白米は少量でも体に悪いという(写真:decoplus / PIXTA)

「白いごはんが好き」と言う日本人は多い。厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」でも、ごはんをお茶碗で1日3〜5杯食べることが推奨されている。
ところが、膨大な研究論文から科学的根拠に基づいて分析してみると、白米は1日2〜3杯でもすでに糖尿病のリスクが上がり始める可能性があるという。
白米のみならず、さまざまな食材をエビデンスベースで5グループに分類し、「体に良い食品」と「体に悪い食品」を明らかにした『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を上梓したUCLA助教授の津川友介氏に、白米を食べる量を減らしたほうがいい理由を解説してもらう。

健康に良い炭水化物・悪い炭水化物

巷では「糖質制限ダイエット」や「低炭水化物ダイエット」が流行っている。エネルギーとなる成分は大きく分けて、たんぱく質、脂質、炭水化物の3つに分けられるのだが、これらのダイエット法に共通しているのは、「炭水化物」の摂取量を減らして、代わりにたんぱく質や脂質の摂取量をやや多めにするということである。


しかし、この炭水化物なら十把一からげに減らすべきという考えは、実はミスリーディングである。炭水化物には、「健康に良い炭水化物」と「健康に悪い炭水化物」があるからである。

私たちにとって最も身近な炭水化物は、白米や小麦粉であり、これらは精製された炭水化物である。このように精製して柔らかくて食べやすい形にすることを(白っぽくなるため)「精白」すると表現し、米であれば「精米」すると呼ぶ。

そして、この精白されている「白い炭水化物」は、血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気が起こるリスクを高める可能性があることが、数多くの研究から報告されている。

その一方で、玄米のように、精製されていない「茶色い炭水化物」の多くは食物繊維や栄養成分を豊富に含み、複数の研究で肥満や動脈硬化のリスクをむしろ下げると報告されている。つまり、すべての炭水化物が悪者なのではなく、どんな炭水化物を食べるかで健康に関しては逆の効果があるのだ。

なお、ここでは精製された炭水化物のことを「白い炭水化物」、精製されてない炭水化物のことを「茶色い炭水化物」と呼ぶ。そのほうがイメージしやすいと思われるからである。精製されているかどうかが重要なのであって、必ずしも色が重要なのではないことに注意してほしい。

数々の研究において、精製されていない「茶色い炭水化物」は健康に良い影響を与えると報告されている。アメリカ、英国、北欧の国々で行われた研究を統合した78万6000人のデータを用いて、炭水化物の摂取量と死亡率の関係を評価したメタアナリシス(複数の研究結果をとりまとめることで一つひとつの研究では認められない関係性を明らかにする研究手法)によると、1日70gの茶色い炭水化物を摂取したグループは、茶色い炭水化物をほとんど食べないグループと比べて死亡率が22%低かった。

炭水化物と心筋梗塞や脳梗塞の関係を見た(7つの研究を統合した)別のメタアナリシスによると、茶色い炭水化物の摂取量が多いグループ(1日2.5単位以上摂取)は、摂取量が少ないグループ(週に2単位未満)と比べて心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化によって起こる病気になるリスクが21%低かった。

茶色い炭水化物の摂取により糖尿病のリスクが下がることも複数の研究結果によって明らかとなっている。玄米を多く食べる人たち(週に200g以上摂取)は、玄米をほとんど食べない人たち(摂取量が月に100g未満)と比べて糖尿病になるリスクが11%低かった。この研究によると、1日50gの白米を玄米に置き換えることで糖尿病のリスクを36%下げることができると推定された。

全粒粉や蕎麦粉の含有量も重要

茶色い炭水化物の摂取はダイエットにも有効であると考えられている。アメリカで行われた研究によると、茶色い炭水化物の摂取量が1日あたり40g増えるごとに、8年間での体重増加が1.1垳困襪海箸明らかになった。複数の研究において、茶色い炭水化物の摂取量が多い人ほどBMIが小さく、腹囲が細いことも示されている。

その他にも、茶色い炭水化物には、便秘を予防する働きや、憩室炎という大腸に炎症を起こす病気を予防する効果があるとも言われている。

ここで1つ注意事項がある。スーパーやコンビニで手にする商品の中には、「全粒粉」と書いてあっても実は全粒粉が少ししか含まれておらず、ほとんどが精製された小麦粉という商品がある。食品のラベルに関して、原材料は、使用した重量の割合の高い順に表示されている。健康のことを考えたらできるだけ全粒粉の割合の高いものを選ぶべきだろう。

蕎麦を食べるにしても、巷には小麦粉の含有量が多くて蕎麦粉が少しだけしか含まれないものもあるので、注意が必要である。少ししか蕎麦粉が含まれておらず大部分は小麦粉でできている、いわば「蕎麦粉入りのうどん」を食べて健康になった気になってしまうのは危険である。十割蕎麦や二八蕎麦のように、できるだけ蕎麦粉の割合の高い蕎麦を選んで食べるのが好ましい。

私が食事と健康の話をすると、最もよく質問されることの1つが「白米は食べすぎなければ大丈夫ですよね?」といったものである。日本人は何事も「食べすぎなければ大丈夫」というあいまいな落としどころを好む傾向があるが、残念ながら、日本人が大好きな白米は「少量でも体に悪い」と言ってもいいだろう。エビデンスによると白米の摂取量が少なければ少ないほど糖尿病のリスクが低いことが報告されているからだ。

白米は「食べすぎなければ大丈夫」という問題ではない

2012年に世界的にも権威のある英国の医学雑誌に、白米と糖尿病の関係に関する4つのコホート研究(白米の摂取量を調査し、その人たちを何年間も追跡し、その後病気になるかを解析する研究方法のこと)の結果をまとめたメタアナリシスの結果が発表された。その結果、白米の摂取量が1杯(158g)増えるごとに糖尿病になるリスクが11%増えるとされた。

こういう話をするとしばしば「日本人では違うはずだ」という話になる。それでは、日本人のエビデンスも見てみよう。上記の論文でもデータの中の1つとして用いられているが、2010年に、権威あるアメリカ栄養学会の学会誌に、国立国際医療研究センターの南里明子氏(現在の所属は福岡女子大学)らが行った日本人のデータを用いた研究が掲載された。

この研究によると、日本人においても白米の摂取量が多ければ多いほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかになった。

論文では、男性では、白米を食べる量が(ごはん1杯160g換算で)1日2杯以下のグループと比べて、1日2〜3杯食べるグループでは5年以内に糖尿病になるリスクが24%高いことが明らかになった。

その一方で、ごはんを1日2〜3杯食べる人と、3杯以上食べる人たちで糖尿病のリスクは変わらなかった。1日2杯(315g)くらいが糖尿病のリスクが上がりはじめる境界だと考えてもいいかもしれない。

女性ではもっとシンプルな関係、つまり白米を食べる量が多ければ多いほど糖尿病のリスクが高くなるという関係が認められた。白米を1日1杯しか食べないグループに比べて(最も少ないグループの白米摂取量が男女で違うので注意が必要)、1日2杯食べるグループでは15%、3杯食べるグループでは48%、4杯食べるグループでは65%も糖尿病になるリスクが高くなることがわかった。


ただ、白米の摂取量は食事調査を行って追跡したものであり、記憶違いや過少申告、食生活の変化なども考えられる。したがって、「1日2杯の白米」とは、きっちりと1日2杯分の量を食べていたのか、ということは実は正確にはわからない。

さらには、1日1時間以上の筋肉労働や激しいスポーツをする人に関しては、統計的に有意な関係が見られなかった。これらのことを踏まえると、白米を食べる量が多い人ほど、糖尿病になってしまう確率が高くなっている傾向が確認できた、というくらいのざっくりとした理解にとどめるのが無難だろう。

個人的には白米の摂取量と糖尿病のリスクとの間には正の相関があるので、減らせるのだったらできるだけ少ない摂取量のほうがいいと考える。さらには糖尿病の家族歴があると糖尿病になる確率はさらに高くなるので、少しでもリスクを下げるためにもできるだけ白米を含む白い炭水化物は減らしたほうがいいだろう。どうしても白米を食べたい人は、毎日1時間以上の激しい運動をすることで、糖尿病のリスクを上昇させずに済むかもしれない。

米の摂取量を減らしたらお腹が空いてしまう?

炭水化物の摂取を減らすために、ただ単に食事の量を減らすことはおすすめできない。多くのダイエットが成功しないのと同様に、お腹が空いていてもがまんしているのは拷問に近く、理性によってコントロールすることが難しいからだ。そのため、食事の種類を「置き換える」ことを推奨する。

そこで筆者がおすすめしたいのは、白米が「主食」であるというマインドセットを変えるという方法だ。主食は白米であると思うからどうしても量を食べてしまうが、必ずしも白米が主食でなければいけないというルールはない。

白米の代わりに、玄米にするというのは最もシンプルな置き換え術だろう。前述のように、白米を玄米に置き換えることで、糖尿病のリスクが下がる可能性も示唆されている。アメリカでは、多くのレストランで白米と玄米を選ぶことができ、健康意識の高い人は玄米を選ぶようになってきている。

その他の方法として、お米の代わりに、大皿一杯のサラダが主食だとイメージしたらどうだろうか。魚や肉(たんぱく質)がおかず、サラダを主食にしてみる。この食事スタイルだと白米の摂取量をコントロールすることがだいぶ楽になると思われる。