ディー・エヌ・エー社長兼CEO 守安 功

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春、入社式の季節です。新人を受け入れる側の経営者たちは、どのような人材観を持っているのでしょうか。「プレジデント」(4月9日発売号)の大特集「いる社員、いらない社員」では、大企業29社のトップに、「これから必要な人材はどんな人ですか?」という質問をぶつけました。そこから見えてきたものとは? 担当編集者がポイントを紹介します。

■10〜20年後にはAIやロボットは当たり前になる

「企業は人」といわれます。未来にわたって事業をつないでいくには、その担い手である社員をいかに採用し、いかに育てていくかが問われます。

みずほ銀行、日本生命、アサヒグループHD、三菱ケミカルHD、JR東海、三菱地所、伊藤忠商事など……。「プレジデント」4月9日発売号では、日本を代表する29社の経営トップが人材に対する考え方を披露してくれました。

共通しているのは、AIの進化にともなう業務の変容や、日本社会のますますの国際化といった大きな変化の波がすぐ目の前にまで押し寄せている、という時代認識です。変化に対して、それぞれの企業はどのように立ち向かっていくつもりなのか。そのことがトップの言葉から見て取れます。

たとえば、変化に対して特に敏感でなくてはならないネット系企業のディー・エヌ・エー(DeNA)。守安功社長は、変化を必然の前提とみなして、次のような未来予想図を描きます。

10年単位で過去を振り返ってみると、テクノロジーの進歩によって我々の生活がどんどん便利に、快適になってきたことに気づかされます。たとえば20年前には携帯電話はまだ普及前でしたし、それがスマートフォンに代わったのも10年前のことです。

テクノロジーの進歩は年を追うごとに早くなっており、10年後、20年後にはAIやロボットは当たり前の存在になり、私たちの生活は今より便利に、快適なものになっているでしょう。

人間の仕事の内容がそのときどう変わっているのか、今の時点で見通すことは困難です。しかし、人間に代わって機械がより高度な仕事を行うようになることは間違いないでしょう。人の労働時間はすでに減少しつつありますが、おそらく今後も減っていき、余暇の時間が増えていくでしょう。

社会が変われば、そこに寄りそう企業の商品やサービスも必然的に変わっていくはずです。DeNAの場合はどうでしょうか。

当社はネットオークションから始まった会社ですが、創業当時から今まで、自分たちの事業領域を限定したことはありません。現時点での主力事業はモバイルゲームですが、それもあくまで今の時点での話です。今後はAIを活用した新たなデライト(喜び)を提供していくことになるでしょう。

楽しさや便利さを提供して人びとを驚かせ、喜んでもらう。常に新しい事業領域に飛び込み、今行っている事業もどんどんあり方を変えていく。社会の変化を先取りして、新たな時代に合ったサービスを提供していく。事業の内容は変わっても、それがDeNAという企業の変わらない本質です。

■自分自身は「技術をビジネスに結びつける」タイプ

環境は変わるのでそれに応じて事業領域は変わっていくが、自分たちの本質は変わらない。その際、必要とされる人材はどうでしょうか。

DeNAは社会の変化に合わせて、これからもどんどん変わっていくでしょう。必要なのは、変化のための人材です。「次はこういうことをやったらおもしろそうだね」「これからこういう変化が起きるから、我々も今のうちに変わらなくては」と自ら考え、自ら道を切り開いていく。それができる人が会社の競争力の源泉と言えます。

失敗したら「なぜ失敗したのか」と考え抜き、「次はこうしよう」と再びチャレンジしていく。そうした強いWill(意志)とPassion(情熱)を持った人が集まる会社にしていきたいと思っています。

必要なスキルという点では、DeNAのコア・コンピタンス(企業の核となる技術など)はインターネットやAIなどに関するソフトウエアテクノロジーですから、ソフトウエアのエンジニアは第一に必要です。

ただし技術は最終的な目的のためのツールであり、企業としてはそれを使って何を達成していくかが重要になります。ですからテクノロジーを理解しつつ、それを実際のサービスやビジネスに応用していく能力を持った人材を求めています。

一口にエンジニアといっても、研究開発のスペシャリストもいれば、「どういうサービスを提供するか」が常に頭にあるサービスリード型の人もいます。数十人規模のチームを指揮するマネジメント力を持つエンジニアも必要ですし、「この技術を使ってどうお金を儲けるか」を考え、技術をビジネスに結びつけられる人材も欠かせません。

これら4タイプのいずれであっても、「目の前の技術をどうやって活かしていくか」という視点はなくさずにいてほしいですね。

守安さんもDeNAにSEとして入社しましたが、自分自身は4番目の「技術をビジネスに結びつける」タイプ(ビジネス型)だそうです。経営層に入っていく人は当然、そうしたビジネス型の発想ができる人です。

ベンチャーの雄である同社も2019年に創業20周年を迎えます。次世代の経営陣はどう育てているのでしょうか。

■「もし自分たちが経営者だったら」を考えてもらう

人は自ら育つものであり、育てるものではないと思っていますので、「育成」というとおこがましいのですが、次のような施策を始めています。

DeNAは2019年に創業20周年を迎えますが、現在の社員数は連結で2400人にまで増えました。次の世代へのバトンタッチも考えなくてはならない時期でしょう。そこで、取締役や執行役員をめざす20代、30代の若手数十人を集め、「ネクストボード」として勉強会を開いています。これは彼らに「もし自分たちが経営者だったらどうするか」という視点で考えてもらうための試みです。

ただ若い人たちには、会社に育ててもらうのではなく、仕事を通じて自分の力で成長するという気概を持ってほしいと思います。上司から割り当てられた仕事をこなすだけでなく、自分から「こういう仕事をしたい」「こういう能力を身につけたい」というWillを抱いて行動するようになってほしい。私自身の経験からも、今の自分の能力に比べて少し難しすぎるぐらいの仕事にチャレンジし、結果を出すことが、人を大きく成長させるものです。

インタビューを終えて感じたことは、「ベンチャー経営者らしい、すがすがしい物言いだ」ということです。守安さんは、この特集の統一質問に対して、好きな言葉は「ハングリー精神」、尊敬する人は「イーロン・マスク(米テスラ、スペースX創業者)」と答えました。座右の書は、理系の出身(東大大学院航空宇宙工学専攻)らしく、先日亡くなったスティーヴン・ホーキング博士の『ホーキング、宇宙を語る』。

ホーキング博士の夢に導かれ、宇宙を目指す同世代のマスク氏の姿にライバル心を燃やす。もちろんバックグラウンドにあるのは、飽くなきハングリー精神です。

近年はWELQ問題で謝罪に追われるなど、苦しい時期も経験しました。おそらくはそのことも踏まえて、失敗しても「再びチャレンジしていく。そうした強いWillとPassionを持った人が集まる会社にしていきたい」と守安さんはインタビューで明言しました。

個人としても会社としても、再び、みたび、挑戦する心を失わずに成長してほしいと強く思いました。

これは「永久ベンチャー」であるDeNAだけに当てはまることではありません。事業とはそもそも、そういうものではないでしょうか。ご登場いただいたすべての企業、すべての経営トップに、上の言葉を贈りたいと思います。

(プレジデント編集部 面澤 淳市 写真=iStock.com 撮影=大杉和広)