自分は醜いと思い込む…  女性に多い「醜形恐怖症」とは

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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ


他人は何とも思っていないのに、自分の外見や容貌に極度にとらわれてしまうのが

醜形恐怖症

です。

見た目のささいな欠点に思い悩み、精神的な苦痛を感じて日常生活にまで支障をきたしている、という状態を基準に病的とみなされます。

専門的診断では

強迫性障害

の関連障害群に分類されています。

女性に多いという醜形恐怖症…いったいどのような病気なのでしょうか。

醜形恐怖症/身体醜形障害( Body Dysmorphic Disorder : BDD)

顔や身体のさまざまなパーツ、髪形、肌の様子、筋肉のつき方、身体の太さやたるみ、乳房や体毛や性器など自分の身体の形態が、一部あるいは全部に関して「醜いまたは奇異な形をしている」と訴える症状を

「醜形恐怖症」

または

「身体醜形障害」

と呼んでいます。

実際には、「鼻が低い」「目が小さい」のようにいわゆる欠点ともいえる特徴を過剰に悩むタイプと、客観的には何らおかしくないことを本人はすごく悩んでいるというタイプがあります。

そのため、醜形恐怖症は別名「ボディイメージの障害」ともいわれます。

また、「外見的な異常や欠点=人格の欠陥」とまで思い込んでしまうことが多いのも、この病気の特筆すべき症状です。

重症化すると自殺を考えるまでに至るケースもあります。

強迫性障害に分類される「醜形恐怖症」

自分の意に反して繰り返し迫ってくる不快なイメージを

「強迫観念」

といいます。

そして、この強迫観念から起こる不安な気持ちから「〇〇しないではいられない」という行為に及ぶことが

「強迫行為」

さらに、強迫観念と強迫行為を繰り返すのが

「強迫性障害:OCD(Obsessive Compulsive Disorder)」

と呼ばれる精神疾患です。

精神医学では醜形恐怖症は「強迫性障害とその関連障害群」に分類されています。

見た目や身体の形態が本人にとって「異常」や「欠陥」という思いにとらわれている点が「強迫観念」に相当します。

その結果としての「強迫行為」には次のような行為が挙げられます。

鏡を頻繁に見たり、逆に過剰に鏡を避けたりする

帽子やマスク、濃いメイクやサングラスなどで気になる部位を隠す

ほかの人に自分はおかしくないか、繰り返し尋ねる

美容整形や歯科矯正など医学的処置を施すが、満足できず繰り返したり、法的に訴えたりする

人と接する場所や公衆の面前に出ることを避ける

こうした行為を、何度も繰り返さないといられないようになります。

挙句に「こんな外見では人前に出られない」と、引きこもりや社会活動からの撤退へとエスカレートします。

発症の契機

身体醜形障害は12〜13歳ころの思春期の発症が多いとされ、男性よりも女性に発症しやすいといいます。

平均発症年齢は16〜17歳といわれています。

醜形恐怖症は「こうありたい」と願う自分の理想と現実とのギャップに衝撃を受け、コンプレックスに陥っていることが、発症の根底にある心理状態でしょう。

これは、強迫性障害が純粋なまでの完全主義に由来するのと同じような状態です。

ギャップが不安や自分への嫌悪感となり、それを打ち消そうと強迫行為を繰り返すうちに、悪循環を招いていきます。

やがてさまざまな面で自信を喪失して抑うつ状態になることも少なくありません。

前述のとおり、最悪のケースでは自殺に至る危険もともなうのです。

しかし、思春期の頃こうした不安を抱く経験は多かれ少なかれ誰にでもあるでしょう。

ですから、本人に病気の知識がなくて誰にも相談していない、周囲の人も察知できない…という状態のまま見過ごされていることも珍しくありません。

醜形恐怖症の治療

このような背景から、醜形恐怖症を抱えていても受診に至る人は多くないと指摘されています。

また、仮に受診に至っても、誰にも理解してもらえなかった辛い経験と他人の評価に過敏、という精神状態が治療の邪魔をすることも少なくありません。

ですから、相談や治療に当たっては、治療スタッフと患者との信頼関係の構築がまずは求められます。

そして、強迫観念と強迫行為とで強化されている悪循環の解消が治療上の目標になります。

治療には、認知行動療法など心理療法と、症状緩和のための薬物療法がおこなわれます。

薬物療法ではおもにSSRI(抗うつ剤の一種)が用いられ、うつ病よりも投与量が多くなる場合もあります。


醜形恐怖症の診療科は精神科です。

かつては「美容形成外科手術をしても満足しない状態が醜形恐怖症」といわれていた時代もあるといいます。

しかし、現在は美容外科手術後に身体へのこだわりが減って、通常の社会生活を送れるようになったという事例もあり、主治医の精神科医はある程度柔軟に対応するように指向されているとのことです。

醜形恐怖症の患者には、子どもの頃「可愛らしかった」人も少なくありません。

親から「可愛いね」「美しいね」といわれ自分のボディイメージが固定され、思春期に醜形恐怖症に進展していった例も少なくないと専門家はいいます。

長所が多く完璧な人ほど、些細な欠点が気になって仕方がないということなのでしょうか。

私たちは、周囲の人の理解が得られにくく一人で思い悩む…そうした病気がある、ということを知っておく必要があります。


【参考】『今日の精神疾患治療指針』より宮地英雄・富岡等「身体醜形障害」(医学書院 2013年)


<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供