人材をつなぎ留めるため賃上げに踏み切らざるを得ないのが実情(イメージ)

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 2018年春闘で中堅・中小企業の組合によるベースアップ(ベア)要求が広がっている。その一方、懸念されるのは業績改善を伴わない「防衛的な賃上げ」がますます色濃くなる現状だ。中小企業の雇用が逼迫(ひっぱく)するなか、人材をつなぎ留めるため賃上げに踏み切らざるを得ないのが実情だが、無理な賃上げは経営を圧迫する。成果を上げるまで時間を要する生産性向上策と同時進行でいかに取り組むかが問われている。

4割が底上げ
 機械や金属関連の中小労組を多く抱える、ものづくり産業労働組合(JAM)によると3日時点で、傘下1564組合の4割強に当たる710組合が、基本給を底上げするベアに相当する賃金改善を要求した。ベアを明示している組合数は3月初め時点から87増えた。

 一方、日本商工会議所の調査からは業績改善を伴わない賃上げが広がる実情が浮かび上がる。17年度に所定内賃金の引き上げを実施した企業のうち、「業績改善がみられないが賃上げを実施した」との回答割合は35・6%。「業績が改善しているため賃上げを実施する」の24%を大きく上回る。

小売業で切実
 業種別にみても「業績改善を伴った前向きな賃上げ」が「防衛的な賃上げ」の回答割合を上回るのは、都市部を中心とした再開発や2020年の東京五輪・パラリンピック特需が見込まれる建設業のみ。原材料や燃料費の上昇に直面する製造業、販売競争が激化する小売業など他業種では軒並み「防衛的な賃上げ」が「前向きな賃上げ」を上回る。調査からは「販売価格の下落で、売り上げは悪化しているが、人材をつなぎとめるには賃上げを実施せざるを得ない」といった切実な声が聞かれる。

迫る規制強化
 日商の三村明夫会頭は人手不足をはじめとする賃金上昇圧力が、今後も強まることへの懸念を示す。生産年齢人口の減少に加え、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の導入といった規制強化も目前に迫るからだ。「従来の発想の延長線上では今後の賃金問題を克服できない」と指摘。「生産性向上をはじめ取引価格の適正化などあらゆる策を講じなければならない」と訴える。
(文・神崎明子)