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●パーソナライズの時代、データをどう組織に根付かせるか

「Leadership(リーダーシップ)」と「Strategy(戦略)」「People(人)」「Process(プロセス・組織)」「Product(製品)」。アドビが推奨するデジタル ガバナンスフレームワーク「L3PS」の要素だ。同社のコンサルティングサービスでは、Digital Marketing Center of Excellence(CoE)というデジタルマーケティングを推進するための中央専門組織設立をサポートするサービスも提供している。

アドビ システムズ アドビ カスタマー ソリューションズ統括本部 プロダクトエバンジェリスト 兼 シニアコンサルタントの安西 敬介氏は、同社のコンサルティングサービスについて、「(同社が)ソリューションや製品を売っているが、それらはあくまで導入した企業がデジタルマーケティングや顧客体験をデジタルでどう作っていくかのためのツールでしかない。包丁や鍋だけで良い料理が作れるわけではないように、ツールを使う人や組織をドライブさせるのがCoEだ」と話す。

もちろん、このサービスはアメリカからスタートしたものだが、日本の組織に最適化している。アメリカでは、各職能に特化したスペシャリストが多いが、「日本は企業がゼネラリスト(スペシャリストの対義語、広く領域を見る人)を作る傾向にあり、どちらかと言えばナレッジ・マネジメントが重要になる。そういった部分を日本風にアレンジしている」(安西氏)。

○アドビが教える"デジタル時代"のあり方

冒頭のL3PSは、デジタルマーケティングが文化として根付く体制を構築することを中心に

一貫性を持ったマーケティング戦略

プライオリティ付け

プロセスのワークフロー設定

ナレッジ、ベストプラクティスの収集評価

外部情報内部情報のキュレーション

自社に必要な外部情報の収集

各部門の集約、解釈

など、マーケティングに関連した行動要素を網羅して定着させる。デジタルマーケティングと言えばサイトの各種KPIを考えがちだが、「戦略がうまく行っているか、成熟度の度合い評価などをしっかり見ることが大切」(安西氏)だという。

デジタルマーケティングの基礎は、データに基づいた行動計画や判断だ。いかに計画を精緻化できるか、それはデータ・ドリブン・マーケティングが組織に定着しているかが鍵となる。L3PSでは、それぞれ確認項目を用意し、レポーティングする。それが成熟度として現れる。

とある顧客である銀行の例では、ログインユーザーの地域属性を参照して、地域ごとのプロモーションキャンペーンをログイン時にパーソナライズメッセージを出すようにした。ページの詳細を見た場合は、インバウンドコールさせたりなど、従来では部門ごとに縦割りで終わっていたキャンペーン施策を、組織全体で関連させるようにしている。

「デジタルマーケティングの全体戦略も重要だが、1to1のターゲティング戦略も作り込まないと駄目。ここがまだまだ難しく、各社が考えきれていない。ターゲティングのケースでありがちなのは、メインターゲット層に対してこうセグメント切って、という考えは持っていても、コミュニケーションの出し分けのような考え方が組織として成熟できていない。属性アプローチに加えて、インテントデータやサイト行動など、広くデータを組み合わせてパーソナライズする方法を考えなくては」(安西氏)

この銀行は、"文化定着"のためにL3PSのメジャーメントを受けたところ「成熟度評価では組織に踏み込んで指摘してくれることがありがたい。自社を客観的に見ることは難しく、通信簿のよう」(同銀行役員、Adobeインタビューより)というメリットを見出したようだ。

ただ、マーケティングに対する組織改革は一筋縄では行かない。「実際のクライアントで言えば、誰でも知っている、とある企業はおよそ3年かかった」(安西氏)。変化できる企業は安西氏が見る限り、1年間で効果がみえるという。逆に「1年で大きく変わった様子が見えてこないと、難しいと思う」(安西氏)。

●なぜ1年が"試金石"なのか

1年が試金石である理由は、マーケティングの枠組みを超えて「デジタルトランスフォーメーションが急速に進む中で、ほとんどの業界が無関係ではいられなくなる」(安西氏)というメッセージだ。仮に、現時点で業界トップに位置している企業であっても、米タクシー業界に対してUberが殴り込んだように「競合含めて置いていかれる可能性がある」(安西氏)。だから、「自分たちはイケてる企業だ」という空気を1年で作っていけるのか、そういう意味での「勝負の1年」なのだろう。

もう少し具体的に現在のデジタル化の波で言うと、スマホ利用率は言わずもがな高まるばかり。しかも、モバイルとの親和性が高い業界の場合はPCよりスマホのトラフィックが多い。そうした環境では、従来はWebサービスのみの提供だったとしても、アプリ体験を含めて対応できるかが「かなり重要なポイント」(安西氏)。

前述の銀行は、将来的にさらなるパーソナライズメッセージの進化を目指している。それは、オンラインからオフラインまで統合し、一貫したメッセージを伝えられるかまで検討している。現在のテクノロジーでは実現できない部分もあるだろう。ただ、将来のロードマップまで組織一体となって目標を見据えるのであれば、近くもなく、遠くもない未来のはずだ。

「マーケティングがデジタルになる、というだけでなく、私たちも製品名を『Adobe Experience Cloud』と変えたように、顧客体験を含めてデジタル化が進んでいる。顧客体験が軸になるならば、それはオンラインに限らない。意識改革のみならず、関係部署を含めて『サービスをどう売っていくか』だけではなく、『お客さまのニーズ』という顧客視点をどれだけ持てるか。視点を変えることが重要」(安西氏)

安西氏は、コンサルティングチームとして「ビジネスが上手く行くのかだけでなく、その先の顧客体験をどう上手く行くようにするのかが重要と捉えている」という。アドビのデジタル製品を使えるようにするだけでなく、その先の先、さらにその先の体験をどう作り出すか。安西氏らがやることは、もはやアドビの領域を超えた使命なのかもしれない。