堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は本橋直子さん(仮名・39歳・派遣社員)です。

「はじめまして。今、ちょっともやもやしていることがあります。それは母の遺産の問題です。3歳年下の妹が、実家に夫婦で住んでいることをいいことに、母の遺産を独り占めしようとしているのです。父は20年前に病気で亡くなって、母の相続人は私と妹です。ちなみに私は大学から東京に来ていて、盆暮れにしか帰省しません。

先日、母が1年の闘病の末、ガンで亡くなったのですが、お葬式の後、貯金と自宅と合わせ、財産と言うべきものが1500万円程度(自宅1000万円、貯金500万円)もありました。

妹夫婦とその子供たち(小学生の女の子2人です)は、母の闘病に寄り添い、病院の送り迎えをしたり、食事などの面倒を見ていました。

でも、それは亡くなる前のたった3か月程度の話で、妹夫婦は共働きだから、2人の子供たちの世話を10年以上母親に任せて、無償で手伝わせていたことも知っています。母は”孫がストレスでね”と、よく東京の私の家に遊びに来ていました。つまり、母と妹夫婦は「お互い様」という状態だったのです。

それなのに、”母の面倒を見ていたのは自分たちであり、お姉ちゃんは東京で自由にしていたのだから、遺産はたいした額でもないし全て私がもらっていいよね”と言って、手続きを進めています。

確かに、私は仕送りもせず、東京で自由にしていましたが、全く納得がいきません。

妹の言い分もわかりますので、半々とはいいません(本音を言えば自宅を売って半々にしたい)。

家は妹にあげるのはいいとして、貯金は私がもらいたいのですが、その場合はどうすればいいでしょうか。

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは?

これは、遺産分割協議において、「法定相続分」を主張することが考えられます。法定相続分とは、法律で定められた相続割合であり、配偶者が1/2、子供は残りの1/2に相当する分を、頭数の均等割合するものです。

故人であるお母様には、配偶者(お父様)がいないようですので、妹さんと2人だけが相続人であるなら、1/2ずつ受け取る権利があるということになります。

一方、妹さんは「寄与分」を主張するものと思われます。

この、「寄与分」とは故人のために、財産上の給付、無償で事業のための労務の提供、療養看護において財産の維持または増加につき“特別の寄与”をした者が、遺産分割に際し、法定相続分を超える協議で定めた寄与分を控除し、その残りを法定相続分割合で分割して、寄与分権者は控除した分を加えた額をもって相続分とするものです。

もし妹さんの主張を受け、ある程度の寄与分を認める場合、寄与分相当を妹さんは、あなたより多くもらうことになるわけです。

病気の療養看護については、通常、親族であれば行なう程度の療養看護を寄与分とは言いませんが、要介護状況のところ、有料の外部の制度を用いず無償で労力を提供してきたような場合は、その分財産維持に貢献したとみることができる場合があり、相当額につき認められる可能性があります。

全てを協議で合意し決められれば良いがですが、今の様子では妹さんが全部の取得を主張し、あなたはそれを承知できないということなので、直接の話し合いでは容易には合意できないかもしれません。

その場合、いずれかが調停を申し立てて、裁判所関与のもとに協議することを検討なさるとよいでしょう。

もし家を妹さんが受け取るとした場合、協議で決めた分割額からすると多すぎとなれば、別途金銭で清算することもできます。

身内間の紛争は感情的になりがちで、もつれると相互に妥協しないことも多く、何年越しでもめているケースもあります。

もめることを想定し、お母様が生前に遺言を作るのがよかったとは感じますが、すでにお母様は亡くなっているので、本件では妹さんと直接お話し合いをしていくか、調停を利用して、裁判所での解決を目指すことになるでしょう。

遺産相続は、相続額は少ないほどもめるという。裁判所に相談に行くことが解決の糸口に。



■賢人のまとめ
もめそうならば調停を申し立てて、裁判所関与のもとに協議することを検討を。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/