初音ミクの生みの親が仕掛ける北海道版「SXSW」

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 北海道は食がおいしく、人も良いし、豊かな場所だ。一方で課題もある。北海道は農産物や水産物がたくさん収穫できるが、そのまま出荷し、食としての付加価値が高められていない。

 北海道での「おいしい、楽しい」といった付加価値を作り出す人材が少ないと感じる。北海道は開拓地であり、国の開発予算が付く時代が長く続いていく中で、「誰かが仕事を持ってきてくれる」というのが根付いてしまっていた。

 北海道は今年、命名150年目を迎えた。かつては開拓スピリットを持った方々がいて、そこをもう一度復活させたい。クリエーターと言うと音楽やゲームなどのイメージだが、付加価値を付ける人材として、おいしい農作物の生産者らもいわばクリエーターだ。

 北海道は1次産業が中心で、一般的なクリエーティブ産業を育てることまで議論されてこなかったこともある。そんなクリエーティブな人材の創出などを狙い、考えたのが「No Maps(ノーマップス)」だ。

 ノーマップスは世界的なイベントである「SXSW」に触発されてもいるが、2016年にプレ開催し、17年に本開催した。私は実行委員長を務めるが、札幌で全世界の方々が技術を発表したり、つながったりできる場にしたかった。

 農業や漁業とITを連携させるためのイベントを実施したり、先端技術を既存の産業にかけ合わせたりして、新たな産業のあり方を考える機会にした。

 ノーマップスは音楽フェスや映画祭もあり、芸術祭の印象になってしまうが、これは産業イベントだ。発表者や参加者らとの交流も図り、北海道で新たなビジネスの創出につなげたい。

 新たな産業を生み出すためには、若者らのアイデアを生かした起業などの流れも作りたい。ノーマップスでは、北海道経済産業局と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるピッチコンテストも開催している。

 これからは地に根ざした事業の時代だ。道内にスタートアップ企業の量は多くない。末永く続いていくように北海道経産局などによる高校生らへの起業に関するセミナーも実施してきた。

 北海道は、しがらみが少なく、企業や自治体、大学が近い存在でもあり、ノーマップスも開催できた。新たなテクノロジーの実証実験の場とし、新技術の「開拓地」となるべきだ。

【略歴】伊藤博之(いとう・ひろゆき)85年北海道大学職員に採用。95年クリプトン・フューチャー・メディア設立。13年藍綬褒章受章。北海道出身、53歳。