詳細は後述するが「健康食品」のネット通販を手掛ける企業に、北の達人コーポレーション(以下、北の達人)がある。本社は北海道札幌市。その北の達人が先月末にこう発表した。「今春入社の総合職者(3名)の初任給を昨年に比べ36%(9万円)引き上げ、34万円とする。また総合職者全体の賃金体系を21・2%底上げするベースアップに踏み切る」。今春入社の3人組の喜色満面が目に浮かぶ。なにしろ昨春入社組に比べると、年収で108万円増えるのである。

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 厚労省によると、大卒入社の初任給は20万円前後。

 私が同社を取材したのは、2014年初春。札幌証券取引所に単独上場の(15年に東証1部に移行)社員総数26名(現在75名)、平均年収355万円(429万円)の時代だった。取材をして強く印象に残ったのは「拘りの強い企業」であった。商品群にそれは端的に現れていた。例えばこんな具合である。

 「健康食品:オリゴ糖製品。ブドウ糖や果糖など複数糖の結合体を使用していた。紅珠漢。単位当たりのビタミンCが持つ効能の20倍/ビタミンEでは50倍が認められる、植物ライチから抽出したポリフェノールが生かされていた」

 「スキンケア化粧品は、北海道産の甜菜糖成分を活用していた」

 当時、話を聞いたアナリストは「絞り込んだ特異独自製品へのこだわりが、購入層を牽引している。北海道のまさに小さな巨人と呼ぶにふさわしい」としたことをいまでもはっきり記憶している。

 では今回の「初任給34万円」は、どう捉えたらよいのか。会社側では「最近はベンチャー企業間の人材獲得競争が激しくなってきており、優秀な若手を採用できれば十分に意味がある」と、公式コメントを発している。否定はしない。しかし私はこう見ている。周知の通り「ラッシュ」の表現が当てはまるほど「健康食品」のこれでもか、といった具合の競争が繰り広げられている。つまりライバルの相次ぐ登場である。しかし北の達人に「素材に拘った健康食品」路線を変えるつもりは毛頭ない。だが「競争の渦」の中に沈み込むのは絶対に避けたい。打って出た策が、少数精鋭(一人当たり営業利益1900万円)ゆえの「34万円」実現による「北の達人ここにあり」というこだわりのプロパガンダである。