海外で公的医療保険を使うには…

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 三井住友海上が新たな保険を開発した背景には、高騰を続ける海外医療費と煩雑な保険請求手続きに中小企業が苦慮している現実がある。

 企業にとって駐在員の健康管理は大きな懸念材料となっており、従業員や家族の健康を守る保険の重要性は増している。

 海外でも日本の公的医療保険制度を使うことは可能だ。しかし、三井住友海上の新保険で事務を代行する企業の担当者は「手続きが複雑なため請求しないケースも少なくない」と語る。

 海外で公的保険を使うには、まず現地の医師に対し所定の申請書に治療内容などを記載してもらう必要がある。さらに、駐在員が自ら日本語訳を書き添え、日本の健康保険組合などに申請する手続きが欠かせないという。国も問題は認識しているが「国内の制度なので対応は難しい」(厚生労働省担当者)。

 今回の保険に事務代行サービスが付帯されているのもそのためで、提携する世界64の国・地域にある約10万の医療機関であれば、医療費を立て替える必要もなくなるという。

 ただし、公的保険でカバーされる範囲は限定的だ。国内であれば一般的に医療費の7割が保険で賄われるが、海外の場合は日本の治療費に準じた支払いしかないため、医療費が高い国では差額を自己負担する必要がある。世界銀行によると、欧米では1人当たりの年間医療費が日本の3倍近い国もあるといい、高額な医療費の請求に備え多くの企業が駐在員のために、民間の保険に加入している。

 この際、使われるのが海外旅行保険だが、同保険では歯科や妊娠・出産などの費用は補償されていない。そのため現地の保険にも加入しており、補償範囲の重複が発生して保険料が割高になっているという。

 中小企業庁によると、国内市場が縮小する中で中小企業の海外進出は増加傾向にあり、海外に子会社を持つ中小企業の割合は平成6年には6・6%だったが、25年には14・6%に増加。今後も保険の開発競争は激化が予想される。(蕎麦谷里志)