昨年11月、北京の人民大会堂で行われた経済関係のイベントで席を並べるトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(AP)

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 米国と中国の通商摩擦が激化し、「貿易戦争」という言葉まで飛び交っている。

 まず鉄鋼・アルミニウムに高関税をかけるとして口火を切ったのはトランプ米政権だが、米紙は「貿易戦争は米国の企業や農家、労働者も傷つける」と指摘。中国の官製メディアは徹底抗戦を訴える一方で、「対外開放が米国への圧力にもなる」と一歩下がって説き、独紙は「米中の争いでばかを見るのは欧州」と強い懸念を示した。

 通商問題をめぐる米国と中国の対立激化について、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は7日付社説で「専門家は、世界の2大経済大国による貿易戦争が、米国の企業や農家、労働者を傷つけると指摘している」と懸念を表明した。企業収益や労働者の生計の一部が中国との交易に支えられているためだ。

 米政府は4月上旬、知的財産侵害に関する対中制裁案を発表。中国が激しく反発する中、トランプ大統領はさらに、制裁として関税を課す中国製品の規模を大幅に積み増す検討を指示した。中国の習近平国家主席はその後、市場開放策を表明。対立の緊迫感はいったん和らいだ。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は11日付社説で「最大のニュースは、トランプ氏の脅しに対し、習氏が同種の対抗措置で応酬しなかったことだ」と中国の対応を歓迎。ただし、輸入車に対する関税低減や金融部門の投資規制の緩和がすでに表明された政策であり、「自由な市場競争に向けた政策転換ではない」として、中国が本当に実行するのかを注視する必要性を強調した。

 トランプ氏は、貿易相手国に「出し抜かれてきた」との見方から、貿易赤字の削減を相手国に迫っている。NYTは、対中制裁や、鉄鋼やアルミニウムの輸入制限のような強硬な貿易措置を振りかざし、相手国に圧力をかけるトランプ氏の手法を批判。「この政府が中国と効果的で包括的な合意をまとめられるとは思えない」と述べ、合意に必要な術策や外交の欠如を指摘した。

 トランプ政権が求める対中不均衡の是正について、WSJは「中国が譲歩して改革を進めても、(米国の)貿易赤字を即座に減らすことにはならない」との見方を示した。それでも、知的財産の不当な扱いを含めた中国の不公正な取引慣行は「米企業にとって最大の障害だ」と述べ、中国に市場自由化を促す米政府の役割を説いた。(ワシントン 塩原永久)