昨年11月、北京の人民大会堂で行われた経済関係のイベントで席を並べるトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(AP)

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 米国と中国の通商摩擦が激化し、「貿易戦争」という言葉まで飛び交っている。

 まず鉄鋼・アルミニウムに高関税をかけるとして口火を切ったのはトランプ米政権だが、米紙は「貿易戦争は米国の企業や農家、労働者も傷つける」と指摘。中国の官製メディアは徹底抗戦を訴える一方で、「対外開放が米国への圧力にもなる」と一歩下がって説き、独紙は「米中の争いでばかを見るのは欧州」と強い懸念を示した。

 「貿易戦争でばかをみるのは欧州かもしれない」−。独紙ウェルトは7日付1面トップでこんな見出しの解説記事を掲載し、「米中の対決の敗者には間違いなく欧州が含まれるだろう」と強い懸念を示した。

 欧州連合(EU)は米国の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の適用を当面回避した。だが、同紙は「EUは第三者のように議論から身を引いた」が、「(米中の)争いから簡単には免れられない」とし、米側が中国の制裁対象である農業を支援すれば、欧州の農産品は競争力が相対的に低下し、不利に働くと例示した。欧州では制裁対象の製品の流入や米中経済の悪化による欧州への影響を懸念する声もある。

 欧州にとり米国は同盟国でもある一方、中国も重要な貿易相手だ。同紙は中国が欧州に連携を求めていることも指摘し、「立場をとらないままでいるのは難しい」と欧州の苦しい胸中を説明。不公正な貿易を通じた中国の影響力増大を阻止するというトランプ米政権の「目的はまったく理解できる」とする一方、「この手段は世界経済全体を大きく損なうだけだ」と嘆いた。

 一方、独紙フランクフルター・アルゲマイネは5日付社説で、輸出大国として米中双方を重要な貿易相手とするドイツにとって「紛争の先鋭化は危険」と指摘。知的財産問題をめぐる米中の制裁発動まで時間はまだあり、ドイツ政府とEUには仲介に動くよう求め、その際には「米国か中国かの決断を迫られる立場に陥らないよう注意すべきだ」ともした。

 同紙は今回の米中対立が「単なる貿易紛争」でなく、「一極から二極化する国際秩序への移行の始まり」ともみる。中国の目的はかつての「中華帝国」の「力」を回復し、「政治、経済、軍事的に世界最強になること」だが、中国はその経済力も国民平均でまだ米国に遠く及ばず、先端技術も欧米に頼る状況で、「中国は自身の利益のため、勝てない貿易戦争に入るべきではなかった」とした。(ベルリン 宮下日出男)