黒田日銀「新章」、緩和長期化で膨らむ副作用 円高・政治不安 見えぬ出口

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 9日再任された日銀の黒田東彦総裁は物価上昇率2%目標の実現に向け大規模な金融緩和を粘り強く続ける構えだが、導入から5年がたち副作用が膨らんでいる。

 米国の保護主義的な通商政策を受けた円高・株安や、森友学園問題で後ろ盾である安倍晋三首相の求心力が揺らぐなど取り巻く環境は厳しい。出口戦略は当面先になりそうで、むしろ追加緩和に追い込まれるとの観測も浮上している。

 「教育資金が必要ならこちらの投資信託はいかがですか?」。みずほ銀行わらび支店では、これまで裏方だった職員が窓口で金融商品の販売に当たる。IT技術を活用しペーパーレス化を進め、事務作業量を3割削減することで実現した。

 みずほフィナンシャルグループでは店舗網を平成36年度までに2割減らし約400拠点に再編。非金利収入の底上げを図りコンサルティング業務を充実する。

 大規模緩和で超低金利は長期化し、貸し出し業務で利ざや(貸出金利と預金金利の差)を稼ぐビジネスモデルは限界が近い。金融機関の経営が悪化すれば世の中にお金を供給する仲介機能が低下しかねない。3メガバンクは店舗削減やキャッシュレス化も含め高コスト体質からの転換を進める。

 一方、大量の資金供給を通じて金融市場での日銀の存在感がかつてなく巨大化し、市場をゆがめている。

 年80兆円をめどに大規模な国債買い入れを続けた結果、日銀の総資産は500兆円を超え国内総生産(GDP)と同規模に拡大。市場に出回る国債が大幅に減り、保険会社や年金基金など機関投資家の安定的な資産運用が難しい状況だ。上場投資信託(ETF)も6兆円規模で購入しており株価が正しい企業価値を反映しなくなるとの指摘もある。

 だが、こうした副作用があっても早期の出口戦略は難しいとの見方は根強い。

 外国為替市場では米中貿易摩擦への懸念が強まり3月23日には一時1ドル=104円台まで円高が進んだ。トランプ米大統領が11月の中間選挙に向け成果を出そうと中国、メキシコに次ぐ3番目の貿易赤字国である日本に矛先を向ける懸念があり、今後も円高・株安に振れやすい環境が続く。

 また、森友学園問題の影響で安倍首相の3選が危うくなれば政権基盤安定のため円高・株安につながる出口戦略を封じ込める圧力がかかるのは避けられない。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「トランプ氏が再選に向け保護主義的な政策を加速することで状況はさらに悪化する」と指摘。世界的な景気減速につながれば「日銀は今回利上げできない」だけでなく、経済を下支えするためETFの購入拡大や大規模な財政出動を余儀なくされるとみている。

(田辺裕晶、米沢文)