中国のeコマースサイトでは、ライブストリーミング動画に出演するオピニオンリーダー(欧米のインフルエンサーのような存在)が、商品の売れ行きに絶大な影響力を持っている。そしていま、彼らインフルエンサーたちが、アリババ(阿里巴巴)のタオバオ(淘宝)のようなショッピングプラットフォームを利用して、米国の小規模ブランドを売り込んでいる。彼らの助けがなければ、小規模ブランドが中国などの市場に参入することはできなかっただろう。ブロガーのゾイ・チャン氏は、ファッションデザイナーの経験もあるインフルエンサーだ。彼女が見つけた商品を紹介するライブストリーミング番組は、毎週4万人の視聴者を集めている。そのうちの1500人は、チャン氏が番組内で勧めた商品なら何でも購入するほどロイヤルティの高いファンだ。番組の配信時間は5分〜10分で、チャン氏が紹介する商品によって異なる。販売はコミッションベースで行われているわけではなく、チャン氏とユアン氏がブランドから商品を仕入れ、中国の消費者に販売している。「私たちが商品について知っているのは、名前だけだ」とチャン氏はいう。あるときには、ブランドから送られたハンドバッグの商品サンプルが税関で止められてしまい、番組で視聴者にカタログの商品画像を見せるしかないことがあった。それでも、熱心なファンはそのハンドバッグを注文したという。

ウェルデンにおける事例

チャン氏の番組は、中国でまだ知られていない欧米のブランドを紹介することが主な目的だ。きっかけは、彼女がインフルエンサーとしてはじめたブログだった。そのブログで、彼女はニューヨークに移り住んでから見つけた小規模なブランドを紹介していた。そんな彼女にタオバオ・グローバル(淘宝全球购)が声をかけた。同社は、アリババのショッピングサイトで取り扱う国外ブランドを増やすために、ライブ配信ツールの提供をはじめたところだった。チャン氏とユアン氏は、ブランドと提携し、ブランドと中国の消費者の仲介役を担うことになる。彼らは、ライブ番組を配信する際に、ブランドに対して一定量の商品をキープしておくよう依頼し、番組配信中にその商品の注文を受け付ける。ブランドは、注文を受けたすべての商品を、タオバオ・グローバルのプラットフォームを通じて出荷する仕組みだ。商品の出荷や配送は、すべてこのプラットフォームで処理される。現時点で、チャン氏とユアン氏は50のブランドと提携し、タオバオ・グローバルを通じてブランドの商品を販売している。

ウェルデンの商品を紹介するチャン氏(最近のライブ動画より)

「我々が行っているのは、それほど多くのリソースがない小規模から中規模の米国ブランドを支援することだ。中国で顧客ベースを構築するのに多額の投資をする余裕のない彼らが、安いコストでリスクを負わずに中国市場をテストできるように支援している」と、ユアン氏はいう。「ライブ番組では、3Dでインタラクティブな体験を提供することで、顧客のエンゲージメントを高めている」。チャン氏とユアン氏は2017年11月、ニューヨークの小規模なハンドバッグブランドであるウェルデン(WELDEN)をタオバオ・グローバルのライブ番組ではじめて紹介した。その結果、同ブランドは5時間で30万ドル(約3200万円)相当の商品を売り上げた。商品点数にして1000個ほどだ。それからの半年間で、ウェルデンは3000個のハンドバッグを中国の消費者に販売した。

中国に大きなチャンス

中国では、タオバオ・グローバル、ウェイボ(微博)、ワイワイ(YY)といったソーシャルネットワークで配信されるインフルエンサーのライブ動画が、ブランドにとってますます大きなチャンスをもたらすようになっている。デロイト(Deloitte)のレポートによると、中国ではライブ動画による直接的な売上が、2018年には44億ドル(約4700億円)に達するとみられている。この金額は2017年から37%の増加だ。また、視聴者数は4億5600万人に達するという。アリババが独身の日に行うショッピングショーやビクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)のファッションショーのようなビッグイベントでは、アリババの小売業者向けBtoCマーケットプレイスであるTモール(Tmall)で配信されるライブ動画によって、eコマースの売上を拡大している。若いブランドにとって、チャン氏やユアン氏といった人たちとの提携は、難しい市場への参入を手助けしてくれるものとなる。ファッションブランドのケイト・スペード(Kate Spade)の元シニアディレクターで、ウェルデンの共同創設者でもあるサンディ・フリーセン氏は、同ブランドを立ち上げてから2年間、さまざまなマーケティング活動に多くのお金をつぎ込んだという。しかし、ほとんど売上を伸ばせなかったことから、方針の転換を決断。ノードストローム(NordStrom)、ファーフェッチ(Farfetch)、ショップボップ(ShopBop)といったeコマースサイトでハンドバッグの販売をはじめ、弾みをつけようとした。「直販ブランドとして規模を拡大することは不可能だった」と、フリーセン氏はいう。「たくさんのお金をつぎ込んだが、大手小売企業や有名ブランド、それにほかの小規模企業との競争に巻き込まれていった。多くの出資者を抱えているか、幸運に恵まれでもしない限り、無駄な努力にお金をつぎ込んでいるような状況にしかならない」。

ライブ動画のメリット

ウェルデンが外部の出資者を募らなかったのには理由がある。「少しずつ」成長していきたいと考えたからだ。いまは、タオバオからの売上を活用して、ほかの地域でビジネスを拡大する計画を立てているところだ。また、ライブ動画から得られる消費者のフィードバックが、商品開発の役に立っているという。チャン氏によれば、はじめてウェルデンを取り上げたライブ番組では、紹介しているバッグが赤だったら買いたいというコメントが3500件ほど寄せられたという。そこで、まだ赤色の商品がなく、出荷までさらに1カ月かかるにもかかわらず注文を受け付け、フリーセン氏は赤を基調とした新しいバッグを急遽デザインすることになった。「番組で紹介されることによって、我々のスキルは間違いなく高まっている。ライブ動画の顧客は、本当に細かいところにまで商品に関心を払い、見定めているのだ」と、フリーセン氏は語った。ウェルデンは現在、本拠地である米国で自社のブランドを確立する必要に迫られている。フリーセン氏によれば、商品の露出をさらに高めるために、事業の中心を直販から卸売販売や小売店での販売にシフトしているところだという。「我々は米国で、大規模とまではいわなくても、それなりの規模になる必要がある」と、彼女はいう。「彼らは米国のブランドを支持している。したがって、ここでブランドを確立すべく、懸命に取り組まなければならないのだ」。Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)