これからの家族に必要な「頼る」スキル

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これからの家族のあり方を”チームとしての家族”として捉え、家族の組織論を紐解くこの連載。今回は「頼る力」について考える。

今の若い世代であれば多くの人が、夫婦が「共働き」であることに特に違和感はないだろう。厚生労働省の調べによると、1990年前半から後半にかけて、それまで男性が働き女性は専業主婦という構成の世帯を共働きの世帯数が上回り、今や日本における共働き家庭の比率は約6割にのぼる。

女性の社会進出が加速し、仕事も子育ても家事もこなす必要がある多忙な日常において、女性が自分だけで、家族だけで全てを完璧にこなすことが非常に困難になってきている。もはや家族という小さな組織だけで全てをこなそうとしないことが、家族の環境を整える上で重要になってきているのではないだろうか。

私たちmanmaの家族留学に、子連れで参加をしてくれたとある夫婦の話を紹介したい。

大学4年の秋、ふたりは間もなく1歳になる小さな娘と共に結婚式を挙げた。大学入学後に付き合い始めたふたりは、大学3年生の春に妊娠が発覚。のちに妻となる彼女が「産む」と決めたのだ。周囲からも真面目で実直な印象を持たれていたふたりの結婚に周囲は驚きつつも、本人たちはこの深刻な状況を前向きに乗り越えようと努力していた。

そんなふたりも、結婚してもうすぐ3年が経つ。旦那も就職し、経済的な基盤も安定してきた。妻は研究者になる夢を叶えるべく、学士編入で文学部に再入学。インターンをしながら家庭を支える。

そんな二人に「家族の組織論」を聞いた。

「自分たちが未熟だとわかっているからこそ、お互いに、そして周囲に頼る。未熟だとわかっているから自分たちだけで無理に頑張らないことです」

その言葉を聞いた時、ふたりが自覚する弱さにこそ、いまの家族のあり方を考えるヒントがあるのではないかと思った。

未熟だと分かっているから『すいません』と頼ることをはばからない。子どものお迎えに行けない時は、素直に旦那の両親に頼る。子どもを抱えながらの就活は簡単ではないが、そんな時も友人たちに頼る。

以前、manmaで、共働きで小学生以下のお子さんを育てているご家庭にアンケートを実施した際も「周囲に頼ること」の重要性についての言及が多く見られた。

「困った時に頑張りすぎずに『ちょっと手伝って』と素直に言えるように」「他人に迷惑のかからないよう仕事も育児も責任は果たさねばなりませんが、難しいと分かったら早めに相談することを恐れないこと」など。

ついつい、家事も育児も仕事も自分で頑張らなければいけないと思いがちだが、自分たちだけで抱え込まず、色々な人の力を借りていくことが共働き時代を心地よく生き抜くスキルなのだ。

ふたりは、子どもに対してむやみやたらに怒らない子育てのスタイルが印象的だった。2歳の娘が高めの椅子に登ろうとした時、私なら落ちて泣きでもしたら面倒なので、素早く下におろしたい気持ちになる。でもふたりは「はるちゃん、落ちたら痛いよー」と言いながら、笑っていつでも助けを出せる距離で見守っていた。

「いちいち怒らなくたって、いまできないことも10歳になったらきっと自然にできるようになる。それに、私たちは若いし子育てなんてできなそうって周りからはみられるから、無理に頑張らなくてもいいかなって」

ふたりにとっては「若い」ことが頼るときの免罪符になっている。しかし、その免罪符がなくても「弱さ」を持ち、困ったときには周囲に頼っていくスタイルの家族があっても良いのではないだろうか。そして、そんな家族に手を差し伸べる人で溢れるような社会であるべきだと思う。

いわずもがな、昔は「我慢」こそ美徳だった。『家庭管理能力の研究』などの著書を執筆している酒井ノブ子氏が56年に発表した論文の中でも「我慢強い性格を持つ人は家庭管理能力が高い」と述べられている。