実家の相続で使える"家なき子特例"の中身

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■相続時、親の宅地を80%減額して評価

相続税の基礎控除額が2015年に引き下げられ、ささやかなマイホームを持つ人も課税の射程内に入ってきた。

親が持ち家を持っているものの、「『小規模宅地等の特例』を適用できるから自分は大丈夫」と考えている人もいるだろう。小規模宅地等の特例は、被相続人(亡くなった人)が住んでいた自宅を相続する場合、一定の条件を満たせば宅地の評価額を330平方メートルまで80%減額できる制度。たとえば5000万円の宅地に特例が適用されれば、評価額は1000万円になる。

ただ、安心するのは早い。服部梢弁護士はこう警告する。

「小規模宅地等の特例には落とし穴があります。適用できると思って油断していたら、実際は適用されずに多額の相続税を払うことになったケースは珍しくありません」

宅地を相続する相続人別に解説しよう。わかりやすいのは、被相続人の配偶者が宅地を相続するとき。この場合は無条件で特例を適用できる。

■親の介護で実家に泊まり込むと「別居」扱いに

注意したいのは、配偶者以外の相続人が宅地を相続するときだ。たとえば親と同居している子が相続する場合、相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内)まで親の自宅を所有かつ居住していれば適用対象になる。

問題は、どこから同居になるか。たとえば自宅を持つ子が毎週末、親の介護のために実家に泊まり込む二重生活をしているのは別居と評価されてしまう。

申告期限まで保有・居住という条件も見落としがちだ。

「ほかにも多額の相続財産があり、相続税の支払いがほぼ確定している人が、納税資金をつくるため、申告期限前に親の自宅を売却するケースがあります。そうなると特例を適用できない可能性があります」

■いわゆる「家なき子特例」は適用対象だが……

別居の相続人も特例が使えることがある。ただ、相続開始前3年は相続人が本人や配偶者の持ち家に住んでおらず、相続後に宅地を申告期限まで所有することが条件。つまり親が死ぬ前の3年間、賃貸暮らしだった子(いわゆる「家なき子」)は、特例適用対象だ。

「見落としがちな点は、相続人が配偶者の持ち家に住んでいる場合は適用外ということ。たとえば夫所有の家に住む妻の親が死亡。妻は自分の持ち家に住んでいませんが、夫の持ち家で暮らしているため、条件を満たさず、実家に特例を適用できません」

18年4月からの税制改正においても、「家なき子」特例の利用をした節税策の一部を封じる方向で、改正が行われた。

小規模宅地等の特例には、もう1つ落とし穴がある。特例の適用を受けるためには、原則として遺産分割協議を相続税の申告期限内に成立させる必要がある。つまり自分が特例を受けるつもりでも、ほかの相続人とトラブルになって遺産分割協議が長引けば、特例適用が“絵に描いた餅”になるおそれがある。くれぐれも注意したい。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 服部 梢)