曖昧表現では子どもに伝わっていないかもしれません(写真:maroke / PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

入学、入園をはじめ、新年度が始まり、新しい学級での学びがスタートするこの時期は、わが子とほかの子どもとを比較する機会が増えます。式典で目にする行儀の善しあしや、保護者会などに出向いて耳にするさまざまな情報に、気持ちをかき乱されることも多くあるのではないでしょうか。一部だけを切り取った情報に振り回されたり、たまたま目にしたことで、全体を判断することは危険です。


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一人っ子や核家族で、どうしても閉鎖的になりがちな育児では、ちょっとした情報に振り回されやすくなります。正解のない育児だからこそ、何が正しくて、何が間違っているのかつねに不安に思い、確かめたくなる気持ちは自然なものだと思いますが、心配のあまり子育てに悪影響を及ぼすことも否めません。一所懸命さが裏目に出ないようにするコツをお伝えします。

人は経験のないことは「できない」

「あの子はできるのに、うちの子はできない」。これは、焦りにつながる危険なフレーズです。

そもそも成長過程には個人差があり、早ければよいというものでもありません。もちろん、発達の時期に合わせた教育やその時々に身に付けたい習慣はありますが、トレーニングすればできるようなことについては、やっていなかっただけで、これから取り組めば問題ないこともたくさんあります。

昨日までやっていなかったことを「なぜできない」と問うのはおかしな話です。○○ちゃんは、半年かけて少しずつできるようになり、その半年後の状態を見て、やってきていない状況のわが子と比較することは間違っています。人は、経験のないことはできません。

同じように、よく「子どもが興味を持ち始めたらやらせよう」という言葉を耳にしますが、そもそも知らないことに興味を持つことはありません。子どもが反応しないのをいいことに何もしないのは、考えものです。子どもが興味を持てるように、いろいろなことを体験させたり教えたりすることが大切です。

そして、それは忍耐強く、繰り返し行う必要があります。大人でも、知らないことを1回聞いただけでは理解するのは難しく、何度も繰り返すことによって意味がわかったり、身に付いたりしていくものなのですから。特に経験値の少ない子どもには、大人の何倍ものかかわりを要します。そのためには、親の気分次第で声をかけるのではなく、コンスタントに働きかけることが重要です。

子どもの話し方や態度に腹が立つことがあれば、まず母親自身の態度を見つめなおしてください。子どもにそんな態度を取っていないという方もいらっしゃるでしょう。しかし、子どもに対してだけではなく、夫やそのほかの家族、身近な人への接し方はどうでしょうか。

子どもの多くは、母親の態度や口調をそのままコピーしています。ですから、それを注意することで改めさせようとするのは、逆効果です。どんどん悪循環にはまっていきますので、注意が必要です。母親が、意識的に自分の言動を改めていくことによって、自然に改善される傾向が強いので、「そんな言い方してはダメ」「その態度は、何なの!」という前に、母親自身の言動を振り返ることが大切です。ご自身でも気づかなかった、ちょっとした癖や言い回し、態度などを再認識するきっかけにもなります。意識することができれば好循環が起こり、子どもだけでなく、身近な人間関係もよい方向へ変化していくと思います。

それ伝わってますか?

「いつも言っているのにやらない」「何度言ってもダメ」。こんなお悩みもあるかと思います。でも、残念ながらそれは伝わってません。たとえば「ちゃんとして」という声掛けを電車の中などでもよく耳にします。

「ちゃんとする」っていったい何でしょう? こういった表現の仕方を「曖昧表現」といいます。お互い何となくわかっているつもりになるけど、実はすれ違う可能性が高い表現方法です。具体的にどうすればよいのかというやり取りがいっさいなされていません。ということは、自分の思いだけで発している言葉であって、相手には伝わらないのです。「足をバタバタ動かさないようにしてね」「しっかり手すりにつかまってね」など具体的に伝える必要があります。

また、「ちょっと待って」の「ちょっと」とはどのくらいの時間なのでしょうか。5分、10分、15分……人によって時間感覚は違います。「ちょっと待って」と声掛けしたのに、すぐ騒ぎ出す子ども。「ちょっと待っててって言ったでしょ!」と怒るママ。もう、子どもにとっては「ちょっと」の感覚を過ぎているわけです。

パン屋さんで、店員に「まもなく焼き上がりますので、少々お待ちください」と言われて、2〜3分を想定していたのに10分待たされたら、イライラするのではないでしょうか。しかし、「焼き上がりまで10分かかります」と言われたら、10分待てますよね? これを「時間の構造化」といいます。

どのくらい要するのか具体的に伝えることが大切です。時計の読める年齢はもちろんのこと、読めなくても伝えてください。繰り返すことによって読めるようになります。このような感覚に左右される曖昧表現は、たくさんあります。思いを伝えるためには、具体的な言葉を使うことが鉄則です。

さらに、騒がしい子どもに、母親自身も大きな声で「静かに!」と言っている場面もよくあります。言っていることとやっていることが大きく矛盾しているので、受け止める側は、とても難しいです。伝えたい内容と、伝える態度を一致させましょう。

具体的な言葉で、シンプルに穏やかに伝えることができれば、しつけはグンと楽になります。今までのかかわりを一気に変えることはできないかもしれませんが、かかわり方を意識すれば、じわじわと確実に好転してきます。するとママのイライラも減り、さらに穏やかに、忍耐強くかかわることができるようになります。

わが子をほかの子と比べるよりも、もっと大切なことに目を向けて、心身ともに健やかな成長をサポートし、信頼と愛情にあふれた母子関係を築く一助にしてくださることを願っています。