お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は、吉川さとみさん(仮名・25歳  建設会社勤務)からの質問です。

「新卒で入社してから今まで、ちゃんと給与明細をチェックしたことがありません。残業などをしたのに銀行口座に振り込まれている額が思ったより少ないと慌てて確認するくらいで、見方もよくわからず……。どこをチェックすればいいのか、森井先生に教えていただきたいです」

堅実な生活を送るためにも、自分が働いた分のお金がきちんと正しくいただけているのか、収入の管理は大切です。会社勤めのみなさん、給与明細の理解はできていますか?どこをどう見ればいいのか、森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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給与の計算が間違っていることも!?給与明細は毎月確認すべし

相談者さんは、給与明細をチェックしてこなかったし、見方もよくわからないとの事。最近では、紙による給与明細ではなくメールで配信したり、サーバー上に置いてそれを本人がパスワードを使って見るなどのシステムを導入する会社も増えてきており、興味がなかったり面倒だったりで放置しがち。

でも、毎月振り込まれる金額は、様々な計算により算出されています。お給料の計算は間違っていることだってあるんです。今は振り込みが一般的ですが、ご自身の銀行口座に振り込まれる金額が、どんな項目によって構成されていて、どんな計算により計算されているのか、しっかり確認しましょう。

ご自身のお金です。計算が間違っていれば指摘できるぐらいの知識は持っておきたいですね。

給与明細の4本軸は「勤怠」「支給」「控除」「差引支給額」

一般的な給与明細は、「勤怠」「支給」「控除」「差引支給額」の4つの項目が記載されています。基本的に、勤怠で支給額の根拠が示され、支給額の合計から控除額の合計が差引されて、振込額である「差引支給額」が計算されます。

ひとつ目の「勤怠」には、勤務日数や欠勤、遅刻、早退、残業時間などが記載されます。これらの内容は、支給金額の根拠になるものです。まずはここをチェック。ご自身の勤怠を振り返り、誤りがないかしっかり確認してください。

ふたつ目の「支給」では、会社から支給される金額が記載されます。ここに書かれているのは、計算の基礎となる基本給のほか、各種手当です。各種手当とは、役職手当、家族手当、通勤手当など、会社により様々です。ここが正しく記載されているか、特に「時間外手当」などの表記で記載される残業代については、雇用契約や就業規則などで示された単価で計算されているか、しっかり確認しましょう。

そして、3つ目の「控除」。代表的な項目では、健康保険や厚生年金、雇用保険料のほか、所得税や住民税があります。

「控除」にどんな項目があって、どんな風に計算されているのか、ここもしっかり注目したいところですので、ひとつずつ見ていきましょう。

控除の項目と計算の知識をもとう

まずは健康保険料です。ひと言で健康保険と言っても種類があります。ざっくりといえば、「協会けんぽ」とそれ以外の「組合健保」です。

現在では、「協会けんぽ」に加入する会社が圧倒的に多く、大企業の一部が組合健保に加入しています。組合健保では保険料が安かったり保険内容が手厚かったりしますので、この機会に確認してみましょう。お勤めの会社がどちらに加入しているのか分からない場合には、健康保険証で確認できます。「保険者名称」の欄に全国健康保険協会と記載されていれば協会けんぽ、そのほかの健康保険組合が記載されていれば組合健保です。

いずれの場合にも、ホームページ等で保険料率や天引き額が確認できます。各都道府県により保険料率が変わります。例えば、協会けんぽ東京の保険料額表は全国健康保険協会のサイト内から確認することができます。

40歳未満であれば、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」を見てください。折半額が、給与からの天引き額になります。

以前にも説明しましたが、健康保険料は給与レベルともいえる標準月額報酬により決定します。4月から6月の給与水準などから、ご自身の等級を確認しましょう。

次に厚生年金保険料。これは、将来受け取ることのできる年金に関わってくる保険料です。厚生年金保険料も、上記の保険料額表でも確認できます。同じ等級を右にたどっていくと、表の厚生年金保険料の折半額として天引き額が確認できます。

そして雇用保険料。従業員負担の雇用保険料は、一般の事業であれは現在0.3 %です。これは、諸手当を含む支給額全体に料率を掛けて天引き額が計算されます。

まだまだあります。所得税は、所得にかかる税金で、会社を通じて税務署に納める国税です。

毎月の給与から天引きされる所得税は概算であり、目安は源泉徴収税額表です。国税庁のサイトから「支給額の合計から社会保険料を差し引いた額」と「扶養親族等の数」から控除される金額が分かります。

住民税のせいで入社2年目は給与が下がる?

最後に住民税です。こちらも所得にかかる税金で会社を通じて納めるものですが、納める先は従業員それぞれの市区町村であり、地方税と呼ばれます。

この住民税の特徴は、「前年の」所得に対して課税されるところです。前年1月から12月までの所得から計算した税額を、翌年の6月から1年にわたり毎月天引きされることになります。言い換えれば、住民税は1年半遅れて納める形になります。

新卒の方で、前年まで働いていなかった場合では、1年目では住民税の天引きがありません。住民税の給与からの天引きが始まるのは、2年目の6月給料以降のため、給与が変わらなくても手取りが減ってしまうということが起きるのです。

さらに、4月入社であれば、1年目の計算基礎は9か月分の所得です。つまり、給与も税率も変わらないとすれば、2年目の天引き額よりも3年目の天引き額の方が大きくなり、手取りはより小さくなります。

住民税の金額については、6月ごろに会社から配布される「特別徴収税額の決定通知書」で確認しましょう。名称やフォーマットは各自治体により異なりますが、収入や所得、どんな控除があるか、そしてその後12か月間毎月いくら天引きされるのかが記載されています。この金額と給与明細の住民税の額があっているかチェックしましょう。

ちなみに、会社が天引きして従業員のために積み立てる「財形貯蓄」などを行なっている場合にも全国健康保険協会のサイト内、健康保険ガイドから保険料率の項目を選び、都道府県毎の保険料額表の中の平成30年度保険料額表から自身の調べたい都道府県の保険料額がわかります。この機会に、会社の福利厚生やご自身の加入・利用状況をについて、就業規則などをもとに確認してみて下さい。

「支払額しかロクに見てない」という人も意外と多いのです……。



■賢人のまとめ
給与明細の4本軸は「勤怠」「支給」「控除」「差引支給額」です。給与の計算が間違っていることもないとはいえませんし、給与明細は毎月確認したいところ。「勤怠」のほか、「控除」項目と、それらがどう計算されているのかの知識ももっているといいでしょう。そのほか、財形貯蓄など会社の福利厚生やご自身の加入・利用状況についても、就業規則などをもとにして、この機会に確認してみて下さい。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。