ニューヨーク・タイムス(The New York Times)は最近になって組織の再編成を行った。それによってプログラマティック広告セールス部門を社のメインのセールス部門のなかに組み込んだ。これほど大規模な再編成は珍しいが、ダイレクトとプログラマティックのセールスチームを統合する動きは、ほかのパブリッシャーたちも見せている。

タイムズにとってこの編成は、ダイレクトセールスチームがあらゆる種類の広告に対して責任を持つことを意味している。そこに、プログラマティック広告オペレーションのチームのサポートが加わるわけだ。メレディス(Meredith)、パンドラ(Pandora)、そして最近ではBuzzFeedといった、ほかのメディア会社たちもプログラマティックをダイレクトセールスチームのポートフォリオに加えている。しかし、彼らの場合は、プライベートマーケットプレイス取引のための独立したプログラマティック広告セールスチームをまだ維持している。

これまで、広告購入先のパブリッシャーひとつから派遣されるセールス担当者が複数いるということに、広告主からの不満が出されていた。ダイレクトとプログラマティックのチーム統合はこれに対処している。あらゆる種類のメディアバイイングに購入側が対応しなければいけない現状に対して、セールス側が歩み寄った形になっている。だからといって問題がすべてシンプルになって解決したわけではない。

大きくなった内部衝突



メディアハブ(Mediahub)のメディアサイエンス部門ディレクターでありシニアバイスプレジデントであるダン・デイビース氏は「統合は、ひとつのまとまった流れを生み出すため起きている。しかし、担当のセールススタッフは、ふたつのラインのビジネスについて知っておかなければいけなくなる。それによって、ひとりのスタッフのなかでどちらを優先するかという問題が生まれる」という。

パブリッシャーたちのダイレクトセールスのスタッフたちがプログラマティックセールスのスタッフをミーティングに連れてくるようになったことを、数年前からデイビース氏は気づきはじめた。当時はそれで問題はなかった。ブランドたちはプログラマティックにどんどんと資金を投入しはじめた時期だったし、プログラマティックの広告運営をよく知っているスタッフがミーティングにいることは助けになった。

しかし、このふたつのチームが同席することは問題も抱えていた。所属する会社は同じかもしれないが、ダイレクトとプログラマティックのセールススタッフたちはどちらが主導権を握るかという点で競争することがあったのだ。

デイビーズ氏は「ダイレクトのセールススタッフが、わざとプログラマティックのセールススタッフを外してしまうということが、何回かあった。そこまで内部での衝突が大きくなったのを目撃したことがある」と語った。

各社における問題解決



パブリッシャーからのセールススタッフをひとりに絞ることで、そういった内部の衝突を取り除こうとしているわけだ。タイムズがプログラマティック広告チームをダイレクトセールスの一部に入れたのもそういった狙いだと、アドテク企業のエグゼクティブのひとりは語ってくれた。また、BuzzFeedの場合は、プログラマティック自体を早い段階からセールスチーム全体にオープンにすることで、そういう衝突を事前に防いで来た。

メレディスも3年半前に社内における敵対関係を解消しようとした。そして、ダイレクトセールスのチームがアカウントを運営し、プログラマティックのスペシャリストをトレーニングするという決定につながったと、メレディスのデータ部門、プログラマティックソリューションズ部門のバイスプレジデントであるチップ・シェンク氏は説明してくれた。

パンドラでの仕組みも似ている。ダイレクトセールスのアカウントがフットボールで言うところの「クオーターバック」として全体を率いると、広告戦略シニアバイスプレジデントであるスコット・ウォーカー氏は言った。パンドラにはプログラマティックセールスチームがまだ存在しているが、このチームは完全にプライベートマーケットプレイス取引専用だという。

訓練を実施する企業も



またバウアー・メディア(Bauer Media)のセールスチームも同様にプリントからネイティブ、そしてプログラマティックまですべてを販売すると、プログラマティックセールスと戦略部門のシニアディレクターであるケイリー・ルイス氏は言う。ルイス氏はバウアーメディアのなかのデジタル部門であるバウアー・エクセル・メディア(Bauer Xcel Media)に属する。

ダイレクトのセールススタッフがプログラマティック広告を売ることには、バイヤー側を不安にさせる要素もある。それは「プログラマティック広告は値段が決まっておらず不確定要素が大きいため、あらかじめ決まった値段で最初に料金を請求できる従来の広告パッケージを売る方にセールススタッフが傾くのではないか」という懸念だと、デイビーズ氏は言う。また、アドフラウドやブランドセーフティといった観点からプログラマティック広告について懐疑的な広告主を、ダイレクトセールスのスタッフが知識不足から説得できない可能性もある。

パブリッシャーたちはセールスチームを定期的にトレーニングすることで、この問題に取り組もうとしているようだ。パンドラでは現状のプロダクトや処理方法に関するアップデートから、プログラマティック音声広告といった新しい機能の説明まで、さまざまなプログラマティック広告に関するトレーニングセッションの受講を四半期ごとに義務化している。パンドラが抱えるプログラマティック広告セールスチームもこのトレーニングの内容を開発する手助けをしているのだそうだ。トレーニング自体はウェブ上の講義形式やスタッフによる直接的なトレーニングがあるという。

セールスの補佐という立場



しかし、トレーニングをしたからといって、すべてが解決するわけではない。プログラマティックについて理解を得ることで、セールススタッフはそれがダイレクトのセールスと競合しないと納得するかもしれないし、納得しないかもしれない。それどころか代わりに、そこで得た知識を利用して、広告主がプログラマティックへと資金を回さないように説得するかもしれない。だからこそパブリッシャーたちは、プログラマティック広告のセールススタッフを、補佐的な役職におけるスペシャリストとして編成するわけだ。

「私たちは、ひとつの案件に対して、ひとり(のセールス)が監督することになっている。そこからバイイングをマネジメントできる最適な人材に手渡す。もしそれがプログラティックであればプログラマティックの人材に渡す」と、ルイス氏は言う。

メレディスでは、プログラマティック部門とダイレクト部門の両方のスタッフがセールス関連の電話ミーティングの大半に出席している、とシェンク氏は言う。ダイレクトのセールススタッフたちは、プログラマティック関連のミーティングの大半に参加しているし、プログラマティックのセールススタッフもまたダイレクトセールスに関するミーティングの多くに参加しているという。

「プログラマティックスペシャリストはセールスの補佐だ。彼らは(自動広告バイキング用にブランドが使用するデマンドサイドの)プラットフォームと話をし、より大きなプログラムの使用を支える。またプログラマティックのセールスチームも自分たちの案件を持つが、それはプログラマティックのみになる。それは、ビジネス全体ではほんの一部に過ぎない」と、シェンク氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)