む」

こうした具体的な学びが、

「顧客がもっとも心地よいと感じるタイミングでサービスする」

「顧客を起点として段取りを組む」

というメタ知識に変換されていく。さらにメタ化すれば、

「同じ労力でもタイミングによって効果は倍にもなれば、ゼロにもなる」


「段取りは目的から考える」

という学びにもなる。

普段の仕事で目の当たりにするのは具体的な事象でしかない。具体的な事象をいくら蓄積しても、同じシチュエーションが起こらなければ適用することはできない。具体的な事象をメタ化することによって、あらゆる場面で使える知識となるのだ。

具体的な学びを「メタ化」することで、あらゆる分野に通用する「メタ知識」が手に入る。その分野の一流の人と話をすると含蓄のある話を聞くことができるのは、そのためなのだ。

メタ化のコツはリアルタイム性。目の前で起こっていることを、常に「これはどういう学びになるか」とリアルタイムに考えてみよう。でなければ、すぐに忘れてしまうもの。毎日目の前で起こる具体的な事象を抽象化して蓄積する。これを何年も続ければ、膨大な量のメタ知識が蓄積される。