13日、ホワイトハウスで会見するトランプ米大統領=AP

写真拡大

 トランプ米大統領は13日午後9時(日本時間14日午前10時)のテレビ演説で、内戦が続くシリアでアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、同政権軍の化学兵器関連施設への攻撃命令を下したと発表した。

 米軍は英仏と共同で攻撃した。トランプ政権による化学兵器使用に絡むシリアへの攻撃は昨年4月に続き2回目。アサド政権の後ろ盾になっているロシアが反発し、米ロの緊張が高まるのは必至だ。

 トランプ氏はホワイトハウスで声明を発表し、「シリアの独裁者アサド(大統領)の化学兵器能力に関係する標的を精密に攻撃する命令を下した」と述べた。地中海東部に展開する米駆逐艦などからミサイルを発射したとみられる。

 国防総省によると標的は3カ所。(1)首都ダマスカス近郊の化学・生物兵器に関する研究や開発、製造、試験を担う施設(2)主にサリンが保管されているとみられる中部ホムス西郊の化学兵器貯蔵施設(3)ホムスにある化学兵器の装備貯蔵施設と、重要な戦略指揮所が含まれた施設――という。

 国防総省によると、攻撃当初、シリア軍から反撃があったが、米側に死者などは出ていないという。

 トランプ政権が今回の軍事行動に踏み切ったのは、今月7日、シリアの首都ダマスカス近郊東グータ地区の町ドゥーマで、化学兵器を使用したとみられる攻撃があったためだ。

 トランプ氏は「人間の仕業ではなく、モンスターの犯罪だ」と批判。今回の攻撃の狙いについて「化学兵器の使用抑止を強く確立するためだ」と説明した。国防総省で記者会見したダンフォード米軍統合参謀本部議長は「シリアが持つ化学・生物兵器に関する研究や開発、利用する能力を低下させる。長年にわたる研究開発データや装備品などを失うだろう」と語った。

 トランプ氏は、アサド政権の後ろ盾になっているロシアとイランを名指しして「罪なき人々の大量殺害に関係したいのか」と迫り、「ならず者国家や残忍な独裁者を支援することで成功する国はない」と断じた。

 またロシアについて、2013年に決めたシリアの化学兵器廃棄に失敗したと指摘。「今日の行動はロシアが約束を守らなかったことに直結する結果だ」と批判した。その上で「ロシアは暗い道を進み続けるのか、平和と安定の力になる文明国家の仲間入りをするのか決めなければならない」とした。

 米政権は昨年4月にもアサド政権軍がシリア北西部で化学兵器を使用したとして、シリア中部の政権軍基地に巡航ミサイルを発射し、戦闘機約20機を破壊した。(ワシントン=杉山正、土佐茂生)

■シリア側「13発のミサイル迎撃」

 シリア国営メディアは14日、アサド政権軍が米英仏の攻撃に応戦し、これまでにダマスカスに飛来した13発のミサイルを防空システムで迎撃したと報じた。また中東のメディアは政権筋の情報として、米英仏からは30発のミサイル攻撃があり、うち10発が迎撃されたとしている。目標となった軍関連施設からは数日前に避難が完了しているという。

 シリア国営通信は「米英仏の攻撃は国際法違反だ」と非難し、攻撃は失敗したと報じた。また「シリア情報省は市民に対し、3カ国の攻撃による効果を意図的もしくは意図せずに誇張して伝えるメディアに耳を傾けないように求めている」と伝えている。

 アサド政権はこれまで、化学兵器の使用を全面的に否定している。

 反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」は、ダマスカスとその近郊、中部ホムスの政府の研究施設のほか軍施設が攻撃対象になったと発表した。攻撃を受けた施設は、化学兵器の研究や製造との関連が疑われる場所とみられる。これまでに攻撃による人的被害は確認されていないという。(イスタンブール=其山史晃)

■トランプ米大統領のテレビ演説の骨子

・シリアの独裁者アサドによる化学兵器能力に関係している標的への精密攻撃を指示した

・フランス、英国との共同作戦を進めている

・シリアが禁止された化学兵器の使用をやめるまで攻撃を続ける

・(イランとロシアは)犯罪的なアサド政権を軍事的にも経済的にも援助していることに最も責任がある