【検証 働き方改革】(4)迷走する連合 法案の今国会成立は困難か

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 労働者側が求める残業時間の上限規制という規制強化に対し、経済界が求める高度プロフェッショナル制度創設は規制緩和の象徴である。

 アクセルとブレーキの混在した働き方改革関連法案は、思惑の異なる労使の合意が不可欠だった。

 平成28年3月、安倍晋三首相は1億総活躍国民会議の席上、労使で労働基準法36条に基づく協定(36協定)を結べば、残業時間が事実上の「青天井」という現状を改善するため、法規制に初めて言及した。

 「法規制を早急に強化する。現在提出中の労基法改正案に加え、時間外労働のあり方を再検討する」

 この発言が残業時間規制の出発点だった。内閣官房幹部は首相発言を見越し、経団連の榊原定征会長に水面下で接触した。経済界の反発が予想されたからだ。「首相の強い意志だ」。こう説得する幹部に、榊原氏は「丁寧に議論してください」と注文をつけつつ、一定の理解を示した。

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 連合は迷走した。

 高プロについて、連合は「残業代ゼロ法案」と徹底的に反対してきた。ところが、神津里季生会長が29年7月13日、首相と官邸で会談し、高プロ対象者の長時間抑制策として「104日以上の休日確保」の義務化など修正を要請した。

 神津氏は会談後、記者団に「今の形のまま成立するのは耐えられない。是正が必要だ」と訴えた。修正が受け入れられれば高プロを条件付きで容認する姿勢に転じたのだ。しかし、傘下の産別労組は、神津氏が「変節した」と猛反発、連合は修正要請から2週間で撤回、再び反対に戻った。

 神津氏はなぜ容認に傾いたのか。29年春ごろ、連合の逢見直人事務局長(当時)が「今なら修正の余地がある」という官邸サイドの誘い水に応じ、調整を重ねた。官邸は、連合内で神津氏よりも影響力があり、次期会長の呼び声も高かった逢見氏を口説けば、連合をまとめられると踏んだ。事実、神津氏は、官邸−逢見ラインに歩調を合わせるように、そのまま官邸に飛び込んでいったという。

 「脇が甘かった」。連合幹部は、残業時間規制などを実現したい連合の足元を見透かした官邸側の作戦にはまった神津、逢見両氏に対し、こう漏らす。

 昨年10月に会長を続投した神津氏は今月10日、働き方改革実現に向けた国会内の集会で、過去の迷走を吹っ切るかのように高プロを批判した。

 「スジの悪いものが残っている。こうした空虚なもののせいで、大事な長時間労働是正がないがしろにされることは、絶対にあってはならない」

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 政府は、連合の賛成を得られないまま法案を国会に提出した。だが、裁量労働制に関する不適切なデータ問題や、厚生労働省東京労働局の勝田智明局長の是正勧告をめぐる失言が足を引っ張る。勝田氏は10日の参院厚労委員会で「局長の権限をいたずらに行使するような発言であり、極めて不適切」と改めて陳謝したが、野党は批判を浴びせる。「厚労省は国民の信頼を失っている。法案を撤回すべきだ」

 野党はまた、高プロを削除した対案を準備している。働き方改革関連法案の行方は、2度も廃案になり27年9月に「三度目の正直」で成立し「呪われた法案」と揶揄(やゆ)された改正労働者派遣法の二の舞いになりそうな予感が漂い始めた。=おわり

 この企画は岡田浩明、田村龍彦が担当しました。