転職をしましたが、なじめません(写真: Fast&Slow / PIXTA)

結婚・出産で大きく変化する女子の人生は、右にも左にも選択肢だらけ。20代はもちろん、30代になっても迷いは増すばかり。いったいどの道を選べば幸せに近づけるのか? 元リクルート“最強の母”堂薗稚子さんがお答えします。
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【ご相談】
1月、30歳で初めての転職をしました。それまで勤めていた会社でも、十分に仕事は面白かったのですが、同じ業界でもう少し会社規模が小さく、裁量の大きそうな会社で、もっと力を伸ばしたいと思ったからです。そして念願が叶い、リーダー職で採用され、新天地で勤務を始めました。
ところが、まったくなじめないのです。新卒採用がメインの企業だからか、中途採用者に対しては、「お手並み拝見」といった冷たい態度で遠巻きに見ている感じです。出来上がった人間関係には溶け込めず、ひとりでぽつんとデスクに座ってランチすることも多く、こちらから頑張って声をかけなければ近寄ってくる人もいません。
業務上も、「これは、こうすることに決まっています」などと、私のやり方を全否定されることも。最初だけかと思ったのですが、2カ月経ってもほとんど変化がありません。陰湿ないじめがある、とかではないのですが、ものすごく居心地が悪いのです。希望を持って転職してきたので、ぜひ前向きに楽しく働きたいです。周囲とのかかわり方や心の持ち方について、アドバイスいただけないでしょうか。

誰とどんなふうに働くかという大問題

まずは、ご転職、おめでとうございます。「今いる場所が不満だ」というのではなくて、前向きな選択、すばらしいと思います。リーダー職を任されるなんて、まさに新しいステージの始まりですね。


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そんな中でのあなたの苦しさ、お察しします。会社には業務・仕事だけをしに行くわけではなくて、誰とどんなふうに働くか、ということも、モチベーションやパフォーマンスに影響しますよね。

慣れない仕事を覚えていくだけでなく、人間関係を新しく作り、そのうえ、リーダーとしての責任もあるわけですから、悩んでしまうのもとてもよくわかります。

転職しなくとも、部署や地域を異動するときにも同じようなことがありえます。私は、営業から商品企画の部署に異動したとき、あいさつに行って、「シマ」の人たちが冷ややかに私を眺めた視線が、忘れられません。

「営業しかやってこなかったあなたに、何ができるのかしら?」という雰囲気。私自身、肩に力が入っていたこともあって、半年くらいはつらかった記憶のほうが多いです。新しい環境で、それまでに培ったチカラだけでは通用しないという事実を目の当たりにすると、なんとも言えず落ち込むし、挽回しようと張り切れば空回りばかり。味方が近くにいないように感じて、吐き出し先もありませんでしたね。

新卒採用がメインの企業は、新人時代から「そこにある文化が常識」とばかりに仕込まれ、年々、文化は強化されるようにも思います。

あなたは「好奇の目」で見られている

いくら、「●●社から、すごくできる人が中途で来るってよ」と聞いても、「楽しみ!」というより、「恐れ」や「好奇心」といった、部外者に感じてしまいがちな感情を持ってしまう人もいるでしょう。あなたもきっと、まだ周囲からは「好奇」の目で見られており、あなたの言うとおり、「どんなものか」「お手並み拝見」と値踏みされている最中なのかもしれません。そして、きっとかなりそれは強い視線で、「見ていないようで、じっくり見られている」という状態だと思います。あなたの居心地が悪いのも当然ですが、ここで、その視線に屈してはもったいないですから、機会と捉えて乗り越えてしまいましょう。

話が飛躍してしまいますが、小学校時代を思い起こしてみてください。あなたの通っていた小学校は、転校生がたくさん来ましたか? あなたも転校した経験があるでしょうか? 転職、というのは経験を積んだ大人の「再デビュー」なわけですが、構造は子ども時代の「転校生」と変わらないと思うのです。複雑な設定は少し置いておいて、そう考えてみると、あなたの取るべき行動もシンプルに考えることができるかもしれません。

小さな頃から、それこそ幼稚園・保育園から一緒の子どもたちばかりが進学する小学校というのは、すでに文化が存在しているように思います。特に地方の小学校で、地域のかかわりが濃かったりすると、親や親せきまでが同じ常識の下で動いていて、強固な文化圏が出来上がっていることがあります。親が転勤族ばかりで、新顔ばかり入学、というほうが珍しいかもしれません。

そんな学校に都会から転校生が来たとき、クラスのざわついた気持ちと好奇の目、値踏みする感覚があることは、想像できるでしょう。転校生の立場からすれば、「私はよそ者なんだな」と感じることもありそうです。私は数回転校を経験していますが、会社での異動のときに感じた、「簡単には仲間に入れてやらないぞ」という心情と通じるものがあるように思えてなりません。

さて、もしそんな小学校に転校生として通うとしたら、どう振る舞うと居心地は改善され、自分のポジションを獲得していくことができるでしょうか。子どもの世界は残酷で、過酷です。そう想像してみると、もしかすると、あなたの今後の振る舞いを考えるうえで、参考になる部分があるかもしれません。

”値踏み期間”に、気をつけるべきこと

まず第一に、みんなは「絶対に仲間に入れない」とは思っていない、ということです。あくまで「簡単には」ということで、値踏み期間がある、ということにすぎません。だから、この期間を失敗しないように細心の注意を払って過ごすことが重要です。

失敗といってもいろいろありますが、個人的な経験からいくと、「いちばん最初にニコニコと近づいてくる人には注意」したほうがいいでしょう。

このような、「変化を恐れる」集団の中で、外から来た人に寄ってくるのは、大体は要注意人物です。みなさんも思い当たることがありませんか? その人自体が孤立していたり不満をたくさん抱えていたり、集団の中で疎外されているような人が、「味方が来た」とばかりに近寄ってくるのです。この類の人と親しくしてしまうと、あなたもその一員とみなされてしまう。組織で動くときに損をしてしまうことがあると思ったほうがいいでしょう。どんなに寂しくてもまずは表面的な対応にとどめて様子を見たほうが得策です。

他にも、慎しんだほうがいい行動がいくつかあります。ひとつは、すぐに恋愛対象を見つけないこと。素敵な人がいても、安易に誘いに乗ったり、うっとりしたそぶりを見せてはいけません。「異性に媚びる」とか、下手をすると「セクハラ」「男尊女卑」といった評価をされかねません。

もうひとつ、避けるべきなのは、以前いた場所を称賛し、今いる場所と比べること。職場であなたの値踏みがされているときに、個人的な感情を気軽に口にしたり、得意げに論評したりするのは危険です。

くれぐれも、わかりやすくて損しがちなレッテルを貼られてしまわないよう、自制することです。

そうしたリスクを避けたうえで、どうすべきか。集団があなたを値踏みしているのですから、あなたも存分に値踏みすればよいのです。ひとりぼっちにされ、遠巻きに見られている間に、あなたも集団をじっくり観察してみましょう。

誰の発言に影響力があり、誰の仕事ぶりが評価され、人望があるのは誰で……というのは、外から観察すればよく見えてくるはずです。まずは、それを頭に叩き込んで、動き方を考えていけばいいのです。人間関係や力関係の構図をつかんで、それに応じて、自分がどう振る舞いたいか、どんなポジションでいたいか、見極めてから動きましょう。

そして、よくよく見極めたうえで、影響力のありそうな人の仕事に、一枚かませてもらうように働きかけてみてください。そうやって得られた仕事を、大小にかかわらず丁寧に、あなたの力を存分に発揮しながら遂行すれば、少しずつ、警戒心以上の気持ちを持ってもらえるようになると思います。そして、その積み重ねによって、いつの間にかきっと、あなたの力はフラットに評価されるようになり、組織の中に居場所ができているでしょう。

そうなってしまえば、値踏み時代は終了です。組織の中で、わかってもらうべき人たちにきちんとわかってもらうことで、もしかすると、新卒で入社したとき以上に力を発揮しやすい環境を手に入れることもできるかもしれません。

「まっさら」な状態からプロデュースするチャンス

出来上がった集団に入るということは、「出来上がった力関係」の中に、自分の居場所をつくる、ということでもあると思います。もちろん、難しさはありますが、過去の自分が組織の中で失敗したと思う振る舞いを是正することも、「こうありたかった」と考える自分像を一からつくってみることもできる。人間関係も自分の見られ方もまっさらなのですから、自分で自分をプロデュースできてしまうともいえるでしょう。

そう考えれば、今はまだなじんでいない、という状況は、まだ再デビュー準備期間。やみくもに仲間に入れてもらおうとするのは実はあまり賢くないかもしれない。大きなチャンスを前にしていると考えるほうがいいと思いますよ。

今の時代、そんな閉鎖的な組織でどうするのだ、とか、業務経験やスキルが評価されて転職したのだから成果で勝負だ、とか、さまざまなご意見があるでしょう。でも、出来上がった集団がそこに入っている人に対して、意地悪く見える振る舞いをしたり、警戒心を強く抱いたりするのは、不変の条理だと思うのです。

賢く振る舞って、十分に見極め期間を持った後に、存分にこれまでのスキルや経験を生かしていけばよいと思いますよ。そして、いつの間にか、集団にどっぷりなじんで、新しく来た人を値踏みしてしまう自分を感じたら……。「なじみすぎている!」と自分を戒めていけたらいいですね。