JR三江線の運行最終日の3月31日、大勢の人に見送られる江津駅発の最終列車(写真:共同通信)

島根県の江津(ごうつ)と広島県の三次(みよし)を結ぶJR三江線は多数の地元住民や鉄道ファンに見送られながら3月31日で運行終了となった。廃止直前こそ車内は連日超満員となったものの、2016年度の1日1km当たりの平均利用者数(平均通過人員)はわずか83人にすぎなかった。


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2019年4月には北海道の石勝線夕張支線(新夕張―夕張間)が廃止されることが決まっている。夕張支線の2016年度の平均通過人員もやはり83人だ。

旧国鉄時代には、平均通過人員が4000人を下回ると、鉄道が持つ大量輸送機関としての役割を発揮できないためバスへの転換が妥当とされていた。しかし、現実には全国のJR路線のうち平均通過人員が4000人を下回る路線は4割を超える。

10年前のワースト1、2位はすでに廃線

道路整備による自動車へのシフトや地方の人口減少で、ローカル線の利用者の減少が加速している。新幹線や都市圏の収益でこうした閑散路線を支えているというのが現状だ。今から10年前、つまり2008年度と現在とでJR各線の利用状況を比較してみると、10年前に利用者が少なかった路線の多くがさらに過酷な状況に置かれていることがよくわかる。

2008年度における平均通過人員が最も少ないのは岩泉線(茂市―岩泉間)の49人だった。岩手県の山間部を走り昔から利用者数は少なかったが、沿線の道路事情が悪く、それまで廃線を免れてきた。しかし、2010年に土砂崩れが発生し運休になると、その後復活することなく2014年に廃線に。現在は、岩泉線の押角トンネルを道路用トンネルに転用する工事が行われている。

岩泉線に続く2位が三江線で、平均通過人員は2016年度と同じ83人だった。つまり、2008年のワースト1、2位は10年後には姿を消したということになる。


大糸線は区間で明暗が分かれる

3位は長野県の松本駅と新潟県の糸魚川駅を結ぶ大糸線のうち、JR西日本(西日本旅客鉄道)が管轄する南小谷―糸魚川間で170人。2016年度の平均通過人員は100人と、利用者が4割も減った。JR東日本(東日本旅客鉄道)が管轄する松本―南小谷間の平均通過人員が同期間内に3364人から3179人へと5%減で持ちこたえているのとは対照的だ。


大糸線。利用者数が低迷し、廃線の危機にある(写真:alps / PIXTA)

同じ大糸線なのにJR東日本区間とJR西日本区間では、なぜこうも利用者数が違うのか。JR東日本区間は人口23万人の松本市があり通勤・通学路線の役割を担うほか、黒部ダム、白馬といった観光地を沿線に抱える。一方のJR西日本区間は、南小谷と糸魚川の交流人口がそもそも少ないうえに、北陸新幹線の開業で北陸本線がJR西日本から経営分離されてしまったことも大きい。JR西日本にとって大糸線は自社のどの路線ともつながらない飛び地のような路線になってしまった。

北陸新幹線開業前の2010年、JR西日本の佐々木隆之社長(当時)が大糸線の今後について「地元と議論したい」と発言したことが地元に波紋を投じた。それ以降、JR西日本は何も語らないが、県や沿線自治体の危機感は強い。

4位はJR北海道(北海道旅客鉄道)の留萌線(深川―増毛間)の188人。そのうち、とりわけ利用者の少ない日本海側の留萌―増毛間が2016年に廃止された。残る深川―留萌間についても2016年度の平均通過人員は228人と厳しい。2019年度には並行する高規格幹線道路が全通し、鉄道から自動車へのシフトがさらに進みそうだ。JR北海道は「当社単独では維持することが困難」として、バスなどへの転換について地元と相談を開始したいとしている。


木次線を走る「奥出雲おろち号」。利用促進につながるか(記者撮影)

5位は島根県松江市と広島県庄原市を結ぶ木次線(宍道―備後落合間)の267人。2016年度の平均通過人員は24%減の204人となった。三江線の隣にある路線でもあり、「三江線の次の廃線候補」として注目が集まる。ただ、JR西日本は観光列車「奥出雲おろち号」を木次線に投入し、地元も観光列車を企画するなど利用促進を図っている。

ユニークな列車の投入で集客増

こうした努力が無に帰すことはない。6位の予土線(若井―北宇和島間)は平均通過人員が2008年度の280人から2016年度には333人へと増えた。四万十川沿いを走る風光明媚な路線だが、風景だけに頼らない試みが功を奏している路線の一つだ。


予土線を走る「鉄道ホビートレイン」。新幹線0系を模したデザインが秀逸(記者撮影)

全国的にも有名な新幹線0系を模した「鉄道ホビートレイン」をはじめとして、リアルな造形で有名な海洋堂のフィギュアを車内に展示する「海洋堂ホビートレイン」、さらに「しまんトロッコ」と、ユニークな列車を続々と投入したのが、利用者増につながった。フリーきっぷ利用者が平均通過人員を押し上げている側面もあり、このレベルの改善では路線収支が盤石になったとはとてもいえないが、利用者を減らす地方路線が多い中では大健闘といえる。


名松線。2016年3月、多数の沿線住民に見送られ、運転再開後の一番列車が出発した(記者撮影)

7位は三重県を走る名松線(松阪―伊勢奥津間)の333人。2009年の台風被害で家城―伊勢奥津間が運休し、一時は廃線も検討されたが、沿線自治体が復旧費用を支払うことで決着、2016年に運転再開にこぎ着けた。

8位は北海道の日高線(苫小牧―様似間)の355人。2015年に起きた高波による土砂流出の影響で、鵡川―様似間が運休中だ。利用者数が低迷している割に復旧費は86億円と試算されており、経営の厳しいJR北海道にはとても払える金額ではない。運行中の苫小牧―鵡川間の2016年度の平均通過人員は463人と利用者が少なく、「鉄道を維持する仕組みについて地域の皆様と相談を開始したい」(JR北海道)という状況だ。

9位は福島県を走る只見線(会津若松―小出間)の400人。2011年の豪雨の影響で会津坂下―小出間が運休し、復旧工事が完了した区間から順次運行を再開しているが、会津川口―只見間は現在も運休したままだ。2017年にようやくJR東日本と自治体の間で完全復旧に関する合意が結ばれた。会津川口―只見間は線路などのインフラを自治体が保有し、JRが運行のみを担う。復旧費用は自治体が3分の2を負担、全線復旧は2021年ごろと見込まれている。

10位は岩手県を走る山田線(盛岡―釜石間)の404人。2011年の東日本大震災の影響で宮古―釜石間が運休中。現在JR東日本が復旧作業を進めており、2019年春の完了後は三陸鉄道に譲渡される。

東日本大震災による被害から復旧断念

こうして見ると2008年度に利用状況の悪い上位10路線のうち、1位の岩泉線と2位の三江線は全線が廃止。4位の留萌線は一部廃止。8〜10位の日高線、只見線、山田線は災害を契機に長期間の運休区間が生じている。全線が運行しているのは、大糸線、木次線、予土線そして廃線の危機を脱した名松線の4線だけだ。

JR北海道はすでに、利用状況の悪い路線について、地元と存廃に関する議論を開始しつつある。JR東日本やJR西日本は新幹線や都市圏の在来線の収入で低迷路線の負担をカバーしているが、ひとたび災害で運休に追い込まれると、それを契機に存廃論議につながる可能性もある。22位の大船渡線・気仙沼―盛間と27位の気仙沼線・柳津―気仙沼間も、東日本大震災による被害からの鉄路復旧が断念され、BRT(バス高速輸送システム)化された。

路線全体の平均では相応の利用者がいるものの、特定の区間では利用者が著しく少ないという路線も多い。前述の大糸線が好例だ。松本―南小谷間と南小谷―糸魚川間では平均通過人員で前者が後者の約32倍という大きな格差がある。

近年はJR各社が路線別だけでなく、区間別の利用状況も開示するようになった。利用者が少ない区間をどう運営するか、地元と議論をしたいという意識の表れだろう。そこで、2016年度の平均通過人員が極端に少ない区間についても調べてみた。



広島の都市圏では利用者の多い芸備線も備後落合駅付近では客はまばら(記者撮影)

とりわけ利用者が少ないのは、芸備線・東城―備後落合間。平均通過人員はわずか9人だ。芸備線は備中神代―広島間の159 kmを結んでいる。広島―狩留家間は広島都市圏ということもあり平均通過人員が9306人と非常に多く、これが芸備線全体の平均通過人員を押し上げているが、広島から離れるにつれ利用者数は落ち込んでいく。芸備線の他の区間の平均通過人員を見ても、備中神代―東城間が81人、備後落合―三次間が225人と非常に少ない。

九州では日田彦山線・田川後藤寺―夜明間の平均通過人員が299人と低迷している。2017年7月の九州北部豪雨で久大本線と日田彦山線が甚大な被害を受けた。久大本線は急ピッチで復旧工事が進むが、日田彦山線の添田―夜明間は運休したままだ。最近になってようやくJR九州(九州旅客鉄道)と県、沿線自治体との間で復旧に向けた話し合いが始まったが、JR九州が久大本線のようにすぐに復旧工事に踏み切りはしなかったのは、多額の工事費用が見込まれる割には利用者が少ないからという側面もあるのだろう。

廃止決定後ではなく、決定前に乗るべき

三江線の廃止決定が報じられると、多くのファンが詰めかけ、普段は1両だけで走る列車を3両編成に増やしても超満員という日もざらだった。三江線に限らず、2016年の留萌線・留萌―増毛間をはじめ、廃線と伝えられた途端に全国からファンが押し寄せる。いわゆる“廃線フィーバー”だ。乗客が少ないから廃止されるのに、現地では超満員の列車が走っているのでは釈然としない人も少なくないだろう。


留萌線増毛駅。現在、ここまで列車がやってくることはない。写真は留萌ー増毛間の廃線前に撮影(筆者撮影)

ファン心理としては廃線になる前に乗りたいのだろうが、廃線が決まった以上、いくらたくさんの客が乗っても廃線が覆ることはない。だとしたら、廃線の危機にある路線に先回りして乗車すれば、普段とは異なる混雑ぶりに煩わされることもない。むしろ、多くのファンが乗車することで鉄路存続への一助となるかもしれない。