西武鉄道の所沢駅(埼玉県所沢市くすのき台)で西武と西武が顧客争奪戦を繰り広げている。

 西武ホールディングス(HD)は3月に所沢駅東口に駅ビル「グランエミオ所沢」をオープンしたが、西口にはセゾン・グループから離れ、セブン&アイ・HD傘下となったそごう・西武の西武所沢店がある。同じ業態の両店舗がしのぎを削る展開になっている。(黄金崎元)

■魅力ある街に

 「西武鉄道の総力を結集して、グランエミオ所沢を建設した」

 3月2日のオープンであいさつした西武HDの後藤高志社長はこう宣言した。所沢駅は西武池袋線と西武新宿線の結節点だが、駅に直結する商業施設がなく、利用者が通過する街となっていた。

 所沢を魅力ある街に生まれ変わらせようと建設したのがグランエミオ所沢で、施設内にはレストランや衣料品、食品など77店舗が入るほか、所沢市役所のサービスコーナーやパスポートセンターもあり、利便性が高まった。

 3月下旬にグランエミオ所沢で買い物をしていた60代の女性は「30年以上、駅近くに住んでいるが、街の雰囲気が大きく変わった。これまで東口に商業施設がなく、西口まで行かなければならなかったが、グランエミオのオープンで便利になった」と歓迎する。

■てこ入れ

 グランエミオ所沢の出店のあおりを受ける恐れがあるのが西武所沢店だ。同店とグランエミオ所沢は同じ西武グループとみられがちだが、資本関係はない。西武百貨店は西武鉄道からセゾン・グループ入りした後、同グループの経営危機を経て平成18年にセブン&アイ・HD傘下となった。

 百貨店はショッピングセンターや専門店との競争激化で苦戦しており、西武所沢店も昨春、百貨店として初めて1階と地下1階の2フロアを食品売り場に全面改装するなど、てこ入れを図っていた。西武・そごう広報は取材に対し「今のところは大きな影響はない」としている。

■挟み撃ち

 攻める西武鉄道は32年夏にグランエミオ所沢の第2期を開業予定で40店舗を追加オープンする。さらに西武所沢店の裏側にも広域集客型の商業施設を核とした大規模開発を進め、2020年代半ばに完成させる予定だ。西武所沢店は“挟み撃ち”されることになる。

 元をたどれば、同じグループだったグランエミオ所沢と西武所沢店。それぞれの店舗による販売競争について、両社の広報は「ライバルとは思っていない」「街の発展でお互いの顧客が増えれば」と口をそろえるが、地元商店街関係者は「グランエミオは駅に直結していて、専門店も充実している。(西武所沢店は)大打撃になる」とグランエミオ所沢に軍配を上げる。

 ただ、所沢駅の1日あたりの乗降客数約10万人は再開発が終わる2020年代半ばに約13万人になると見込まれている。両社のもくろみ通りに消費者が増え“共存共栄”が成り立つ可能性を指摘する声もある。