Facebookは2018年4月、同プラットフォームを通じてターゲット広告を行うためにサードパーティデータを利用することに関して、広告主向けに残されたオプションを廃止する、とアドバイヤーに伝えた。

Facebookは2018年3月28日(米国時間)、広告主がアクシオム(Acxiom)やオラクル(Oracle)のようなサードパーティデータプロバイダが提供する情報(人々の購入行動など)を利用して、Facebookやインスタグラム(Instagram)、Facebookの広告ネットワーク「オーディエンスネットワーク(Audience Network)」を通じてターゲット広告を表示することを可能にするセルフサービス型ツールのオプションを廃止すると発表した。オプションの完全廃止は10月1日ということだったが、その数日後Facebookは、Facebookの以外の場所で集められたデータを「カスタムオーディエンス(Custom Audiences)」プログラムを通じてFacebook内でターゲット広告に使う許可を得ていることの証明を広告主に義務づけるデータ使用許可ツールを開発すると明らかにした。ダイレクトレスポンス広告を専門に扱うエージェンシー、Wプロモート(Wpromote)のソーシャルメディア担当ゼネラルマネージャーであるジェニー・サン氏によると、Facebookは、許可ツールは第2四半期に公開する予定だと広告主に伝えているという。

その後Facebookは、「管理されたカスタムオーディエンス(managed Custom Audiences)」の終了を通知してきた。これは、アクシオムやオラクルのような承認されたデータプロバイダからのサードパーティデータにFacebookが管理する契約を通じて広告主がアクセスし、そうしたデータを利用してFacebook上でターゲット広告が行えるようにするプログラムだ。Facebookの広報担当者は、プログラムの終了は前述のデータ使用許可ツールの公開後になると述べている。Facebookの広報担当者はさらに、より広範な閉鎖と関連して、同社の「マーケティング・パートナーズ(Marketing Partners)から「オーディエンスデータプロバイダ」という専門分野も廃止すると話している。

Facebookは電子メールによる声明で「これは、我々の広告製品にさらなるセーフガードと説明責任を提供するために我々が踏んでいく数多くのステップのひとつだ」と書いている。

ただし、Facebookはターゲット広告に利用できる外部データを締め出そうとしているが、広告主がターゲット広告にサードパーティデータを使い続けられる抜け穴はいくつも残っている。そこで、Facebookの主たる動機は人々のプライバシー保護なのか、自社の責任のためなのか、疑問がわいてくる。

「抜け穴」の意図はどこに?



デジタルと顧客関係管理(CRM)のエージェンシー、アンシラ(Ansira)でソーシャルメディアディレクターを務めるマイケル・プライス氏はこう語る。「ブランドやエージェンシーはいま、Facebookのパートナーマネージャーではなくサードパーティデータプロバイダと直接協力して、カスタムオーディエンスを開発・移植しなければならないし、データの倫理的保存やオーディエンスの利用についての責任は、データプロバイダやFacebookではなくてブランドが負うことになる」。

Facebookが責任を広告主に転嫁しようとしているタイミングに合わせたかのように、欧州の「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」が2018年5月25日に施行される。この法律は、企業が収集しているデータの内容や利用方法に関して、一般消費者がより強いコントロールと透明性を確保できるようにするもので、これに従わない企業には非常に高い罰金が科せられることになっている。Facebook上で活用されるデータについて広告主により大きな責任を負わせ、そのデータを使用する法的権利を有していることを自身で証明するよう求めることで、Facebookはそうしたペナルティーを科せられるリスクを減らそうとしているのかもしれない。仮にペナルティーを科せられたとしたら、その額はFacebookの世界の年間売上の4%に相当する可能性がある。それにしても、それならなぜFacebookは、広告主による外部データの利用についてより厳しい姿勢を取らないのかと疑問を感じる理由はある。

広告主がターゲット広告にサードパーティデータを利用することをFacebookがどの程度制限できるのか、Facebookがそれを完全実行した後で利用できなくなるデータはどういうものかもわかっていない。

「みなが抜け穴を通じてこれを利用するとしたら、彼らはその穴を完全にふさぐか? そもそも、なぜこのように変更したのか、その意図を探りはじめている。消費者のプライバシーを保護するためならば、そうした抜け穴は必ずしもその目的にかなうものではない。あるいは、自社のビジネスを守るため、それともPRだろうか?」と、アイクロッシング(iCrossing)の最高メディア責任者、ジェフ・ラトナー氏は語る。

ファーストパーティデータとは?



Facebookが予定しているサードパーティデータの締め出しは、Facebookの壁に囲まれた庭の外で個人について集めた情報が壁の内側でどう使われているかを明確にしようとする試みだ。Facebookがユーザーのプロファイルデータをケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)に渡していた事件を受け、Facebookがこの新ルール適用を急いでいるように見えることで、多くのアドバイヤーは混乱し、疑問を山のように抱えている。そうした疑問の中身は、戦術に関するもの(「オフラインのトランザクションデータはどうなるのか?」)から懐疑的なもの(「単なるPR以上の取り組みか?」)、ビジネスを専攻する学生が寮で午前2時に抱くような疑問(「ファーストパーティデータって何?」)まで多岐に及ぶ。

何がファーストパーティデータになるかという質問はバカげて聞こえるかもしれない。しかしこれは、Facebook上で広告主が利用する外部データを同社がどの程度チェックできるか(できないか)、そして、セルフサービス型ツールからサードパーティデータを排除する理由としてFacebookが引用しているように、「Facebook上で人々のプライバシーを向上させるのに役立てる」という見通しを理解するために重要なことだ。

通常、ファーストパーティデータとは、人々がロイヤリティプログラムに登録したり、サイトで製品を購入したりした場合にブランドが収集する電子メールアドレスのような情報を指す。だがブランドは、そのデータをデータ管理プラットフォーム(DMP)にアップロードでき、そこでほかの企業が持っているかもしれないユーザーのデータと統合することができる。

「Facebook上のチャンネルを通じて私が直接取り出したのと同じアクシオムのデータを、私のDMPに上げて、そこに私のデータを追加する、あるいは私のデータとして扱い、それをFacebookにまた上げることができる。それでFacebookの認証が取れるのだろうか?」と、ラトナー氏はいう。

今後、どういう定義をしてくるか?



Wプロモートのサン氏は「我々は、この先どういう定義をしてくるか、Facebookの発表を待っているところだ」といい、サードパーティデータが付加されたファーストパーティデータをFacebookが承認するかどうかに言及した。「現在我々にわかっていることは、我々が影響を本当に理解する前に、Facebookはもっと多くの洞察を提供する必要があるということだ」。

あるいは、人々が実店舗で何かを買うためにクレジットカードを使ったときに小売業者が集め、Facebook上でターゲット広告に使ったデータはどうなるのだろう? その答えは簡単なように思える。小売業者が顧客から直接集めるものなので、これはファーストパーティデータだ。だが、情報がその人物のFacebookアカウントにつながっている方法には、ほかのパーティも関わっている。

「クレジットカードに付随する個人情報がなんであろうと、購入者の取引銀行は、情報をFacebookに提供して人物を特定できるようにする。通常、彼らが最後に手に入れるものは電子メールアドレスと電話番号だ。彼らはそれを使ってユーザーのFacebookプロフィールとマッチさせる」と、アンシラのプライス氏はいう。同氏は、情報はプロセスの途中で細切れにされ匿名化されるので、個人のアイデンティティがブランドやFacebookに明かされることはないと述べる。

広告業者向けのデータ使用許可についてのFacebookの新方針のもとでは、スーパーのレジにクレジットカードを通すときにお金だけでなくデータも渡していることを、人々は十分に知らされるのだろうか? 取引データ――人物の名前とカード番号――が処理されFacebookアカウントとマッチさせる方法は、データのファーストパーティ的性質を複雑にするのだろうか?

アイプロスペクト(iProspect)の有料ソーシャル担当ディレクターであるステファニー・スミス氏は、「その点についてFacebookとの話し合いは実際にはまだしていない」と話す。

「グレーな領域がまだ多い」



Facebookはサイトでのターゲット広告に使われる外部データをチェックしようとしているが、アプリ開発者がFacebookから集めたデータをケンブリッジ・アナリティカに渡すことを止められなかったように、この試みも失敗する可能性はある。Facebookは広告主に対して、それがどんな種類のものであろうと、同プラットフォーム上でターゲット広告を行うためにデータを使用する許可を得ていることを証明するよう求めるだろう。だが、その要求の正当性を立証することはFacebookにはできないだろう。不適切な手段で入手した数百万人分のFacebookユーザーのデータはすべて削除したというケンブリッジ・アナリティカの証明を確認できないのと同じ理屈だ。

「Facebookが将来、我々にどのようにデータを使わせてくれるかについては、グレーな領域がまだたくさんある」とラトナー氏はいう。

こうした不確定要因は、広告主に対してFacebookがより強い姿勢に出る結果を招いている。ソーシャルネットワークやインスタグラム、広告ネットワークを通じて人々にリーチするために、広告業者はFacebook自身が持つデータへの依存を強めざるを得ないからだ。

「すでに壁で囲まれているものが、さらに壁で遮られてしまう」と、ラトナー氏。

これはFacebookにも不利に働くかもしれない。Facebookがこの変更を確定させて正式に実行した場合、アドバイヤーはFacebook広告のパフォーマンスや価格にそれらがどう影響するかを監視するだろう。結果が良くなければ、広告主は、Facebookへの予算の一部をより柔軟に外部データを受け入れる、ほかのプラットフォームに振り替えることもできる。

ラトナー氏は「『いいですねぇ、我々と我々のプラットフォームにあなたのお金をまた戻してください』と、Googleがいうのは間違いない」と語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)