「肉を超えた」野菜バーガー 徹底的こだわりが成功の鍵に

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「人生でやる価値のあることは全て、やり過ぎる価値がある。適度にやるのは臆病者のすることだ」。これは、米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」の実話に基づいた2013年の映画『ローン・サバイバー』で登場したシェーン・パットン隊員の言葉だ。

この言葉は、イノベーションと起業家精神にもよく当てはまる。新しい製品に価値を持たせるには、ただ良いだけではいけない。「徹底的」に良い必要があるのだ。

セス・ゴールドマンは、このことを知っている。コカ・コーラに買収された飲料市場の開拓者的企業、オネスト・ティー(Honest Tea)の共同創業者であるゴールドマンは現在、植物由来の代替肉を生産するビヨンド・ミート(Beyond Meat)の会長を務める。私は先日ゴールドマンを取材し、徹底的なこだわりについて話を聞いた。

ビヨンド・ミートは2009年、イーサン・ブラウンCEOが創業。ブラウンが目指したのは、消費者の味や栄養面の嗜好(しこう)の変化から供給・生産の問題まで、食肉事業が直面するさまざまな課題を解決すること。創業から数年後には、同社の主力ブランド「ビヨンド・バーガー」が発売された。

新たな機会を模索していたゴールドマンは、ビヨンド・ミートの製品が当時存在していた代替肉を大きくしのいでいたことに魅力を感じ、同社とコンタクトを取った。

「食肉業界が菜食の普及を止める陰謀を企てるとすれば、ベジバーガー(肉を使わない野菜だけのハンバーガー)は最高の戦略だろうと思った」とゴールドマンは皮肉を込め言う。「なぜなら、肉を食べる人の大半はベジバーガーを一度食べてみた結論として、そこまで無理してまでベジタリアン(菜食主義者)にはなりたくないと思うだろうから」

ビヨンド・ミートの鍵は徹底的な製品開発プロセスだ、とゴールドマンは語る。多くの既存ベジバーガーがキノアや黒豆などの材料に頼り、本物の肉のバーガーと「なんとなく似たもの」を再現しようとしているのに対し、ビヨンド・ミートはさらに上を行く。

まず、ビヨンド・ミートのチームは、複数の従来型パティを何度もMRIに通し、タンパク質と脂質の構造を詳細に分析。それから、植物由来の要素を科学的に配置し、MRIにより示された構造を真似ることで、パティの感覚的側面をほぼ完全に再現した。

その結果生まれたのが、グリルの上で本物の肉のように焼ける植物由来のパティだ。ビヨンド・ミートの製品は、本物のしっとりした感触や焦げ、かみごたえをとどめ、ハンバーガーの香りさえ放っている。しかもコレステロールはゼロだ。

ベジタリアンやビーガン(乳製品や卵も食べない完全菜食主義者)の食生活に転向する消費者が急増しているというのが一般的な認識だが、ゴールドマンによると米国での割合はまだ5%ほど。彼とチームは、その数字を押し上げることを目指している。

これまでの成果を見ると、その見込みはありそうだ。同社によると、ビヨンド・バーガーは発売以降1100万個以上を売り上げ、現在、米国内2万5000か所以上の食品販売店やレストランで販売されている。

またビヨンド・ミートは最近、今後の製品研究や開発を担う新たな施設をカリフォルニア州南部に建設した。同社によると、同施設の規模と技術は旧施設を大幅に上回り、さらなるイノベーションが期待できる。

同社の成功には、次の3つの鍵がある。

1. 既存製品の11倍を実現する

著名起業家のピーター・ティールは著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』の中で起業家に向け、既存のものより「10倍良い」技術を作るように助言している。映画『スパイナル・タップ』のファンである私からは、ティールの一歩先を行き、ビヨンド・ミートのように自社製品が「11までいく」ことを目指すよう助言したい。

2. 良い販売場所を確保する

売り上げに重要なのは、販売経路や顧客を賢く選定することだが、同じくらい重要なのは、実店舗での商品陳列場所だ。ビヨンド・ミートのチームは小売企業を説得し、従来の食肉売り場に商品を並べてもらうことで、代替品としてのブランド認知を浸透させた。店舗内での配置は戦略的に。これはネット販売でも同様だ。

3. 社内で取り扱うプロセスを持つ

ビヨンド・ミートのように、製品開発・生産をできる限り社内で行う先進的な新ブランドは増えている(時には、自社の製造施設を購入するケースさえある)。製品の独自性と信頼性がますます重要になる中で、製造プロセスを管理する方法としてこれ以上良いものはない。

物理的な製品だけでなく消費者行動も超越する同社にとって、「ビヨンド(〜を超えて)」はぴったりな社名だ。どのような分野でも、既存のものを超える道を描けば成功できるだろう。