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プレジデント誌の好評連載「悩み事の出口」。ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、読者の悩みに答えます。今回のお題は「仕事のしすぎ」。出口さんは「『今日もやってやろう』と思えるかどうかが鍵です」といいます――。

■Q:ガンガン仕事をしすぎて自滅することも。ちょうどいい仕事量とは?

――疲れがたまっています。働きすぎなのでしょうか……。

今朝起きたとき「今日も元気だ。よし、やったるで」という気持ちになりましたか? 朝起きたときの気分が「ナイロメーター」です。

――ナイロメーター?

ええ。ナイロメーターとはエジプトのナイル川の氾濫に備えて設置された、水位を測定する施設を言います。

――水(疲れ)が堤防から溢れ出るようなら、もうちょっと抑えたほうがいいってことですか。

そうです。朝起きたとき何か辛くて、仕事をしたくないと思えばtoo muchです。サステイナブルでなければ、いい仕事はできません。20代、30代は、たまに無理もきくとは思いますが。

――この前、「2日間、徹夜をしても平気だった」と上司が得意そうに言っていました。

徹夜して仕事が終わった後、「充実感があった」などと言う人がいます。でも、それがどういう現象か、すでに脳科学者が研究済みですよ。

徹夜をしたり、無理をしたりすると、脳が自分を守るために、モルヒネによく似た「幸せホルモン」を放出するのです。そのホルモンに騙されて、「ああ、俺は頑張った」と気分が高揚するだけで、仕事の生産性は一切上がっていません。無駄な努力です。

■自滅しないちょうどいい仕事量はどれくらいか

――単なる自己満足ですか。

はい。脳のホルモンに騙されているだけですから。

――毎日、終電まで働くみたいな働き方は、身体は平気でも働きすぎなんですかね。

あたり前です。毎日終電で家に帰っていたら風呂に入って寝るしかない。勉強どころか、仕事をリセットする時間もない。迷わず仕事量を減らすことです。

――土日、働くのはどうですか。

別に土日働いても、朝起きたときに元気で「よし、やったるで」と思えるならいいですよ。働き方は自分で決めればいいので。でも、休んだほうが健康のためにはいいでしょうね。

――出口さんは、サラリーマン時代、土日は休まれていました?

ゴルフをしなかったので完璧に休んでいました。

――仕事に行き詰まったり、壁にぶち当たったりしたときは?

そのときは、早く帰ればいいんです。それで、好きな物を食べて、風呂に入って、ぐっすり眠った後に、もう一回考えればいい。頭と体を切り替えなければ、いいアイデアも出ませんよ。仕事の質が低くなる。上司もそれは望まないでしょう。

Answer:朝起きたときに、「今日もやってやろう」と思えるかどうかが鍵です

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出口治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県生まれ。京都大学卒業。日本生命ロンドン現地法人社長、ライフネット生命社長・会長を経て、2018年1月より現職。
 

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(立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口 治明 構成=八村晃代 撮影=市来朋久 写真=iStock.com)