資生堂が「新3カ年計画」発表 世界トップ3入りを目指す(写真:つのだよしお/アフロ)

写真拡大 (全2枚)

 国内化粧品最大手・資生堂(4911)の株価が大変身中だ。ちょうど1年前の昨年4月時点では3000円前後の水準だったが、直近4月9日には一時7410円まで駆け上がった。この1年間で2.4倍となったが、勢いづいてきたのは今春以降。特に3月に入ってから上場来の高値を連日、更新し続けるエネルギッシュな値運びに、株式市場関係者も熱い視線を注いでいる。設立は1927年で、戦後、東証の取引が再開された1949年5月から上場銘柄だった老舗の化粧品銘柄に、いったい何が起こっているのだろうか。
(解説:証券ジャーナリスト・駿河一平)

 「この銘柄が、これほど化けるとは……」。ちょっとした株価の騰落では驚かない株式市場関係者も、天井知らずのように駆け上がるこのところの資生堂株の快走劇には眼を丸くする向きが多い。

 別掲の株価チャートを見ると、一目瞭然。1988年6月以降、ざっと30年に及ぶ動きを振り返ると、昨年夏場以降、それまでとは相場付きが一変し、今年に入ってからは圧巻の棒上げコースに踏み込んでいる。明らかに、異変が起きている。もっと、正確にいえば、実態に潜む異変をキャッチして株価は激走を続けている。

インバウンドは株高の一因

 だれでも、最初にピンとくるのは、インバウンド(訪日外国人)による“爆買い”効果だろう。しかし、これは株高の一因でしかない。

 すでに、中国人女性を中心に、ブランド化粧品を買いあさる光景はお馴染みだ。日本政府観光客(JNTO)調べによる2月のインバウンドの数は250万9300人(前年同月比23.3%増)で、2月としては史上最高。現在のペースでいけば、年間の累計では昨年実績の2869万1073人を大幅に上回るだろう。東京五輪が開催される2020年には「インバウンド4000万人、消費額8兆円」を政府は目指している。その点では、資生堂に化粧品需要の追い風は今後も続くのは間違いない。

 だが、1〜2年ほど前とは違って、証券アナリストの間で今、インバウンドを株価変身材料として正面から据える動きはあまり見られない。

 「化粧品インバウンド需要は根強いが、伸び率そのものは緩やかになっている」(銀行系証券)。この点では資生堂に限らず、ファンケル(4921)、コーセー(4922)、ポーラ・オスピスホールディングス(4927)も同様。

 こう書くと、ちょっと大げさ、と感じられるかもしれないが、インバウンドよりも、もっと大きな「グローバルな構造的変化」がマグマとなって資生堂の株価を押し上げている、との見方が株式マーケットでは3月以降、支配的だ。

 その構造的変化とは、ずばり化粧品の「プレステージ市場の拡大」である。

プレステージ化粧品の「威力」

 プレステージ化粧品は、高価格帯の化粧品を指す。資生堂が3月5日に発表した新中期経営計画の説明会で取り上げたことから有力アナリストの注目度がぐんと高まった。

 例えば、みずほ証券は3月27日付の分析リポートで、世界最大の化粧品会社であるロレアルグループの毎年発表している世界の化粧品市場の調査内容を紹介しているが、それによれば、2017年の世界の化粧品マーケットは4〜5%増と伸び率が高まり、中でも「成長著しいのが高価格帯」で、2017年は8.5〜9.5%伸びた、という。

 この火付け役となっているのが中国人。前述のインバウンド需要増とも関連するが、世界の観光地に広がる中国人のプレステージ化粧品の物色ブームは、中国人以外にも拡大しているようだ。

 グローバル景気の拡大によるGDP(国内総生産)の伸びを背景に、世界の中・上流階級の人口が将来的に増えていく方向にあり、プレステージ化粧品の伸びしろは大きい。

 「今後、数年間は、プレステージ化粧品で勝つことが、当業界で相対的に成長率が高くなることにつながるのである」と、みずほ証券は指摘。プレステージ商品で優位に立つ資生堂は「つぼみは、まだ開いたばかり」とも強調している。

攻撃的な新中期計画

 もう一つ、見逃せないのが、前述した資生堂の新・中期計画の内容だ。

 同計画では2020年12月期の売上高目標として1兆2000億円を掲げたうえで、同時に困難ではあるが挑戦する高い目標を意味する「ストレッチ目標」では1兆2800億円超を打ち出した。営業利益は、基本計画では1200億円超、ストレッチ目標だと1300億円超。売上高営業利益率は10%超となる計算だが、今12月期の業績見通しでは売上高1兆3300億円に対し、営業利益は900億円で、営業利益率が8.7%。相当に攻撃的な中期プランであることは明瞭だ。

有力証券の株価目標値超えるケース相次ぐ

 プレステージ化粧品と、新中計という市場関係者のセンチメントを刺激するこうした2つの好材料が相乗効果となって株価の高騰劇を呼び込んだわけだが、ネックはないのだろうか。あえて言うなら、短期的な株価のオーバーシュート(行き過ぎ)が一つ挙げられる。2月下旬以降、大手証券が公表した資生堂の株価目標値を、その後、どんどん株価が上がっていたことから追い越す状況が相次いでいる。

 ちなみに野村証券は6710円、大和証券が6140円、SMBC日興証券は7100円、みずほ証券が7000円をそれぞれ打ち出していたが、足元の株価はこれらをすべて上回ってしまった。まだ到達していないのは、JPモルガン証券の8000円、ゴールドマンサックス証券の7800円だが、それも視界に入り始めた。

 しかし、ここまで上げてくると、スピード調整は当然、想定される。それを挟んだうえで、空前の8000円にトライするかどうか、ここからが正念場になりそうだ。

(証券ジャーナリスト・駿河一平)