スペイン領セウタの税関でスーツケースに入れられた8歳の少年が見つかったという前代未聞の密入国事件について、少年の父の刑事裁判が結審しました。当初は不法入国ほう助罪で実刑の可能性がありましたが、なんと罰金刑が言い渡されることで事件は終結しました。

Spain: Father of migrant boy found in suitcase in Ceuta freed - BBC News

http://www.bbc.com/news/world-europe-43132378

2015年5月7日に北アフリカのモロッコにあるスペイン領の飛び地「セウタ」の国境検問所で、重そうにスーツケースを持ち込もうとする19歳の若い女性が職員の目に留まりました。違法薬物の密輸を企てているのではないかと疑った入管職員は、女性のスーツケースをX線スキャンすると、まるで胎児が母親のおなかにいるかのような姿勢でうずくまる子どもの影が見つかりました。



驚いた職員がスーツケースを開封すると、中から少年が現れました。アドゥ君という名のコートジボワール出身の8歳の少年は、「スーツケースの中で息苦しかった」と述べたとのこと。





この女は逮捕され、その後、女にアドゥ君の密入国を依頼した父のアリ・オワタラが逮捕されました。オワタラ被告はスペインの永住権を持っており、妻と娘をスペイン領カナリア諸島に呼び寄せることに成功していましたが、アドゥ君を呼び寄せれば家族全員を養うことができない恐れがあるという理由でアドゥ君の入国は許可されなかったとのこと。そこで、オワタラ被告はアドゥ君を密入国させるべく女に手引きを依頼したというわけです。

裁判ではアドゥ君の密入国をほう助したとして訴追されたオワタラ被告でしたが、法廷でアドゥ君が「父も僕もスーツケースに入れられるとは知らなかった」と発言したことで、スーツケースでの輸送をオワタラ被告が承知していたという証拠が得られないとして、92ユーロ(約1万2000円)の罰金刑の支払いが命じられることになりました。なお、実刑を免れたオワタラ氏は、「全部終わった。妻、娘、息子の私たち家族は、一緒の生活を再開できる」と述べ、スペイン北部で一緒に新生活を送ると話したそうです。