東京インターナショナル・ギフト・ショーの様子(写真:サンパック)

テレビ番組でタレントの所ジョージさんが取り上げたことをきっかけに大ブレイクしている足裏マッサージ商品があります。浴室で足裏を洗いながらマッサージもできるフットブラシで、商品名は「フットグルーマーグラン」といいます。税込み価格は8980円で、販売しているのは大阪府吹田市に本社のあるサンパックです。


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昨年10月22日、毎日放送の「所さんお届けモノです!」で紹介されるやいなや、会社の電話は鳴りっぱなし。ネットでの申し込みも入れて、30分で数カ月分が売り切れたそうです。

「放送は日曜日でしたが、念のため数名の社員がスタンバイしていました。しかしそれでは足りず、文字どおり大慌ての対応でした。在庫はすぐにパンクしました」。そう語るのは、広報・営業担当の平山剛之常務。この商品、放送前の9月に「東京インターナショナル・ギフト・ショー」に出品したときにも手応えを感じたそうですが、その予想をはるかに上回るフィーバーぶりでした。

「気持ちいい!」

その後、明石家さんまさん司会のフジTV系「ホンマでっか!?TV」(3/14)にも所さんがゲストで登場。自腹で買ったBESTBUYとして、再度紹介してくれました。スタジオで、ブラックマヨネーズの小杉竜一さんが裸足になって体感し、「気持ちいい!」を連発。これでまた多くの追加注文があったそうです。

筆者は、この会社の創業者・青山健祐会長、そして息子さんの青山総一郎社長とは以前から親しくさせてもらっています。それで、この商品の1世代前の「フットグルーマー」を使わせてもらったこともありました。そのときは、気持ちがいいのでそこそこ売れると思いましたが、ちょっと高いかな、というのが正直な感想でした。税込みで6980円。類似商品の多くが3000円以下という中で、販売に苦戦しそうな感じがあったのです。

今回の新商品はそれよりさらに2000円高いのに、それでこの大ヒット。やはり、所ジョージ、明石家さんまといった人気者が司会の番組で紹介されたおかげでしょうか。お話を聞くと、確かにテレビ番組の効果は絶大ですが、それに加えて、あまり表には出てこない企業のこだわり、そして地道な努力の積み重ねがあったことがわかりました。

サンパックは、1971年にグループ会社である三和紙器の研究開発部門が分離した会社です。なおこの三和紙器は、1964年に青山会長が創業、従業員425人(2018年3月現在、パート含む)で段ボール等の製造販売をしています。段ボールといっても「紙粉除去段ボール」という特殊な製品で、飲食品、衛生品の梱包用に使われる“安心段ボール”です。


フットグルーマーグランと青山社長(写真:サンパック)

この紙粉除去技術の遺伝子が、現在のフットグルーマーグランにも受け継がれているといえそうです。なお、その用途が食品用であることからミスタードーナツやコメダ珈琲店などと親しく、現在15店のフランチャイジー(加盟店)を関西中心に運営しています。意外とわれわれの身近にある会社なのです。

前述のように、サンパックは、この三和紙器から1971年に分離独立した会社です。従業員は47人で、家庭用品、パッケージの企画開発・販売を手掛けます。兵庫県丹波市に樹脂成形工場を持ち、ODM(委託元のブランドで自社企画製品を製造・販売すること)で清掃用具、家庭用品などを製造しています。

今から23年前、同社は「商品開発を通じて新しい生活文化をつくりたい」と標榜。長年の研究経験を生かし本格的に自主ブランド商品の開発に着手しました。

そこから、前述の「フットグルーマー」シリーズ、さらにツボをステンレスボールで刺激する「キュートボディ」、挟んでもみほぐすローラー「ハナ」シリーズなど20以上のアイテムが誕生しました。

さらなる気持ちよさとホンモノの健康効果を追求

フットグルーマーの前身が開発されたのは、今から20年以上前。その商品アイデアという意味では、50年近く前のある社員の個人的体験にさかのぼるそうです。

始まりは、その社員(元役員)が高校時代、風呂の床のひび割れに足を擦(こす)ったときの「気持ちいい!」という体験からでした。この気持ちよさを求め、入社後に作ったトライサンプルは、逆さにしたデッキブラシでした。でも泡立って気持ちよく洗えるものの、ブラシ間にカビが発生してすぐにお蔵入りに。衛生面を改善した次の試作品は、実際にせっけんをつけて洗うとうまく泡立ちません。

しっかり泡立てるには「空気とせっけんと水分」のバランスが大事だとわかり、それらがうまく混ざるように試行錯誤を繰り返しました。その結果、見事に泡立つ「足洗おっ!」が誕生。記念すべきオリジナル商品第1号として、1996年に発売されたのです。

その改良版が女性への販売を意識した「リフレステ」です。リンゴ型で風呂場の床に固定できる吸盤付きの商品でした。次の3代目が、2012年に発売され現在も取り扱っているフットグルーマーです。ブラシの先端に研磨剤を塗布した初めての商品です。ブラシ一つひとつ、手作業で丁寧に仕上げていきます。特許も取得し、究極の気持ちよさを求め、最適の弾性、研磨力、耐久性にこだわりました。

こうして足洗おっ!から数えて20年、シリーズ累計で50万個以上を売り上げました。派手さはないですが、年2万個以上は売れるロングセラー商品です。まさに地道に売り上げを積み上げてきたのです。

そして第4世代がフットグルーマーグランです。さらなる気持ちよさとホンモノの健康効果を追求したサンパック開発陣の自信作です。そのマッサージ効果は以下の3点だそうです。

血流改善

アンチエイジングケアの第一人者(銀座医院抗加齢センター長・久保明博士)の実証では、3週間のフットグルーマーグラン使用で足指の毛細血管の状態が健常化することが確認されました。

足の健康科学の第一人者(阿久根英昭・桜美林大学特任教授)の実証では、1カ月のフットグルーマーグラン使用により足裏から膝下までの血行が促進され、皮膚表面の温度も上昇したそうです。いわゆるゴースト血管(血液が届かず消滅する毛細血管)になりそうな部分の血行を促進する効果があるようです。

角質除去

サンパックの社内試験によると、研磨剤を塗布したしなやかなブラシは、研磨機能のないブラシと比べ研磨力が70倍あります。足裏、側面、指間のどこにもフィットし、古い角質やそこに潜む菌を除去します。足裏にある常在菌を除去すれば蚊に刺されにくくなる、との報告もあります。意外な副次効果があるのです。

ストレス解消

理化学研究所・片岡洋祐博士の指導の下、フットグルーマーグランを2週間毎日入浴時に使用してデータを解析したところ、足の軽快度が約6倍、気分スッキリ度が約1.5倍アップしたという結果が出たそうです(主観的気分測定システム「KOKOROスケール」で計測)。フットマッサージで、入浴のリラクゼーション効果がさらに高まったわけです。

足指の間まで気持ちよく洗える構造に


フットグルーマーグランの使用イメージ(写真:サンパック)

こうした効果をさらに高めるため、フットグルーマーグランでは従来のフットグルーマーに比べ、ブラシボリュームを35%アップ。さらに洗い心地を追求して本体上部のブラシを大幅に長くしました。

こうすれば、上部では足指の間まで気持ちよく洗えてリラクゼーション効果が増し、一方下部では短いブラシが古い角質をしっかりと除去してくれます。また往復10万回に及ぶ剥離耐久テストも実施。その高い技術力と品質は、2015年度発明大賞功労賞はじめ多くの受賞歴が物語っています。


フットグルーマーグランのパッケージ(写真:サンパック)

デザインにもこだわっており、デザイン会社「GRAPH」の北川一成社長が参画しています。

カラーバリエーションは、従来の一般的なピンク、グリーンから、ムーンライト(蛍光イエロー)とサンシャイン(蛍光オレンジ)の未来的な2色を選択。特許であるブラシ先端をアピールして、ほかと明確に差別化するための色です。これも国内に自社工場を持ち、ブラシの先端の色を自由に変えられる技術があってこその改良です。

商品のパッケージにも高級感を演出、透明のパッケージの側面には幅広いメタリックグリーンの箔押しを施しました。製品の色合い、パッケージの構造、ともに他社がマネしにくいデザインとして北川氏が提案し、開発陣が応えました。

原価アップを値段に反映すべきか…

次に議論になったのは、価格についてです。機能性を高めデザインも一新したことによる原価アップを値段に反映すべきか否か、社内では賛否両論がありました。最終的には新しい価値の創造を前面に押し出すことにして、2000円アップの価格設定で売り出しました。結果は冒頭に書いたように、テレビ番組での紹介を機に注文が殺到。今でも多くの引き合いがあるそうです。

「高すぎるのでは?」という心配は、製品自体の優秀さと周到な販売戦略により杞憂に終わったといえそうです。

テレビに紹介されるために何か特別の働きかけをしたのか、と聞いてみました。どうすれば人気番組で商品を取り上げてもらえるのか、興味があったからです。

「昨年9月に出展したギフトショーで、テレビ取材スタッフに注目いただいたことがきっかけです。もともと商品には絶対の自信がありましたので、その魅力を最大限伝えるためのブースデザインをGRAPHさんに依頼しました。そのブースが会場内で評判になり、それがきっかけで所さんの番組紹介にもつながりました」(平山常務)。

地道な広報活動の積み重ねによる成果といえます。

同じようなことは、別の商品でもありました。


ツボをステンレスボールで刺激する「キュートボディ」(写真:サンパック)

テレビ朝日系の人気刑事ドラマ「緊急取調室」で主演の天海祐希さんが、ミーティングの最中に首筋をマッサージするシーンがありました(2017年6月1日放送)。そこで使われたのが、先に述べた自社開発商品「キュートボディ」(税込1980円)だったのです。これも売り込みに行ったのではなく、番組のスタッフが小道具として採用してくれたようです。製品の力が後押しをし、広報活動はあくまで自然体です。

ただこのエピソードを筆者が知ったのは、同社広報室の女性(西河舞さん)が、折に触れて配信してくれる広報メールを読んだから。地道な広報活動の積み重ねがあってこそ、伝えたい情報が浸透していくのだ、と思いました。

「会社が潰れないで良かった」

最後に、意外な話を聞きました。フットグルーマーグランの爆発的ヒットの後、経営陣は「会社が潰れないで良かった」と囁きあったというのです。通販サイトが品切れ状態となり、顧客注文に応えられない危機的状態。何とか増産して乗り切りましたが、そのときの経営幹部の危機感は大きかったようです。たくさん売れたときに、そのことを喜ぶだけではなく、顧客のニーズにきちんと対応できなければ会社は潰れてしまう、という焦りも感じていたわけです。

丹波にある工場では1000万円以上投資して新しい金型が増設。成形機の更新にも、数千万円レベルの投資をしました。同社の規模にしては多額の設備投資といえます。これだけの投資を行ったのは、ロングセラーになる、という自信の表れでしょう。ただしリスクはあります。欠品を起こさないだけの商品供給態勢を整えなければダメだ、という意識のほうが勝っているからこその大投資ともいえます。

同社(サンパック)の経営理念の冒頭に、「つねに信用を重んじ心を大切にすることから商取引ははじまるものと知り、損得よりも善悪を考えることによって企業の社会性を追求」とあるのですが、経営幹部をはじめ社員の皆さんは、まさにその経営理念を実践しているようです。