マネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大氏

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 マネックスグループが巨額の仮想通貨流出問題を起こしたコインチェック(東京都渋谷区)を36億円で買収することを決めた。16日付で全株式を取得して完全子会社化する。経営陣を派遣して再建を急ぐとともに、競争が激化するインターネット証券業界で仮想通貨ビジネスを新たな収益源として取り込む。今後2カ月程度でコインチェックのサービスの全面再開と仮想通貨交換業者としての登録を目指すが、再建には課題が山積みしている。

自社の申請を取り下げ
 「コインチェックは仮想通貨交換ビジネスの先駆者で、世界的なブランドもある」。マネックスグループの松本大社長は、6日の会見でコインチェックの買収理由をこう説明。将来的にIPO(新規株式公開)も視野に入れることを明かした。

 コインチェックの“うまみ”はブランドと高い収益性だ。既に世界で知名度が高く傘下に入れても同社の社名を残す方針。また、コインチェックの資金決済法に基づく2017年3月期の売上高は9億8000万円で、営業利益は7億1900万円と、高い収益性を誇っていた。松本社長は買収により時間を買うことを決め、17年12月に仮想通貨交換業への参入を視野に設立した「マネックスクリプトバンク」の登録申請を取り下げる意向を示している。

 一方で、経営体制の抜本的な見直しは待ったなしだ。金融庁の2度目の業務改善命令で指摘されたのは、取締役会で顧客保護とリスク管理を経営上の最重要課題と位置づけていないことだった。

 新生コインチェックでは監督と執行機能を分離し、内部管理体制を強化する。コインチェック創業者の和田晃一良社長は開発担当の執行役員として残す。創業当初からエンジニアとしてサービス開発に携わってきた和田社長は「どうすればより安全・安心なサービスを提供できるのか。社内の誰よりも理解がある」と自信を見せた。

 コインチェックの社長に就任するマネックスの勝屋敏彦取締役常務執行役は「利用者の信用を取り戻すこと。信用してもらった上で信頼を受ける企業にしていきたい」と抱負を述べたが、その道のりは険しい。

 損害賠償を求める訴訟にどう応えるか。一度落ちた信用をどう取り戻していくのか。金融庁が交換業者への監視を強める中、登録業者として認められるかも不透明な情勢だ。

 松本社長が言う「2カ月」も同社経営陣の目標であって、金融庁が示したものではない。経営体制だけでなく、地に足の付いた経営戦略も早急に示す必要がある。

金融庁、仮想通貨業界への監視を強化
 金融庁は仮想通貨業界への監視を強めている。6日、仮想通貨交換業者3社を一斉処分した。FSHO、エターナルリンクの両社に2カ月間の業務停止命令と業務改善命令を科した。LastRootsには業務改善を命じた。金融庁が仮想通貨交換業者を一斉処分するのは、3月8日に7社を一斉処分したのに続き、これが2回目。

 3社はいずれも改正資金決済法に基づく登録審査中の「みなし業者」。金融庁が立ち入り検査し、顧客資産を管理する体制や資金洗浄(マネーロンダリング)対策などに不備があると判断した。

 コインチェックで仮想通貨NEM(ネム)が流出したのを受け、金融庁は2月初めからみなし業者16社と一部登録業者への立ち入り検査を実施している。みなし業者のうち、CAMPFIREを含め、6社が登録申請を取り下げる意向を示している。

(文=山谷逸平、浅海宏規、碩靖俊)