ヒルトン・グランド・バケーションが2018年半ばに小田原で開業を予定する会員制のホテルの完成予想図。会員権は400万円〜900万円程度になりそうだ(画像:ヒルトン・グランド・バケーション)

「2017年に150万人の日本人がハワイを訪れた。このうち、9.5%がわが社の顧客だった。日本で商品を立ち上げることで、幅広い顧客を獲得したい」――。

ヒルトン・リゾーツ・コーポレーションのマーク・ワン社長はそういう。

同社は2017年1月に世界大手のホテルチェーン・ヒルトンから独立。現在はニューヨーク証券取引所に上場している。ヒルトン・グランド・バケーションズ(HGV)ブランドで会員制のホテルを展開している。

タイムシェアのほうが客室が広い

手掛けるのは「タイムシェア」といわれる分野だ。既存のホテルが、あらゆる顧客を対象としているのに対し、タイムシェアの場合は、たとえば会員があるホテルの客室を1年間52週に分割し、どこか1週間を占有できる権利を毎年取得するというもの。


「ザ・ベイフォレスト小田原・バイ・ヒルトン・クラブ」は1度に6人まで泊まれるなど、従来のホテルの客室より大型ヴィラとなっている(画像:ヒルトン・グランド・バケーション)

利用者にとっては、権利の取得金(数百万円)のほか、宿泊費用や管理費が別途かかる。

HGVのワン社長は、別荘を持つよりは安く「ヒルトンのブランドの商品で、なおかつ通常より広く、キッチンや洗面所、アメニティが充実した客室を、利用する分だけ購入できることがメリットだ」と説明する。

HGVはハワイで会員向けに8軒の物件を展開する。会員オーナー28.8万人のうち、日本人は5.8万人で、そのほとんどがハワイに物件を所有しているという。冒頭のセリフは、ハワイを訪れる日本人観光客の約10%が同社の顧客だということを示唆している。

そうした中で3月下旬、ヒルトン小田原の中に同社として日本で初めてタイムシェア・リゾート「ザ・ベイフォレスト小田原・バイ・ヒルトン・クラブ」を開業すると公表した。具体的な日程は決まっていないが、今年半ばにはヴィラタイプで6人まで宿泊できる客室を10棟開業する。さらに需要を見ながら100棟まで増築する計画を立てる。


プリンスホテルが2019年に開業を予定する軽井沢のヴィラ。国内の富裕層など新たな顧客層の開拓を目指すという(画像:プリンスホテル)

日本でいえば、タイムシェアホテルは、リゾートトラストが運営する「ベイコートクラブ」や「エクシブ」、東急電鉄系の「東急シェアリング」、東急不動産系の「東急ハーヴェストクラブ」などが存在する。

2019年には西武ホールディングス傘下のプリンスホテルも軽井沢で開始する方針だ。

ヒルトンやプリンスホテルがここに来てタイムシェアを展開するのはなぜなのか。ビジネス面でみると違った光景も見えてくる。

会員権ビジネスは高収益

米ヒルトンの売上高は91億ドル(約9800億円)、税前利益が9.3億ドルなのに対し、HGVは各17億ドル、3.1億ドルと収益性が高い。これはタイムシェアの場合は会員権の販売が大きな収益源となるからだ。

実際、国内最大手・リゾートトラストの決算を見れば、売上高の半分を占めるホテルレストラン事業の利益率は4%だが、3割を占める会員権販売の利益率は16%と突出している。

またホテルは新規顧客を呼び込むために、莫大な広告費を費やしたり、ネットの予約サイトに手数料を払う必要があるが、タイムシェアならば事前の予約状況が読みやすく、外部の予約サイトに手数料を払う必要がないといったメリットもありそうだ。


ハワイの物件には日本人の顧客も少なくない(写真:ヒルトン・グランド・バケーション)

HGVでは会員権を1カ所で取得すると、価格に応じたポイントが毎年付与される。そのポイントに応じて、ヒルトングループや提携先の国内外の宿泊施設が利用可能になる。

ハワイに物件を持つ日本人会員でも、毎年行くとは限らない。「約半分のオーナーが首都圏に居住している」(ワン社長)という利点を生かし、短期の旅行は小田原に、長期旅行はハワイや2021年に開業を予定する沖縄といったリゾート地に誘導する狙いがありそうだ。

しかし別荘を買うより安いとはいえ、小田原の会員権は「ハワイと同じくらいの価格(3.5〜8万ドル)になる見通し」(ワン社長)と決して安くない。

はたして、日本の顧客にタイムシェアは受け入れられるのか。