「人手不足な職業・人余りな職業」ランキング
建築が進む新国立競技場。2020年の東京五輪を控え、建設作業員の人手不足が続く(編集部撮影)
就活生にとって有利な売り手市場――。
今、深刻な人手不足が続いており、中には”人手不足倒産”という状況も発生している。そして就職戦線では、自社で将来の活躍を期待する新卒採用が過熱ぎみだ。人材を確保するため、早めに内定を出し、囲い込もうとする企業が少なくない。
しかし、大手をはじめ人気企業は競争率が高く、業界や職業によって、「人手不足」の職業もあれば、逆に「人余り」となっている職業もある。では具体的に、どういった職業が人手不足、人余りなのか? 就職活動を進めるうえでも、その傾向を知っておくのは意味のあることだろう。
それを知る手掛かりになる統計が、厚生労働省が毎月発表している「一般職業紹介状況」だ。これは、全国のハローワークに寄せられる企業からの求人数と、仕事を探している労働者の求職者数を集計したもので、有効求人数を有効求職者数で割って算出する「有効求人倍率」は、景気や労働市場の状況を知る指標として知られている。
有効求人倍率で人手不足・人余り度を見る
有効求人倍率は、求人数と求職者数が同じなら1倍となるが、求人数が求職数より多ければ1倍以上となり、逆に少なければ1倍を割り込む。つまり、数字が1倍より大きければ大きいほど、企業は人手の確保に困っている状況(人手不足)で、1倍より小さければ、容易に人集めがしやすい状況(人余り)ということになる。
今回はそのデータを使って、「人手不足が深刻な職業ランキング」を作成した。
対象の職業は、職業分類のうち、中分類55職業と中分類がない大分類3職業、全58職業。2017年の求人倍率の高い順に並べた。さらに求人数と求職者数の規模と、ここ数年の変化を見るために、それぞれの人数と、4年前と比べた増減率を記載している。また、一般職業紹介状況は月次で発表されているが、月ごとの変動を考慮し、年ベースの数値を採用した。
なお、ここで表記している有効求人倍率のデータは、常用者(雇用期間の定めがないか期間が4カ月以上)で、パートタイムを除いた数字となっている。さらに、職業別の数字は季節調整前の原数値のみしかないため、報道などで発表されている季節調整済みの数字と乖離がある。2017年の全職業の数字は1.27倍で、2013年の0.74倍から上昇している。
結果を見ていこう。1位は建設躯体工事の職業だ。建物の骨組工事をする仕事で、型枠大工、とび工、鉄筋工などが該当する。有効求人倍率は9.62倍、10社が募集しても1人しか応募者が見つからないという、超人手不足状況だ。東京五輪を控え建設ラッシュが続き、人手を求める動きは強い。
2位は警備員などの保安の職業で6.89倍。こちらは2013年比5割以上増えている。建設ラッシュの影響で配置が必要な警備員の需要は高い。同様に、4位建築・土木・測量技術者(5.61倍)、5位建設の職業(4.26倍)、8位土木の職業(3.76倍)と、建設関連の職業が上位に並ぶ。
医療・福祉系も人手不足は慢性的である。医師、歯科医師、獣医師、薬剤師が6.73倍で、3位に入っている。2013年の7.73倍から下がったが依然として高水準だ。介護サービスの職業は2.90倍で12位。求職者数は138.3万人と、2013年から5割近く増加しているが、有効求人倍率も4年で倍以上になっている。
6位は外勤事務の職業(4.10倍)。公共料金の集金員などが該当する職種だ。7位は生活衛生サービスの職業(3.93倍)で、美容師やクリーニング店などに勤務する人が該当する。
一般事務は0.30倍となお低水準
求人数が多い職業の主なものでは、19位自動車運転の職業(2.67倍)、22位保健師、助産師、看護師(2.56倍)、29位商品販売の職業(1.78倍)、33位営業の職業(1.63倍)などとなっている。2013年と比べてみると、保健師、助産師、看護師は、求職者数が増えて倍率が下がっているが、商品販売の職業、営業の職業については、当時1倍を下回っていたが、かなり上昇している。
では逆に、有効求人倍率がなお1倍を下回るような、「人余りな職業」の傾向を見てみよう。好景気が続く中、全体的に倍率が上昇しており、1倍を下回る職種は、2013年の31職業から2017年は14職業に減っている。
最も倍率が低いのは、58位のその他の運搬・清掃・包装等の職業で、0.20倍。商品の仕分け作業や、軽作業、公園整備・清掃の仕事などが該当する。
次に少ないのが、57位の一般事務の職業で、0.30倍という数字だ。オフィス系の事務職は、人余り状況が続いており、56位事務用機器操作の職業(0.43倍)、51位会計事務の職業(0.63倍)などが1倍を下回る。事務の効率化や機械化などが進み、人手を必要としなくなっているのが背景にあるのだろう。
ロボット化やAI(人工知能)化が進む製造現場でも、52位製造技術者(0.61倍)、49位機械組立の職業(0.72倍)などが1倍を下回る。55位美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者(0.48倍)、53位船舶・航空機運転の職業(0.58倍)、同53位鉄道運転の職業などの専門職についても、低い状況が続いている。