ジュネーブモーターショーに出展されたスバル「ヴィジヴ・ツアラーコンセプト」(筆者撮影)

スバルがアメリカ市場に参入して今年で50周年を迎える。1958年から2008年までは緩やかな微増で10万台前半だったが、2008年を境に急成長。2017年の販売台数は64万7000台とその勢いは止まる気配がない。


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そんなアメリカ市場を牽引しているモデルといえば、「フォレスター」や「レガシィアウトバック」といったクロスオーバーSUVたちである。シリーズの末っ子となる「XV」はもともとインプレッサの販売が伸び悩む欧州/中国からのリクエストで開発されたモデルだが、ふたを開けると世界的に大ヒット、今やベースのインプレッサを超える販売台数を誇る基幹モデルへと成長している。さらに待望の3列シートSUVである「アセント」(北米専売)の登場により、スバル離れを阻止する包囲網が完成した。

スバルのスポーツ系モデルの未来はどうなる?

その一方で、これまでスバルブランドを押し上げてきたスポーツ系モデルはというと、2014年に登場の「レヴォーグ」はレガシィに代わる日本向けの新スポーツツアラーとして登場した。

2017年に大幅改良が行われ、スバル最先端の「アイサイト・ツーリングアシスト」を搭載したものの、基本となる土台は3代目インプレッサから採用のSIシャシー進化版のまま。そんなレヴォーグと基本骨格を共用するスポーツセダン「WRXシリーズ」も同じ悩みを抱える。

経営陣は「いたずらに台数を追わない」と語っているが、売れる地域、売れるモデル優先……という流れに見えてしまう。スポーツ系モデルの未来はどうなるのだろうか?

そのヒントが昨年の東京モーターショーで発表された「ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプト」、今年のジュネーブショーで発表された「ヴィジヴ・ツアラーコンセプト」と呼ばれる2台のコンセプトカーだ。ちなみにヴィジヴ(VIZIV)はスバルの未来像を表現するモデルに冠されるネーミングで、「Vision for Innovation(革新のための未来像)」という意味を表す造語だ。

自動車業界では、ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトは次期WRX、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトは次期レヴォーグのスタイルを先取りしたモデルとささやかれているが、はたしてそうか。

ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトのエクステリアはアグレッシブなフロント周り、ボンネットのエアスクープ、筋肉質なフェンダーや大胆な形状のホイールアーチ、そしてクーペのようなルーフラインと、セダンボディながら攻めたスタイルが特徴である。


リアから見てもボリューム感のあるデザインに仕上がっている(筆者撮影)

一方、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトは全体的なイメージはヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトのワゴン版だが、バンパー周りは開口部を抑えたデザイン、ボンネットのエアスクープも控えめ。リアセクションはオリジナルで、延長されたルーフに角度が寝かされたピラー、フェンダーからリアゲートまでギュッと絞られたボリューム感のある造形に仕上げられ、スポーティさとセクシーさを兼ね備えたデザインだ。

クレイモデルで作成したヴィジヴ・ツアラーコンセプト

ちなみに、筆者はどちらのモデルも実際に見ているが、ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトは全体的な雰囲気がパキパキっとしたソリッドで機械的な印象だったが、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトは共通する部分は多いものの、どこか柔らかさを感じた。その印象をスバルデザインのキーマン・石井守氏に話すとこう答えてくれた。

「ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトはダイナミックな走りをデザインで表現したのですが、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトはそれに加えて“上質さ”をプラスしたかった。

実はヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトはすべてデータで作成したのですが、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトはそれをベースにしながらもクレイモデル(特殊な粘土材を使用したモデル)で作成しました。つまり“ひと手間”かかっています。クレイで作成するのは大変ですが、そのひと手間がツアラーの価値を高めるために必要だったのです」

“視界”や“パッケージング”にこだわった理由

ちなみに、どちらのモデルも純粋なコンセプトカーながらも、何と“視界”や“パッケージング”にこだわっている。それはなぜなのか?

「コンセプトカーを必ず量産モデルにフィードバックさせたいと思っています。そのためにはデザインで機能を表現する部分はコンセプトカーの時点で入れておきたいのです。ちなみに以前発表したヴィジヴ2コンセプトは『XV』、ヴィジヴ・フューチャーコンセプトは『フォレスター』につながっています」

これらを踏まえても、ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトは次期WRXシリーズ、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトは次期レヴォーグを示唆するモデルと考えるのが自然だろう。そもそも、現行レヴォーグの開発コンセプトは「スポーツ“ツアラー”」である。

ただ、気になるのはスポーツ系モデルでありながら、メカニズムに関するアナウンスがまったくないことだ。おそらく、量産モデルのスペックはすでに固まっているのだろう。本当のことを言えばそれがバレてしまうし、かと言ってあからさまなうそを言うと期待を裏切ってしまう……という判断から、何も公表しないことを選んだと筆者は思う。

現在のスバルラインナップはNA(自然吸気)エンジンが主流だが、この2台のパワートレーンはボンネットのエアスクープからもわかるようにターボエンジン搭載が前提だ。

実はスバルは2021年までにターボエンジンの搭載比率を現在の約1割から8割に引き上げる計画を立てている。実はその1弾がアセントに搭載された2.4Lターボで、3.6L-NA(水平対向6気筒)から置き換えられるユニットである。この流れで、2.0L-NAが1.8Lターボ、1.6L-NAが1.5Lターボに置き換わる予定だ。

現在WRX STIに搭載されている2.0Lターボ(EJ20ターボ)は、現在WRX S4/レヴォーグ(2.0モデル)に搭載される2Lターボの高出力版に変更。といっても単に出力/トルクを引き上げたのではなく、競技ユースまで許容するユニットとして一から新設計されたもののようだ。

組み合わされるトランスミッションは現在のCVTから多段ATに変更されるといううわさも聞く。MTは現行モデルではファンからの声と販売台数が比例しないので設定に関しては非常に慎重だが、「アイサイト+MT」はしっかりと対応できるそうだ。

プラットフォームはインプレッサ/XVから採用されたSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用するのは間違いない。ちなみにSGPはインプレッサからアセントまでをカバーするプラットフォームで、ホールベースは2670(インプレッサ)〜2890(アセント)mmまでフレキシブルに設定できるため、2台のホイールベース2730mmはリアの居住性を考えると現実的な値だろう。


次期レヴォーグは大型化する?(筆者撮影)

ボディサイズは、ヴィジヴ・パフォーマンスコンセプトは全長4630×全幅1950×全高1430mm、ヴィジヴ・ツアラーコンセプトは全長4775×全幅1930×全高1435mmとなっている。現行WRXは全長4595×全幅1795×全高1475mm、現行レヴォーグは全長4690×全幅1780×全高1490〜1500mmのため、「WRXもレヴォーグも次期型は大きくなるの?」と思う人もいるかもしれないが、あくまでもデザインコンセプトである。

気になるのは「量産モデルがどうなるか」

現行レヴォーグは欧州に輸出されているものの、その生い立ちは北米市場の要求に合わせてサイズアップしたレガシィに代わるモデルとして日本市場向けに生まれたクルマだ。そのため、このままのサイズで量産されることはないと思うが、スバルのエンジニアから「やはり、欧州で走りを認められることが大事」という声も多く、北米一本足には不安の声も上がっているようだ。

これらを踏まえると、この2台を皮切りに欧州市場へ本格的な挑戦を行う計画があるのかもしれない。

ただ、気になるのは「量産モデルがどうなるか?」である。スバルは「コンセプトカーはカッコいいけど……ね」という意見が多いのも事実だ。今回の2台は世の中の評価も非常に高いので、ぜひ量産モデルでもできるだけ忠実に再現してほしいところである。