今や社会人の2人に1人が転職している時代。総務省の労働力調査でも2016年の転職者数は306万人。7年ぶりに300万人台の大台に上がったとニュースになり、これからも転職人口は増加予測。

そこで、本連載では、いい転職をした女性と、悪い転職をした女性にお話を伺い、その差は何かを語っていただきました。

田口和美さん(仮名・39歳・東京都出身)

転職回数……1回
転職した年齢……37歳
年収の変化……900万円→350万円
学歴……有名大学法学部卒業

小学校の授業参観、専業主婦の母が恥ずかしかった

私はメガバンクを辞め、今は学童保育を運営する小さな会社で働いています。子供の頃から、バリバリと働く女性がカッコイイと思っていました。子供の時に観たトレンディードラマで、男顔負けに働きキャリアを追求する女性が描かれていて、そんな人になりたいな……と。母が専業主婦で、愚痴をこぼしながらも父と一緒に生活しており、「こんなふうになりたくない」と思っていたことも大きいかもしれません。

覚えているのは授業参観です。来ているお母さんのファッションを見ても、専業主婦とキャリア母の服装は全然違うんですよね。顔つきからして違う。母は時代遅れのレモン色のツーピースに、自己流のまとめ髪をしていましたが、多くの働く母はスタイリッシュなスーツに、ブランドバッグを持って背筋をピッと伸ばして来ていた。「私は将来、母になっても働くんだ」と強く決心しました。

家庭を顧みない父の姿を見て、兄は非正規の道を歩む

母親は、戦後生まれで短大まで進学しています。母の時代の進学率を見ると、女子は10人に1人しか短期大学・大学に進めていない。リベラルな祖父は大学進学をさせたかったようなのですが、母は「女の子はあまり頭がいいと結婚できない」と短大にしたそうです。その後、商社に就職し、2年で大手新聞社に勤務する父と結婚。この父が“世界最高に偉いのは新聞記者だ”と心の底から思っている“ザ・昭和”な男で、家事も育児も母に丸投げ。幼い頃の父との思い出は一切ありません。

私には2歳年上の兄がいるのですが、そんな父親を見ているので、キャリア志向ではなく、楽な仕事を転々としています。例えば、IT関連会社のプログラマーとか、外資系証券会社のサポート要員とか、通信関連会社のシステム開発部門に行っていたこともありました。

それでも都内にマンションを買って、共働きの奥さんと小学生の子供3人(娘2人・息子1人)の育児をしながら幸せそうにしているんですよね。兄は誰もが知る一流大学の法学部を出ていて、ITにも明るい。だから最近まではそんな姿が歯がゆくてなりませんでした。

雑用や下積みがなく、いきなり億単位のお金を扱う仕事に充実感しかなかった

「とにかく大きな仕事がしたい」公務員か金融関連か……

都内の一流大学を出た後、新卒で勤務したメガバンクで15年も働くなんて思ってもいませんでした。私の仕事内容は法人営業で、企業や個人事業主への事業資金の貸し付けを行なっています。メガバンクだから取引先も名だたる企業ばかり。2000円のランチがこの世に存在するとは思えないくらいの金銭感覚の時に、億単位のお金を扱うことに、すごい特別感を覚えました。

それに大学の同級生と話していると、私は雑用やアシスタント業務を一切していないんですよ。メガバンクって、雑用をする職掌の人がいて、その人たちと私達とは階層が違います。商社に行った友人が、最初に電話をとったり、エクセルの入力をさせられたりしているとうんざりしている話を聞くと、キャリアのスタートダッシュができたと満足したことを覚えています。

でも、本当は、官僚になりたかったんです。でも、国家公務員総合職試験(旧一種)が勉強不足で合格できなかった。そこで複数のメガバンク、商社、鉄鋼関連会社を受け、内定をもらったところに進みました。

出身大学名と、父親の勤務先が“有効なアクセサリー”になった

とはいえ、最初は成績が伸びず、本当に苦労しました。3年くらいは勉強の日々だったかな。コーチングや自己啓発に200万円くらい使ったかもしれない(笑)。そもそも“若い女”と言うだけで、あからさまにお客様からガッカリさせる世界です。“女が仕事に来る=ウチを下に見ている”と判断される時代でした。

それでも上司が「コイツは根性があってできる奴なんです」と推してくれたことと、出身大学名に助けられました。相手の担当者の態度がコロリと変わるのです。あとは、父親の勤務先も印象アップのためのアクセサリーになりました。父のことを話すと、多くの人が「ペンは剣よりも強し。正義の人に育てられたんですね」などと言う。実際は家庭を顧みず、イライラすると母親に手を上げ、気に入らないことがあるとモノを投げる専制君主のような男なんですけれどね。

和美さんはデータの分析が得意。融資ができるか判断するためにあらゆる数字を読んでいた。「その習性が災いして、男性からはモテません」と語る。

母親がある日、離婚届を置いて失踪してしまったことで、転職を決意する〜その2〜に続きます。