4月11日、衆議院予算委員会集中審議での安倍首相(写真:REUTERS/Toru Hanai)

森友学園問題に裁量労働のデータ偽造、さらには自衛隊の日報問題など、公文書の公正を揺るがす問題が続いている。こうした公文書問題を巡って4月11日に衆議院予算委員会集中審議が開かれたが、その直前に加計学園を巡る新たな疑惑が持ち上がった。

4月10日付けの朝日新聞が、「面会記録に『首相案件』 加計巡り首相秘書官 愛媛県文書に記載」と報じたのだ。

柳瀬氏「会ったことは記憶にない」

その内容とは、2015年4月2日に愛媛県地域政策課長と今治市企画課長、そして加計学園事務局長が官邸に赴き、藤原豊内閣府地方創生推進室次長(当時)と柳瀬唯夫首相秘書官(当時)に面談したこと、藤原氏は要請の内容を総理官邸から聞いていたこと、F8胸瓩ら「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と言われたこと、ぬ瀬氏からは「本件は首相案件」と言われたことなどが記されていた。

さらにこの面談前に安倍晋三首相が加計学園の加計孝太郎理事長と会食した際に、「下村博文文科相(当時)が加計学園は課題への回答がなくけしからんと言った」という発言も記録されている。

これについて、いまは経済産業審議官を務める柳瀬氏は、「自分の記憶の限りでは、お会いしたことはない」と否定。もっとも昨年すでに今治市の職員が2015年4月2日に官邸を訪問したことが明らかになっており、この時も柳瀬氏が面談したのではないかと言われていた。

しかし、2017年7月24日の衆議院予算委員会閉会中審査で柳瀬氏は、大串博志衆議院議員には1度、今井雅人衆議院議員には7回、玉木雄一郎衆議院議員(現希望の党代表)には2度、今治市の職員と「会ったことは記憶にない」と否定していたのだ。

一見すると、安倍首相の答弁も基本的には従来と変わっていないように見える。4月11日には希望の党の玉木代表の質問に対し、以下のように答えている。

「(平成)27年の11月から私が議長を務める国家戦略特区諮問会議において、今治市の特区指定に向けた議論が進む中で、私が今治市が獣医学部新設を提案していることを知った。そして最終的には昨年11月に事業者の公募を行い、加計学園から応募があった。その後、分科会でのオープンな議論を経て、1月20日に諮問会議で認定することになるが、この時に私は初めて加計学園の計画について承知したところだ」

安倍首相の表現の微妙なズレ

ところが表現には微妙なズレがある。

そもそも2017年7月24日には玉木氏が「本当に今年の1月20日になるまで、加計学園が、加計理事長が特区で獣医学部を作りたいという意図を持っていたということを知らなかったということでいいか」と質問したことに対し、安倍首相は「その通りだ」と答えている。

要するに、「1月20日まで加計学園の獣医学部設置申請を知らなかった」と説明していたのだが、今回は「1月20日に計画について承知した」という表現になっているのだ。この表現であれば「1月20日より前に申請は知っていた。詳細な計画は知らなかったけれども」という説明が成り立つわけだ。

この背後に何があるのだろうか。玉木氏は次のように訝しがる。「愛媛県文書が出てきたので、その整合性をとるために設置申請を『知った』時期をずらしたのではなかったか」。

そしてその疑惑を増幅させたのは、玉木氏がそれについて質問しようとすると、それを遮るように安倍首相の背後から飛ばされた秘書官の野次だった。野次の主は経済産業省出身の佐伯耕三秘書官。同じく経済産業省出身の今井尚哉政務秘書官の側近と言われ、安倍首相のスピーチライターを務めていた。その功績ゆえの大抜擢だろうが、通常なら課長クラスが選ばれる首相秘書官を40代前半の若さで務めることは異例で、メディアでも話題になった人物だ。

さらにもうひとつ、疑惑がある。安倍首相は2017年7月24日の衆議院予算委員会閉会中審査で、「依頼はまったくなかった」と断った上でだが、加計氏から「時代のニーズに応えて新しい学部や学科の新設にチャレンジしていきたいという気持ちはいつも持っているという話、大体そうした趣旨の話は聞いたことがある」と答えている。

ここで2人の会食を振り返っておこう。2015年4月2日以前において、安倍首相と加計孝太郎氏が会食したのは以下の4回だと判明している。

2013年11月18日 東京・赤坂の日本料理店。

2014年6月17日 東京・芝公園のフランス料理店。

2014年12月18日 東京・銀座の中国料理店。

2014年12月21日 東京・赤坂の飲食店。

この1年強を鳥インフルエンザのパンデミックと重ねてみると、興味深い関連性を見ることができる。2013年3月に世界で初めて中国で低病原性鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人間への感染例が報告され、8月までに135人が感染し、45人が死亡した。その後2カ月で318人が感染し、130人が死亡。2014年11月から鳥インフルエンザ(H7N9)は「感染症法」の2類感染症に追加されている。

鳥インフルエンザ対策は公務員獣医師の重要な任務だが、公務員獣医師が西日本地域で決定的に不足していたことが今治市に獣医学部の新設が決まった要因のひとつ。加計氏が安倍首相の見立て通り、時代のニーズを読む目とチャレンジ精神に富んでいる人物なのであれば、獣医学部の必要性や新設の意図があることを全く安倍首相の前で説かなかったということは考えにくいのではないか。

「安倍6月退陣説」が囁かれ始めた

いずれにしろ愛媛県文書が出てきたことにより、安倍首相のこれまでの主張の真実性が大きく揺らいでいる。愛媛県の中村時広知事は朝日新聞が報じた10日、関係職員にヒアリングし、その夕方には「文書自体は残っていないが、愛媛県文書は職員が作った備忘録」であることを明らかにした。

これに“逃げ口”を塞がれた与党は敏速に反応。自民党の二階俊博幹事長と公明党の井上義久幹事長は早速11日には、柳瀬氏を国会招致することで合意している。

証人喚問を求める野党は、「佐川宣寿前国税庁長官とは異なり『刑事訴追の可能性があるから』との理由では証言を拒否できない」と実態の解明に期待を寄せる。そして永田町では、「安倍6月退陣説」が囁かれ始めた。安倍首相は現在の苦境から挽回できるのか。もはや、真実の究明なくして道は拓けないだろう。