三菱自動車が正式発売した新型車「エクリプスクロス」(筆者撮影)

日本のみならず、世界の自動車市場でSUV(スポーツ多目的車)の人気が高まっている。2010年、全世界におけるSUV市場は1047万台程度であったものが、2018年には2800万台(出典/HIS Automotive)に届こうかという勢いにまで成長している。

コンパクトSUVが着実に市場規模を拡大している

中でも着実に市場規模を拡大しているのが、三菱自動車が3月1日に国内で正式発売した新型車「エクリプスクロス」が属するコンパクトSUV。特徴はボディサイズが比較的小さいことだ。


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もっともコンパクトSUV が“小さい”といっても車幅は1800丱ラスで全高にしても1600个魃曚┐襪發里大半。よって日本では3ナンバーになるが、全長が日本の道路運送車両法における5ナンバーサイズ(小型自動車/4700mm以下)にとどまっている車種が多いことから、狭い街中でも運転や駐車がしやすい。これは欧州でも言えることで、諸外国の都市部では駐車スペースが思いのほか狭いため、全長の短さが日常の使い勝手を左右する重要な要素のひとつになっている。ちなみにエクリプスクロスのスリーサイズは全長4405×全幅1805×全高1685mmだ。

また、ボディサイズがコンパクトであることから駆動方式を4WDとしても車両重量がそれほどかさまず1500〜1600kg台にとどまる。よって排気量のそれほど大きくないエンジンでも、アクセルレスポンスに優れる小径ターボチャージャーやハイブリッドシステムを組み合わせることで十分な走行性能を発揮する。加えて小さな排気量は自動車税でも有利だ。

「エクリプスクロス」は前輪駆動のFFモデルと4輪駆動の4WDモデルを用意する。すでに、この「自動車最前線」でも数回登場している話題の一台なので素性はご理解いただいているかもしれないが、簡単におさらいしたい。


電子制御4WDをベースにブレーキ統合制御を活用したS-AWC(筆者撮影)

搭載エンジンは直列4気筒1.5Lターボ(トランスミッションはCVT)。4WDモデルは三菱が誇る車両運動統合制御システム「S-AWC」を組み合わせた電子制御4WDにより4つのタイヤを駆動する。

エクリプスクロスのS-AWCでは前後輪の駆動力配分を一般的な「電子制御カップリング」でまかないつつ、左右輪の駆動力配分を「AYCブレーキ制御/スリップした側の駆動力をブレーキで抑える」で最適化(≑路面への駆動力伝達ロスを減ら)し、運転操作や路面状況に応じて駆動力を柔軟に変化させることで安定した走行性能を発揮する。


シフトノブの右側に配置されたS-AWCの「ドライブモード」のスイッチ(筆者撮影)

このS-AWCの特性は「ドライブモード」でAUTO/スノー/グラベルの3つからドライバーが任意で選択する。高度なシステムながら最小回転半径は悪化せず5.4mを確保。短い前後オーバーハングとの組み合わせにより取り回しの良さも美点だ。

S-AWCに限らずこうした電子制御システムはどれだけ高度なパーツを用いたかという部分に話題が集中しがちだが、ユーザーからすると難しいことを考えることなく、どれだけ自然な運転フィールが得られるかという部分を大切にしたいというのが本音だろう。

エクリプスクロスを公道で試乗した

今回は発売間もないエクリプスクロスを公道で試乗した。限界性能ではなく、普段の走行環境から見えてくる開発陣が考えた理想の世界と、われわれユーザーが公道を走行して感じ取れる現実の世界にはギャップはないのか、エクリプスクロスの生みの親でありプログラムダイレクターである山内裕司氏(三菱自動車)に聞いた。


リヤワイパーはルーフスポイラーの奥に格納しデザイン性と両立(筆者撮影)

山内氏がエクリプスクロスで表現したかった走行性能はずばり「上質さ」であるという。

山内氏の示す上質とは、なにも高級な部品を使えばいいということではなくて、それこそディーラーで試乗するという限られた状況でもスッと馴染む洗練された世界をイメージしている。

具体的には、走行時に発生する振動や騒音の類いは乗ってすぐに誰にでもわかるものだが、ハンドリング性能に特化した部分で評価を求めようとすると、とたんにむずかしくなってしまう。よって、エクリプスクロスでは車内で感じられるさまざまな「音」の量を抑えつつ、同時に不快な振動も抑え、発生する音域にしても角がなくまろやかな音に統一することで上質さを表現することを目指した。


試乗した最上級グレード「Gプラスパッケージ」のインテリア(筆者撮影)

確かにそれは試乗舞台となった箱根の山道(所々路面が荒れていてロードノイズが大きくなりやすい状況)でも感じられた。また、なんでも音や振動を抑えこめば上質かといえばそうではなく、たとえば路面の変化は音(ロードノイズ)や振動(ステアリングやシートの微振動など)としてドライバーにしっかり伝える必要がある。

雨天時の滑りやすい路面で運転支援が期待できる技術としてABSやASC(いわゆるESC/車両挙動安定装置)を例にすると、ペダルから伝わる振動やそれらを動かす電動アクチュエーター類の作動音は路面状況の悪化とタイヤの摩擦円が限界に達していることをドライバーに伝えるツールであり、残すべき要素として考えられている。

自動化レベルの向上に重要な要素

三菱の4WD技術や電子制御化された車両制御システムは、モータースポーツの世界や、かつての市販車であるランサー・エボリューション(筆者もかつてエボ坤ーナー)や、パジェロ(クロスカントリーSUV)などで有名だが、三菱は最先端の制御技術を持ちながらも、いわばその対極のアナログの世界である音や振動をドライバーとのコミュニケーションツールとしていまだに大切にしている。これはこの先の高度な運転支援技術や運転の自動化レベルの向上にとっても重要な要素だ。


リヤウインドを二分するチューブ式LEDテールランプを採用(筆者撮影)

走行性能について山内氏の理想は「CVTを感じさせないこと」にあるという。CVT/Continuously Variable Transmissionの概念はご存じのとおりで、ベルトとプーリーを用いた無段階に変速するトランスミッションを示す。ドライバーのアクセル開度や踏み込み速度に応じCVT側でエンジン回転数を制御することで、エンジンの最も効率の良くなる回転数領域を引き出しやすく、巡航時の燃費性能向上にも一定のメリットがある。

一方、CVTは時にエンジン回転の高なりが加速力よりも先行する“ラバーバンドフィール”がデメリットと評される。

昨今のコンパクトSUVではCVT搭載車が多いが、エクリプスクロスでは既存のCVTが持つメリットを生かしつつ、デメリットを極力感じさせない制御を組み込んだ。試乗した箱根の山道では険しい登坂路が連続するものの、独自のプーリー制御技術によりラバーバンドフィールを抑え、エンジン回転だけが先行し過ぎないようにしながら、しっかり体感できる加速力を生み出すダイレクトな走行性能を確認できた。ここは前述した「音の制御」との相乗効果も高くて、加速力に応じた車内に入り込むエンジンの透過音もグッと小さい。

三菱初のダウンサイジングターボエンジン

三菱初のダウンサイジングターボである直列4気筒1.5Lエンジンも走行性能の評価を高めた。


国内向けはレギュラーガソリン仕様だが十分な走行性能を持つ(筆者撮影)

車両重量1550kg(4WDモデルの最上級車種/今回の試乗車)に対して、最大パワー/最大トルクは150PS/24.5kgf・mと絶対的な数値は決して大きくないものの、普通に運転しているときにタコメーターが示す常用回転数領域である2000回転台では余力が大きい。

また、この2000回転台では加速力を左右するトルクがすでに最大値を発揮していることから、たとえば登坂路でアクセルを少し踏み足して速度を維持する場合でも、大きく回転数を上げることなく登り切る。


上下二分割のリヤウインドながら後方視界はご覧のように良好(筆者撮影)

一方、急加速時には、ATやDCT(Dual Clutch Transmission)のような有段ギヤが変速するときのように段階的にエンジン回転数を上下させる「ステップシフト制御」が入り、自分のイメージする加速力とエンジン音との連携が図りやすかった。

クルマの動的な部分評価を⽣業とするわれわれテスター陣にとって、運転操作そのものはすでに体になじんでいるものだ。⼀連の動きはまるでスポーツを行うかのごとく⾃然な振る舞いでもある。一方、ユーザー⽬線でクルマを評価した場合に⼤切なことは、サッと乗り込み運転操作をした際、そのクルマがどんな動きをし、そしてドライバーにどんな訴えをかけてくるのかという感性評価であり、そこで感じたものを部分評価と併せて⽂⾔としてまとめ、執筆活動に生かすことが職責であると考えている。

今回公道でエクリプスクロスを走らせた45分間で得られたものは感性評価をするには十分なものだったが、欲を言えば、三菱の誇るS-AWCの違った一面をぜひともじっくり味わってみたくなった。