衆院予算委員会の集中審議では、野党理事らが何度も委員長席に詰め寄った=11日、衆院第1委員室

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 国民も、うんざりしているのではないか。注目された11日の衆院予算委員会の集中審議は、野党の党首2人が質問に立ったが、完全な期待外れに終わった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県のメモ(備忘録)にあった「首相案件」との記載について、安倍晋三首相から核心的な証言を引き出せなかったのだ。威勢のいいヤジとは対照的に、メディア頼みの質問はまったく迫力に欠ける。朝鮮半島やシリア情勢が緊迫化するなか、いつまで「政治ショー」を続けるのか。そもそも、どこに違法性があるのか。識者からは「漫画だ」「時間と税金の無駄遣い」などと批判が起こっている。

 国会は12日、参院財政金融委員会や、同外交防衛委員会で、学校法人「加計、森友学園」問題や、自衛隊の日報隠蔽の問題などを審議した。

 だが、NHKの生中継が入った前日の集中審議に、野党が党首級を投入しながら、大した得点を挙げられなかった失望感は大きい。

 立憲民主党の枝野幸男代表は11日の審議で、愛媛県のメモについて質問した。だが、安倍首相は「県が作成した文書に、国としてコメントする立場にない」「首相秘書官在任中から、柳瀬(唯夫経済産業審議官)氏を信頼している」と繰り返すばかり。

 期待した答弁を引き出せずいら立ったのか、枝野氏は「委員長の認識を聞いているんですよ! (愛媛県の担当者と、柳瀬氏を)呼ばなければ、真実が分からない。あなたは、どう思うのか!」などと、前代未聞、河村建夫予算委員長に八つ当たりした。

 感情むき出しの枝野氏に突き動かされるように、野党理事は委員長席に頻繁に詰め寄り、「速記を止めてください!」などと絶叫した。ヤジと怒号が飛び交い、審議は中断を重ねた。言論の府が泣く醜態だ。

 結局、約6時間の集中審議で強調されたのは、疑問は残るものの、一癖も二癖もある世界各国のリーダーと長年渡り合ってきた、安倍首相の強気の答弁だった。獣医学部新設について、「私から指示を受けた方は一人もいない」「(加計学園の加計孝太郎理事長から)相談や依頼は一切ない」と重ねて主張した。

 獣医学部誘致に尽力した加戸守行(かと・もりゆき)前愛媛県知事は、夕刊フジの取材に、次のように指摘する。

 「野党は『首相案件』にこだわりすぎだ。『加計学園ありき』のイメージが独り歩きしているが、安倍首相は獣医学部の新設について、今治市や加計学園のことを当初知らなかった。加計氏との友人関係から、便宜を図ることはない」

 集中審議のなかでは、根拠の希薄な「レッテル貼り」もみられた。

 「首相案件」と記されたメモを引き合いに、枝野氏は「ほとんどのみなさんが、すでに首相がウソつきだとわかっていると思う」と述べ、希望の党の玉木雄一郎代表も「(メモは)首相の答弁が、ウソだと示唆している」と主張した。玉木氏の発言には、野党議員から拍手がわいた。

 さすがに安倍首相も、玉木氏に「言う以上、証拠を見せてもらわないと。わきまえてほしい」と反論し、不快感を隠さなかった。

 永田町では「官邸の人間は、『首相』ではなく『総理』と呼ぶ。『首相案件』という記述は不自然に感じる」という指摘もある。

 かつて野党の中には、「国会の爆弾男」と呼ばれた楢崎弥之助氏など、独自入手した情報をもとに、緻密な質問を組み立てて、政権を追い込む議員がいた。1年以上もモリカケ問題を追及しながら、相変わらずメディア報道の確認しかできない現在の野党議員は足元にも及ばない。

 一方で、政治的アピールは必死のようで、野党6党は近く、愛媛県庁を合同視察する方向で検討に入っている。

 これについて、同県の中村時広知事は11日、記者団に「パフォーマンスなら、やめてほしい」と不満をぶちまけた。前出の加戸氏も「もはや漫画だ」とあきれ顔だ。

 「パフォーマンス」といえば、野党議員は、佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問前、森友学園前理事長の籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=と大阪拘置所で接見した。「隠し玉」を仕込んだはずだったが、証人喚問では隠したままだった。

 野党は、柳瀬氏の証人喚問も要求しているが、どう受け止めるべきか。

 政治評論家の伊藤達美氏は「証人喚問を乱発すれば、国会が人民裁判のような法廷と化す。北朝鮮情勢や年金データ問題など、ほかにも課題があり、野党は国民目線で政権を追及する姿勢に欠けている」と批判する。

 一方、伊藤氏は、安倍政権に対しても、「あまりに長い答弁は言い訳に聞こえ、野党をバカにしたような表情も、イメージがよくない。簡潔かつ丁寧に説明している姿勢を、態度で示してほしい」と注文を付けた。