モデルXの自動運転(米テスラの公式動画サイトより)

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 米電気自動車(EV)専門メーカーのテスラのスポーツ多目的車(SUV)「モデルX」が3月、米カリフォルニア州で起こした自損事故。起動中だった運転支援システムと事故との関連が注目を集める。日本メーカーもこぞって採用する運転支援システムは、ドライバーのストレスを軽減し安全性向上が期待できる。一方、完全自動運転ではないこのシステムへのドライバーの過信に、どう対応するかという課題が浮き彫りになった。

 テスラの運転支援システム「オートパイロット」は前走車に追従するクルーズコントロール、道路の白線の中央を走るレーンキープ、車線変更などの自動機能で構成する。高速道路での利用を前提とし、モデルXの場合、車体を取り囲むように設置した8台のカメラと12個の超音波センサーで「きめ細かい自動制御を可能にした」(テスラの担当者)という。

 記者は先週、モデルXに試乗しオートパイロットを体験する機会を得た。システムを起動させた後もハンドルを握っている必要はあるが、操作は不要。システムが自動で加減速して前走車を追走し、カーブもスムーズに曲がる。

 ウインカーを操作すれば、車線変更も自動で行ってくれる。1時間程度の試乗体験だったが、ハンドルやアクセルをどの程度動かすかを判断して操作するという手間が省けることによるストレス軽減のメリットは大きいと感じた。

 テスラはモデルXのカリフォルニア州での事故について、車両のコンピューターログ(記録)を復旧させ、事故発生時の状況を説明した。

 それによるとドライバーはその日、運転を始めてから、ハンドルに手を触れていない時に発せられる警告表示を数回、警告音声を1回受けていた。

 また衝突前の約6秒間、ハンドルに手を触れていなかった。追突した中央分離帯を150メートルにわたり目視できる状態にあったが、その間に衝突回避行動をとらなかったという。

 オートパイロットでは、緊急時はドライバーがハンドルを握り対処することが大前提。テスラの説明が事実であれば、今回の事故ではドライバーが必要な措置をとらなかったことになる。自動車業界関係者は「ドライバーのシステムへの過信と不注意が一つの要因になったのではないか」と声をそろえる。

 一方、ドライバーの注意を喚起して運転に引き戻す仕組みは、「さらに工夫の余地はある」との意見もある。現状では視覚や聴覚に訴える形で警告するが、さらにシートを振動させてハンドルを握るよう仕向けたりウエアラブル端末でドライバーの生体情報を把握して注意を促したりできないかとの指摘だ。

 完全自動運転システムを見据え、その前段階である運転支援システムを巡る開発が活発化しており、その出来栄えが完成車メーカーの競争力を左右する。