直近の調査によると、キアモータース(起亜自動車)の自動車購入に関して、消費者が訪問できるウェブサイトはなんと800も存在していた。

購入プロセスをシンプルにするために、キアは11月にキアン(Kian)というFacebookメッセンジャーのチャットボットをローンチ。自動車購入に関して消費者が求めている情報すべてを、ダイレクトに届けるチャンネルとして使うことが目的だ。ローンチからの4カ月間に、メインのウェブサイトKia.comの3倍のコンバージョンを得ているという。

キアモータースアメリカ(Kia Motors America)のデジタル・ソーシャル・CRMマーケティング部門ナショナルマネージャーであるナタリー・チョイ氏によると、キアンを通してのコンバージョン率は21%であり、メインのウェブサイトを通してのコンバージョンは7%。キアンのコンバージョン率の高さが分かる。

50倍のエンゲージ



消費者たちはキアンに多種多様な質問をぶつけているようだ。ローンチ以来、消費者のエンゲージメントは上昇しており、そのほとんどがキアンによるものだという。これまで60万のメッセージを消費者たちと送受信しており、メッセンジャーというチャンネルだけを比べても、以前と比べて50倍のエンゲージメントとなっているそうだ。

この成果は、キアンが消費者にとって、何か聞きたいことがあるときに質問できる、シンプルかつ単一のコンタクト先として機能しているからだと、チョイ氏は言う。キアンはモバイルエージェンシー、アンシブル(Ansible)とチャットボット技術プラットフォーム、カーラボ(CarLabs)によって作られた。

「我々のウェブサイトは、ほかの自動車メーカーのサイトと非常に似ている。ショッピングツール、クルマを閲覧する方法、載っている情報の種類もすべて同じだ。自動車購入は消費者にとっては大きな買い物なため、これらすべての情報を見通すには非常に多い情報量となっている。その手助けを私たちはしようとしている」と、チョイ氏は語る。

検索もシンプルに



同時に、キアンのおかげで消費者の検索もシンプルになったという。

チョイ氏は「消費者がどのように行動するか知ることで、我々はウェブサイトのアナリティクスを分析するよりも多くの洞察を得ることができる。人々が我々のウェブサイト上で何かをクリックするとき、彼らが何を考えているか、我々は知ることができない。彼らが特定のクルマを、色は赤で探していたとしても、我々はそれを知ることができない。彼らがウェブサイト上のあらゆる場所をクリックし、その行動から推測するしかない」と、説明する。

しかし、キアンならもっと直接的に消費者のニーズが分かる。誰かが「鍵をなくした」と打ち込めば、キアンはどうやって新しい鍵を作ってもらえるかを伝え、ユーザーの近くのディーラーの部品サービス部門に直接つなげることができる。ブレーキから変な音がしていると書き込めば、その原因を説明して、地元のディーラーとつなげてくれる。もしも事故や故障などで道路におけるアシスタントが必要になれば、Kiaがアシスタントポリシーを説明したあと、サービスに関するリンクを送ることができる。購入者が何らかの支払いをする場合であれば、ファイナンスのサイトに誘導してくれる。Kiaはあらゆる質問に対応できるようになっているのだ。またKia自身も検索エンジンとして機能する。在庫を表示したり、競合他社の類似モデルを比較することもできる。

リタゲ広告にも活用



人工知能とマシーンラーニングのおかげで、キアモータースは重要な分析や情報を得られるようになった。それをリターゲティング広告に活かしてもいる。チャットボット・プラットフォームを使って、通常のアナリティクスの上に、マシーンラーニングによって構築されたモデルを動かすことができるようになったのだ。これによってキアは似たような行動を示す消費者グループを特定することができるようになった。

たとえば、ユーザーたちがキアンを使ってキアモータースによる特定のモデル、仮にキアスティンガー(Kia Stinger)とする、を探していれば、彼らをターゲットにして「スティンガー対象の特別セールスがあれば通知メッセージを受け取りたいですか?」と、アプローチすることができる。と、カーラボのマーケティング部門バイスプレジデントであるブレンダン・フリン氏は説明してくれた。全体では、キアはキアンを使ったフォローアップ・メッセージに対して24%の返答率を得ているとのことだ。

フリン氏は「これは消費者が実際に何を欲しいかにもとづいてリーチできるという非常に有意義な能力だ。あからさまなマーケティングとは違う。正しいタイミングで、適切なターゲットに送られる適切なメッセージとなっている」という。

コスト削減にも影響



キアモータースはまたキアンを使うことでコスト削減にもなっているという。チョイ氏は具体的な数字は明らかにしなかった。「チャットボットのおかげでリアルタイムで毎日24時間対応することができるようになった。コールセンターやカスタマーサポートを拡大するための高価なインフラ投資もせずにすんでいる」と、彼女は語った。

キアモータースがAIとチャットボットを使うのはキアンがはじめてではない。キアモータースが最初にチャットボットに取り組んだのは2016年11月だった。彼らはニロハイブリッド(Niro Hybrid)というモデルに合わせてニロボット(NiroBot)というボットをローンチした。しかし、NiroBotはすべてのキアモデルを検索することはできなかった。それから少し経って、去年の夏にはAlexa(アレクサ)とGoogle Home向けにニロボットの対応バージョンをリリースしている。

チャットボット技術はキアモータースにとってますます重要になってきており、会社も投資を継続していると、チョイ氏は言う。具体的な数字は明らかにしなかった。また韓国にある本社にも、チャットボット技術について助言をしており、カスタマーサービス、セールス、コネクテッドカー、ファイナンス部門といったあらゆるビジネスにおいて利用できるということを提言しているとのことだ。

しかし、自社でのAI部門を待つにはまだまだ時間がかかりそうだ。「年比較でのセールスはより厳しい物になってきており、私たちはAI部門を開始するほどの予算を持っていない」と、チョイ氏は言う。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)
Image courtesy of Kia