景気改善基調も円高が輸出企業の業績圧迫 強まる先行き懸念 日銀さくらリポート

写真拡大

 日銀が12日に公表したさくらリポートでは景気の改善基調が示されたが、企業からは年明け以降進んだ円高で先行きの不透明感に対する懸念の声が上がる。

 トランプ米政権の保護主義的な政策や中東情勢の緊迫化で金融市場は不安定な動きが続く。為替相場は日銀が現行政策を導入した平成28年9月時点の円高水準に近づいており、再任された黒田東彦総裁に対する風当たりが強まる可能性がある。

 「IT関連や設備投資など海外の旺盛な需要が、為替相場や通商政策といった外的要因で影響を受けないか警戒感を持っている」

 日銀の衛藤公洋大阪支店長は12日の記者会見でこう指摘した。リポート本文では円高懸念の記述はなかったものの、企業の聞き取り調査では「幅広い業種で先行きの悪影響を心配する声が多かった」(担当者)。

 内閣府の調査では輸出企業の採算水準は1ドル=100・6円。米国の輸入制限を受け各国が報復措置で応酬する“貿易戦争”が警戒され3月下旬に一時104円台まで急伸したが、数年前の歴史的円高の反省から企業も海外に拠点を移すなど抵抗力を付け、足元では深刻な影響が出ていない。

 ただ、東京商工リサーチの調べでは東証1、2部上場メーカー65社のうち過半数の35社が30年3月期決算の第4四半期(1〜3月)で想定為替レートを1ドル=110円に設定していた。予想より円高が進んだことで、「自動車や電機、機械など海外売上高の比率が高い企業では通期決算の下押し圧力になる」見込みだ。

 100円台前半は日銀が短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度に誘導する現行の長短金利操作政策を導入する直前の水準だ。為替相場はその後120円台に迫る円安となったが、1年半がたち“貯金”を食い潰しつつある。

 大規模緩和を手じまいする出口戦略に着手できる見通しは立たず、海外経済の動向次第では追加緩和を迫られる恐れもある。だが、金融機関の収益悪化など緩和の副作用が拡大するだけに打てる手は少ない。新体制となった黒田日銀には序盤から手詰まり感が漂う。

(田辺裕晶)