通信会社のAT&Tにとって、ミレニアル世代はもはや古いターゲットとなっているようだ。彼らのいまのターゲットはZ世代である。グローバルコーポレート社会責任戦略のバイスプレジデントであるベス・シロイシ氏は、この世代を「次の購買力を持った世代」と呼んでいる。

米大手通信企業AT&Tは、エンターテインメント会社でありクリエイティブエージェンシーでもあるフルスクリーン(Fullscreen)と共同で、「レイター・ヘイター(Later Haters:さよなら、ヘイター)」 というキャンペーンに取り組んでいる。このキャンペーンは10代の子供たちに対して、オンライン上のヘイトに立ち向かうためのポジティブなメッセージを送り出すものだ。

「レイター・ヘイター」は2016年にはじまり、その後も進化を続けてきた。これはAT&TのZ世代に対する戦略を非常によく表している。彼らのZ世代戦略には3つの主要なポイントがある。サイバーいじめに関する対話を行うこと、社会問題にも取り組んでいるインフルエンサーを起用すること、そしてワットパッド(Wattpad)といった、新しくて人気になりつつあるプラットフォームを使うことだ。AT&Tの報告によると「レイター・ヘイター」は、これまで1億7500万のインプレッションと8000人のソーシャルのフォロワー増という結果を生んできているという。

「サイバーいじめ」撲滅が狙い



10代の子供たちは、社会運動やその要素を取り入れたマーケティングを受け入れている。「レイター・ヘイター」においてAT&Tは、サイバーいじめについての会話を主導するなかで、白黒はっきりした正論だけを押し付けるアプローチは取らないということを学んだと、シロイシ氏は語る。

「公の場で持たれている対話を見ると、世界は二極化してしまっていて、あらゆる事柄がAかBかのどちらかであるような印象を持ってしまう。けれど大人の世代よりも、この世代はもっと細かなニュアンスを理解することができている。Z世代にとっては、誰しもが良い部分も悪い部分も抱えていることは当然なわけだ」と、彼女は説明する。こういった理由から、AT&Tはメッセージの対象にいじめっ子たちも含もうと尽力している。

「レイター・ヘイター」には有名人や、マイクロインフルエンサーが何人も参加している。参加者全員が、オンラインにおけるいじめをなくすという社会目標につながっている。参加者たちは自らの体験についても語っている。

インフルエンサーを多数起用



AT&Tがインフルエンサー起用をプッシュしはじめたのは2017年8月だ。最初はオリンピックの体操選手であるギャビー・ダグラス氏とパートナーを組み、#EveryDayVacay(毎日がバケーション)というハッシュタグを使って、人に優しいメッセージを送るように促した。そして8月から11月のあいだ、AT&Tは高校におけるいじめを舞台にした「ギルティ・パーティ(Guilty Party)」という番組をプロデュースした。この番組はソーシャルプラットフォームやAT&TのストリーミングサービスであるディレクTVナウ(DirecTV Now)で配信された。ティファニー・アルボード氏、キアン・ローリー氏、テアラ・ダン氏といったインフルエンサーたちが多数出演している。彼らすべてのフォロワー数を合計すると3800万人にも昇る。

また同時に、合計で1000万人近くのフォロワーを抱える双子のドーブレ兄弟ともコラボレーションをしている。彼らが取り組んだのは、若者たちがそれぞれのコミュニティに貢献できるようなインスピレーションを与える、ツアー・イベント「ウィ・デイ(We Day)」だ。10月から11月にはレベッカ・ブラック氏、マイルズ・マケナ氏、シャノン・ビヴェリッジ氏といったYouTubeのスターたちと、フルスクリーン・ライブ(Fullscreen Live)主催の全国ツアー「ラブ・イズ・ラブ(Love is Love)」でコラボレーションしている。

「レイター・ヘイター」では28人のマイクロインフルエンサーたちも、AT&Tによるキャンペーン用コンテンツをFacebook、インスタグラム、Snapchatといったプラットフォームでシェアした。プラットフォームにはTwitterも含まれていたが、シロイシ氏によると、TwitterはZ世代のメインのプラットフォームではないとのことだ。

影響力を高める「ワッドパッド」



AT&Tはインスタグラム、Snapchat以外の場所におけるZ世代へのリーチを強化するため、新しいプラットフォームにも展開しつつある。そのひとつが既存のコンテンツをもとにファンが自作した同人誌的な物語をシェアすることができるサイト、ワットパッドだ。ワットパッドは期待のできる新しいプラットフォームとなっていると、シロイシ氏は語る。

ワットパッドは6500万人のユーザーを抱えており、テンセント(Tencent)といったホールディング企業も含めて投資家たちから、5100万ドル(約54億円)の資金を獲得しているという。AT&Tは、このワットパッド上で2017年10月から11月のあいだに、「レイター・ヘイター」の一環としてコンテストを行っている。募集したのは「あなたのヘイター(あなたを嫌っている人)たちに何を言いたいですか?」というテーマでの500文字のエッセイだ。6週間で集まったインプレッション数は1446万4736、エッセイの応募は900にも昇った。

「Z世代は、ワットパッドを通じて自分たちの声を聞いてもらうことができると感じている。インスタグラムやFacebookに投稿するよりも深いコネクションを得られるのだ」。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)