本当に消費税が理由?

自民党は4月9日、「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)などの合同委員会を開き、全国2万4000の郵便局を維持するための法案の骨子を決めた。

現在は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が、郵便局網を運営する日本郵便に業務委託料として負担金を支払っており、その額は合計1兆円にのぼる。郵便局は山間地や離党など過疎地にも存在し、不採算な局が少なくない。これを金融2社の委託料で補っている。

今回の法案では金融2社が第三者機関に「負担金」として納め、第三者機関が日本郵便に郵便局の維持管理費として交付するとしている。

民営化を進めている郵政会社間の取引に「第三者機関」を絡ませる理由について、業務委託料として金融2社が支払っている現在は、年間500億〜600億円の消費税が課せられているが、第三者機関に負担金として納めれば200億円程度で済むとし、消費税負担の軽減が目的だとしている。

メディアも消費税の圧縮が目的だと報じているところもあるが、実際には民間企業の店舗業務委託費用を、第三者機関を通したからと言って「非課税」にするのは簡単ではない。同様に地方の不採算店を抱える宅配便会社などに比べて郵政が優位になってしまう懸念もある。

隠れた目的

だが、こうした「消費税」の圧縮が目的というのは目くらましではないか。

自民党が検討している「第三者機関」は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構のようだ。民営化する以前に預け入れられた定額貯金や積立貯金などの定期性郵便貯金を管理するための組織で、11兆円近い資金を持つ。

これらの貯金は依然として国の保証が残っているが、設定された満期と共に役割を終えていく運命にある。

これを郵便局維持の資金の受け皿にしようというのが隠れた目的ではないか。郵便局維持のために交付金を支給できるとなれば、この機構に金融2社から負担金を取るだけでなく、いずれ国からも予算を取ることを狙っているのではないか、と疑いたくなる。

自民党の前提とは

自民党の議論は、2万4000ある郵便局をそのまま維持することが大前提になっているようにみえる。人口減少が鮮明になる中で、2万4000の郵便局が本当に必要なのか、という議論もまったく欠如している。

これだけインターネットが発達する中で、金融窓口と職員を配置し続ける意味があるのか。民営化した以上、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険という「民間会社」が自分たちの採算に合うかどうかを考えたうえで、業務委託すべきではないのか。窓口業務が必要ならば、なぜ地域の金融機関に業務委託することを考えないのか。

自民党が何としても郵便局網を守ろうとする背景には、郵便局が「集票マシン」として機能し、郵便局長会が支援組織になってきたという歴史があるからかもしれない。だが、「ユニバーサルサービス」の維持を旗印に、郵便局に税金や交付金を投入していく事に国民の理解は得られるのだろうか。

過疎が進む自治体の住民たちに間でも、何としても郵便局を残して欲しいという声は小さくなっている。過疎地では郵便局よりもコンビニエンスストアが欲しいという声が強くなっている。郵便局よりもサービス領域の広いコンビニによりニーズがあるのは当然だろう。

今国会には、「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の改正案」として自民党を中心とする与党議員の議員提出法案(議員立法)として提出される見通しだ。おそらく消費税の節減が強調され、野党議員の多くは煙に巻かれるに違いない。

郵便局網の維持に、国が直接的に関与していくようになれば、郵政民営化は後退し、民間企業の経営を圧迫することになりかねない。

上場しても民営化ではない

もうひとつ、国会で議論になっている事がある。ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の撤廃だ。

ゆうちょ銀行は民営化され、株式も上場したのだから、民間企業と同様、預金の限度額など無くてよいのではないか、というのが論拠だ。ゆうちょ銀行の経営者も当然の事ながら要望している。

もちろん、ゆうちょ銀行が本当に「民間銀行」並みになったのならその通りだろう。

たしかに、ゆうちょ銀行の株式を政府は1株も保有していないが、筆頭株主で74%を持つ日本郵政の株式の56%はまだ国が保有している。つまり、ゆうちょ銀は今でも国の「孫会社」に当たるわけだ。

民間金融機関がそろって預金限度額の撤廃に反対するのも当然だろう。ゆうちょ銀行の民営化はまだまだ名ばかりで、郵便貯金は事実上、国に「保証」されているに等しい。

だが、政府が限度額の撤廃に動くのも、前段の郵便局網維持に連動している、とみてよさそうだ。ゆうちょ銀行の収益が上がれば、郵便局網維持のための負担金を増やすことができる。逆に、ゆうちょ銀行が儲からなくなれば、郵便局網の維持は難しくなる。

郵政民営化による日本郵政グループの発足から10年。そろそろ郵便局網の維持ありき、ではない郵便サービスのあり方について、本音の議論を始めるべきだろう。