今後の区域認定や開業の時期はどうなるのだろうか(写真:baona / iStock)

4月3日、自民党と公明党はカジノを含む「IR(統合リゾート)実施法案」に関する重要論点の11項目すべてにおいて合意に至った(前回記事参照)。これを受けて、政府はIR実施法案を国会に提出し、今国会での成立を目指すことになった。

では、今国会でIR実施法が成立したとして、今後の区域認定や開業の時期はどうなるのだろうか。タイムラインには流動的な要素があるが、現在議論されていることを概観していこう。

「2サイクルの実施」を検討

4月3日の与党合意は、政府の区域認定について、2サイクルの実施を検討するとした。2サイクルの場合、IR実施法が6月に成立することを前提とすれば、第1サイクルの区域認定(自治体、IR事業者の決定)は2021年、IR開業は2024年と予想される。

第2サイクルの区域認定は2023年、IR開業は2026年以降と予想される。区域認定数は3カ所(上限)であり、第1サイクルに1〜2カ所、第2サイクルに1〜2カ所となる見通しだ。

与党合意の前、2018年2月に政府が与党に提示した開業までのプロセス案は、途中のプロセスに要する期間を決めたうえで、区域認定時期が2023年前後になることを示唆していた。これに対して、自民党は、スピードアップを要請。また、公明党も開業までに要する期間を何年と決めるべきではないと主張した。

その結果、「開業までのプロセス」の与党合意は、「地方自治体における準備状況を踏まえ、早期に日本型IRの効果を発現させるとともに、地元での合意形成等の手続きを確実に行う観点から、法定されるIR区域認定数の上限の下で、申請・認定のプロセスを2回行うことを検討する」に落ち着いた。

IR誘致のフロントランナーと目される大阪府と大阪市は、行政と経済界で策定した「夢洲まちづくり構想(案)」(2017年2月)において、2024年のIR開業、2025年の国際博覧会(万博)の開催を想定している。松井一郎・知事(日本維新の会・代表)は、繰り返し、首相官邸、政府に対して、早期のIR開業を可能とする制度を要請してきた。

当初の政府案では、区域認定が2023年前後。大阪府市が認定を受けても、万博前のIR開業は困難となる。大阪府市など先行組の声が、与党や政府に届いた結果、2サイクルの実施検討で与党が合意したと考えられる。

IR実施法成立後のステップはどうなっているのか

IR制度の枠組みは、政府「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ」(IR推進会議取りまとめ・2017年7月31日)、与党「IR実施法に関するワーキングチームとりまとめ」(与党合意・2018年4月3日)で示されている。

政府、自治体、IR事業者が踏むステップには9ステップある。9ステップとは、\府が基本方針を策定・公表、カジノ管理委員会を設置、⊆治体が実施方針を策定・公表、自治体がIR事業者を公募・選定、だ府が自治体から区域整備計画の認定申請を受付、ダ府が区域整備計画を認定・公示(自治体とIR事業者が決定)、α定された自治体がIR事業者と実施協定を締結、Дジノ管理委員会がIR事業者の免許申請を受付、背面調査を実施、┘ジノ管理委員会がIR事業者にカジノ免許付与、IR事業者が開業、である。

区域認定(自治体とIR事業者の決定)の大きな流れだけを抜き取ると、(機房治体(都道府県または政令指定市)がIR事業者を公募・選定しIR事業者とともに区域整備計画を策定する、(供棒府が自治体から区域整備計画の申請を受け付け、区域認定(=決定をするのは自治体、IR事業者)する、だ。

ポイントは、選定の役割分担にある。自治体がIR事業者を選定し、政府が区域選定する形となった。また、政府へ申請する自治体は、都道府県または政令指定市とされた。もう一つのポイントは、選定の先後関係であり、自治体のIR事業者選定が先、政府の区域認定が後となった。この役割分担、先後関係は、IR業界関係者が長年、議論してきたテーマであるが、最終的には、政府IR推進本部が、海外事例調査およびメリット・デメリット整理を踏まえて決定に至った。

政府は、9つのステップそれぞれの進め方においても慎重を期す考えだ。政府IR推進本部は、本部長である安倍晋三首相の方針「世界最高水準の規制の実現」を重視している。

政府は、基本方針の策定において、有識者の意見聴取やパブリックコメントを実施する見通しになっている。申請自治体である都道府県または政令指定市は、政府に計画申請するために、行政同意(首長)、議会議決が必須とされた。また、申請自治体が都道府県の場合、立地市町村における行政同意(首長)も要件とされた。また、IR事業者のカジノ免許の背面調査も、国際的にみて、かなり厳格なものになる見通しだ。

ただし、日本のIR区域認定および開業までのプロセスに要する期間は、国際的にみても、やや長いと考えられる。日本が参考としているシンガポールでは、プロセス開始から事業者選定(シンガポールは都市国家であり、政府が立地を決定)まで2年弱、開業まで5年であった。

プロセス効率化の余地も

日本は、プロセス開始から第1サイクルの区域認定までに3年間、開業までに6年間、第2サイクルの区域認定までに5年間、開業までに8年間を要する見通しである。日本は、IRについて、長年にわたる政官財の調査研究の蓄積があり、また、豊富な海外先行事例を活用できる立場にある。「世界最高水準の規制の実現」をしつつ、プロセスを効率化する工夫の余地があるはずである。

筆者は、今回の政府案、与党合意の過程で、地方IR誘致関係者の焦りを強く感じている。焦りの大きな原因は、区域数の上限3カ所、区域認定プロセスの長さ、事業性における地方のハンデなどである。多くの地方IR誘致関係者は、人口減と高齢化に立ち向かうため、「観光産業の起爆剤としてのIR」に期待をかけてきた。地方の誘致関係者は、地域経済界のリーダーであり、すでに自身が高齢であることも多い。

なお、与党合意では、区域認定数の見直し時期(3カ所からの拡張を検討する時期)を、最初の区域認定から7年経過後とした。最初の区域認定を2021年とすれば、見直し時期は2028年となる。仮に、2028年に区域認定数が拡張した場合、2028年を起点に、再び、上記のプロセスが繰り返されることになる。つまり、その開業時期は2030年以降とならざるをえない。慎重を期しつつも、スピードアップを検討するべきだろう。