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●CDPでカスタマージャーニーを追跡

デジタルマーケティングの重要な要素であるデータの活用によるカスタマージャーニーの分析は、自動車販売の現場においても例外ではない。日常的な購買行動が行われる消費財などと異なり、比較検討の期間が長くプロセスが多岐にわたる自動車の購買について、その複雑なカスタマージャーニーを分析することは容易なことではないが、自動車メーカーはどのようにデータを活用して、顧客理解を深めているのだろうか。

トレジャーデータが開催したイベント「Treasure Data ”PLAZMA” 2018 in Digital Belt」の講演でスバルITクリエーションズ インフラ技術部技術2課ITイノベーションチームの小川秀樹氏が講演した。

○Treasure CDPの導入で、購入ユーザーの検討プロセスを追跡する

まず小川氏は、SUBARUにおけるデータ活用基盤として、Treasure CDPを導入した背景や目的について紹介した。小川氏は、全社的な中期経営計画を頂点に、その計画を実現するための戦略と戦術を掲げ、その戦略・戦術を叶えることを目的として部署レベルで戦略・戦術を考えていくという階層構造を紹介し、CDPの導入は国内の営業目標を実現するIT戦略の中で行われたと説明。デジタルマーケティングが経営課題と密接に関係している点を説明した。

「CDPは組織的な課題を解決するための手段として重要だった。トレジャーデータを選んだのは、顧客を深く知るという社内のニーズを満たすことができると考えたため。自動車は何度も買うものではないし、ウェブで手軽に買うものでもない。販売店とメーカーが分かれている中で、トータルで顧客理解を深めることが重要である中で、Treasure CDPはデータを全て繋げて分析できる点が大きなポイントだった」(小川氏)

実際、Treasure CDPの運用では、自社サイトのログ、販売店のログ、提携している自動車メディアのサードパーティデータ、販売店が保有する顧客データ、CS部門のアンケートデータなど、あらゆるデータをDMPの中に集約。これにより、購入した顧客ひとり一人について、購入までに至った経緯=カスタマージャーニーを追跡できるようにしたのだという。

「現在では、年間10億件のデータが蓄積されており、総計で44億件のデータがTreasure CDPに蓄積されている。このデータを自社環境で管理するのは大きなコストが必要になるが、Treasure CDPならば44億件のデータでも余裕で扱える」(小川氏)

○より具体的な顧客分析により、購入に至るまでの行動傾向を把握する

では、実際にこうしたデータの蓄積からどのようなカスタマージャーニーが見えてくるのだろうか。小川氏は同社の自動車を購入した顧客のデータ分析の実例を紹介した。

「重要なのは “認知”から“購買”、そしてその先まで全てのフェイズで顧客を理解すること。その上で、広告やウェブコンテンツの出し分け、ディーラーの支援などを行い、顧客に応じて最適なおもてなしをすることで、顧客ロイヤリティを高めたいと考えた」(小川氏)

カスタマージャーニーの分析について、小川氏は膨大なデータを元にしてより具体的な顧客まで絞り込みを行うことを重要なポイントとして挙げる。例えば、性別、年齢、居住地域、過去に乗っていた自動車のメーカー、自社サイト訪問頻度や閲覧コンテンツの傾向、カタログ請求の有無、連絡可能な手段、見積もり依頼の状況など、細かいデモグラフィックを行い、購買行動のモデルケースを生み出す。そして、その顧客がどのようなコンテンツに接触しながら検討したのか、どのような競合車に興味を持ったのか、見積もりや販売店来訪などのアクションはどのように行っていったのかなど、購入までのプロセスを明確化し、他のデータとの比較などを通じて顧客行動の傾向を理解するのだ。

「例えば、新車検討のために中古車のページが頻繁に閲覧されているという傾向が見られるが、これはデータ分析をするまで知らなかった点だ。新車のサイトと中古車のサイトは、データはあったが連携はしていなかったので、データを統合したことで前後関係が見えるようになった」(小川氏)

一方、成約した顧客を全体的に俯瞰すると、成約の前後でウェブサイトの閲覧コンテンツがどのように変化しているのかが見えてくるため、顧客に応じてウェブサイトのパーソナライズが可能になったという。

「成約直後はアフターパーツなどのコンテンツが多く閲覧される傾向があるため、アップセリングの機会としてカスタマイズの紹介などのページを勧めている」(小川氏)

●旧来型企業がデータによる破壊的イノベーションと闘うためには

Treasure CDPによるデータの統合管理は、販売店の支援をも変革している。その一例が、購入予測モデルの導入だ。具体的には、キャンペーンによって回収したアンケートのデータとウェブサイトのアクセスログなどのデータをTreasure Dataの機械学習プラットフォームである「Hivemall」で分析して、顧客の購入予測モデルを生み出したという。特に、ウェブサイトのアクセスログを機械学習に盛り込むことは予測精度に大きな影響を与えたとのことで、実際の成約率が大幅に向上したという。

「機械学習を実施する上で顧客の行動ログが予測精度にどのような影響を与えるのかを実証できた」(小川氏)

そのほか、Treasure CDPによるデータ分析は、成約を最終コンバージョンとした際のアトリビューション分析によるネット広告のアロケーション、採用活動における内定辞退者の分析、セカンドパーティデータによる競合メーカーの分析など、様々なシーンに活用されているという。

小川氏は、講演の締めくくりとしてICTによる第4次産業革命を挙げ、「データによるビジネスの転換が世界的に言われている中で、日本国内は遅れているのではないか。時価総額で世界トップクラスの企業は、みなデータを持っている企業。データは21世紀の資源と言われ、データによって破壊的イノベーションを生み出している企業が次々と生まれる中で、旧来型の企業はそうした動きに負けないようにデータを活用して闘わなければならない。その中では、業種業界を超えたコラボレーションが必要だ」とトレジャーデータとの協業の意義について語った。