次期国務長官に指名された元CIA長官のマイク・ポンペオ氏(写真:Leah Mills/ロイター)

トランプ米大統領は、ティラーソン国務長官とマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任。ポンペオCIA(米国中央情報局)長官と外交タカ派のボルトン元国連大使が後任に納まった。これが意味するのは、米国安全保障政策の優先順位や態勢に重大な転換が起きているということだ。トランプ氏によって、ただでさえ危険になった世界はさらに危ないことになりかねない。

トランプ政権では、海外首脳への個人攻撃は日常茶飯事である。密接な同盟国への態度もころころ変わるので、ドイツのメルケル首相をはじめとする欧州の各国首脳は、米国との同盟関係はもはや当てにならないと見なしている。

ポンペオ、ボルトンの危機管理意識は?

その結果、米国が一方的に行った外交的な決定の影響を中和しようと、各国首脳は一段と抵抗を強めており、国際的な協調関係にもひびが入っている。米国がTPP(環太平洋経済連携協定)とTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)から撤退したのは、その最も顕著な例だ。トランプ政権がこれらを“小国による陰謀”だとして一蹴しなければ、TPPとTTIPによって米国の世界的な指導力は一層強固なものとなったはずなのだが……。

こうした中で、ティラーソン氏とマクマスター氏は悪戦苦闘してきた。ティラーソン氏はろくな成果を上げることができず、彼の持つ内気さと傲慢さが致命的な組み合わせであることをあらわにした。フリン氏に急きょ取って代わったマクマスター氏は、トランプ氏と気脈を通じることができず、まったくのお手上げという感じだ。

対照的に、ポンペオ氏とボルトン氏はトランプ氏と意気投合しているのが見て取れる。ただ、2人の危機管理能力は未知数だ。米国の世界的指導力の低下を食い止める能力となればなおさらである。

国務長官は閣僚の中で最も栄えあるポジションだ。CIA長官を短期間務めただけのポンペオ氏が国務長官になるというのは、特進的な昇格といえる。CIA長官に起用される前、ポンペオ氏はカンザス州選出の共和党下院議員として6年間を過ごした。

米国人の多くが同氏の名前を初めて聞いたのは2015年。米国大使が悲劇的な死を遂げたリビア・ベンガジの米領事館襲撃事件(2012年)で、ヒラリー・クリントン国務長官(事件当時)を吊るし上げたときだ。

米朝首脳会談に備える意思はない

一方のボルトン氏はレーガン、ブッシュ(父子の両方)政権に仕えた政府高官だ。トランプ政権は伝統的な政府組織に「闇の国家」のレッテルを張り、官僚を執拗に非難しているが、現政権並みの官僚たたきで有名になったのがボルトン氏だ。同氏は外交タカ派を自認、自国の利益を他国に押し付ける単独行動主義を信奉している。

ボルトン氏とポンペオ氏の超タカ派路線が行動にどう表れるかを知るために長く待つ必要はない。トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長の直接会談が迫っているからだ。金氏の首脳会談の呼びかけに乗るというトランプ氏の賭けが失敗すれば、外交カードは費え、軍事的解決しか手はなくなる。

ボルトン氏とポンペオ氏は、米朝首脳会談でトランプ氏が激怒して席を立つことが最善と考えているかもしれない。首脳会談を成功させるには周到な準備が必要だが、事前に韓国首脳や北朝鮮高官と会って米朝首脳会談に備える意思が、両氏にあるとは思えない。

大統領というものは時として、帽子からウサギを取り出すかのような思いも寄らないマジックを見せるもの。だが、手品のような問題解決は、外交官が小道具を準備した場合にのみ可能となる。ボルトン氏とポンペオ氏が小道具を用意できるかどうかは、まったくもって疑わしい。