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亡くなった後からでは大変な手続きが沢山ある。もし余命1年と宣告されたら、最優先にやるべきこととは何か――。

■遺書の保管場所「貸金庫」は避ける

自分が動かなければいけない終い方の準備は最初の半年にやっておくべきでしょう。ここでは、その半年間に最低やっておくべきことを解説しましょう。「終活」が準備不足だといろいろな問題が起こります。自分の死後に家族がもめるところなど、誰しも想像したくないものです。

死後に一番もめやすいのが遺産分割です。「お父さんが亡くなると、自分はいくら貰えるのだろう」と家族の間で腹の探り合いが始まることがあります。とくに親の余命が幾ばくもないとわかると、「お父さ〜ん」とすり寄って、親の財産をあてにする子も出てきます。「相続財産が少ないからもめないだろう」と考えるのは早計で、裁判所による調停件数(司法統計・平成27年度)の約32%が1000万円以下、5000万円以下は約44%と、5000万円以下で76%を占めています。親は差をつけたくないと考えても、看病や介護などの負担を考えると「平等は反対に不平等」と思う子もいます。

とくに遺産がわずかな預貯金と分けづらい不動産の場合は“争続”にならないためにも遺言書を書き、不動産をどうするのかを決めておくことが大事です。遺言書には公正証書遺言書と自筆証書遺言書がありますが、費用や手間はかかるものの公正証書遺言書のほうが不備が少なく本人の意思も明確なため、死後の混乱は避けられます。

自筆証書遺言書は、死後に家族が見つけなければ意味がありません。保管場所や遺言書の存在を信頼できる人に伝えておくことが必要です。とくに要注意なのが金融機関の貸金庫。預ければひと安心と考えがちですが、費用もかかりますし、何より利用者が死亡すると相続手続きが終わるまで、その貸金庫を開けることができません。

自分の死後、家族にどのくらいのお金が必要なのか試算しておくことは重要です。すぐに必要になるのは葬儀費用やお布施、法要の費用です。死後にかかる費用を試算しておけば、支払われる死亡保険金などでまかなえるものも含め、どこまで事前に準備しておけばいいのかわかります。金融機関は名義人の死亡事実がわかると口座を凍結します。凍結後でも医療費や葬儀費用は所定の手続きをすることで引き出せることがあります。それ以外の預金引き出しには「相続人」を確定するために被相続人(死亡した人)の「出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本」が必要になりますので、戸籍謄本を事前に入手しておけば、必要になったときにはそれをもとに家族が取り直し、スムーズに相続手続きに入れます。

■つい忘れてしまう「デジタル遺品」の整理

また、使っていない口座は体が動くうちに整理しましょう。普通預金口座の解約は、同じ銀行であれば口座のない支店でもできますが、単体の定期預金など一部の口座は取引店以外で解約できないこともあります。解約したい銀行口座の支店が遠方のときは、手数料が必要になりますが近くの銀行から解約したい口座のある銀行へ取り立ててもらう「代金取り立て」が可能です。

クレジットカードの解約は金融機関口座の解約と同様に死後では大変です。自身が解約手続きする場合は本人確認が取れれば手続きはスムーズですが、それを家族が行う場合、郵送されてくる申請書類に記載し、本人との関係を証明する書類の提出が必要になります。未決済の借り入れは計画的に終わらせます。

忘れがちなのが「デジタル遺品」ともいえるパソコンのデータ整理です。WEBサイトのブログ、SNSなどにアカウントを持ち、それを家族が知らない場合や死後自分の情報を放置したくなければ、その閉じ方も決めておきます。身近な人に頼む場合は、ブログやSNSアカウント名、ID、パスワード、メールアドレスなどがわかるリストを作成しておきましょう。

家族を困らせないという点で、あらかじめ葬儀やお墓をどうするべきか考えておくべきです。亡くなった後に、遺族が葬儀社を落ち着いて選ぶ余裕はありません。本人が複数の葬儀社から見積もりを取り検討しておけば、前もって流れを知ることにもなり、費用の概算もつかめます。

また、「一般葬」「家族葬」など葬儀の種類によっても、訃報を知らせる範囲は変わります。「遺族に迷惑がかかるから」と、家族だけの葬儀を希望する人も多いですが、友人の中にはきちんとお別れしたいという人もいます。家族が、『なぜ葬儀に呼んでくれなかったんだ』と親族から責められることもあります。一番よいのは、家族が嫌な思いをしないように配慮したうえで、エンディングノートなどに訃報連絡をしてほしい、もしくはしなくてよい人のリストを作っておくことです。菩提寺の連絡先や遺影に使う写真も準備しておくと家族は助かります。お気に入りの写真を何枚か選び、わかりやすいところにまとめておきましょう。

■「延命治療」可否の意思表示をする

お墓についても「弔う側」の都合を忘れてはいけません。「父親が、景色がいいからと遠方にお墓を買ってしまった。お墓参りをどうすればいいのか」というような相談を受けることがあります。また、本人が海洋散骨を希望しても、遺族は毎年お墓参りをしたいと思っている場合もあって、遺族の大きな負担になる可能性があります。

人生の終い方としてどのように最期を迎えたいかを考えたとき、延命治療の可否を明確にしておくことは重要です。家族が延命治療の判断を迫られたときに困らないためにも、せめて「家族の誰かが自分の死に目に会えない状況になってしまっても、医師にノーと言ってほしい」など、家族全員に、心づもりは伝えておきたいもの。延命治療拒否の意思を示す方法としては、日本尊厳死協会や公証役場で作成する「尊厳死宣言書」があります。ここまでせずとも、確実に意思がわかるようにしておき、保険証と一緒に持ち歩くようにするとよいでしょう。また、臓器提供の意思があるのならば、ドナーカードへ記入し意思表示を明確にしておくといいでしょう。

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▼死ぬ前に主にやっておきたいことチェックリスト

●赤字はとくに重要なもの、忘れがち、見落としがちなもの
家族のための事前準備
・家族が必要となる金額の把握
・不要なモノの処分、残すものの整理・保管
・出生時から現在までの戸籍謄本を取り寄せておく
・ドナーや延命治療の可否に関する書類の準備
金融機関口座・契約関係
・使っていない口座を整理する
・株券など有価証券を整理する
・クレジットカードを整理、解約する
・年会費を払う不要な会員契約を解除する
・WEBサイトの閉じ方を決める
・携帯電話の電話帳データを残しておく
相続関係
・自分の遺産を把握
・財産の分割方法→とくに不動産など分けにくいもの
・遺言書(自筆証書遺言書と公正証書遺言書)
・作成した遺言書の保管場所→貸金庫は避ける
・生命保険の活用
葬儀やお墓
・菩提寺や宗派、家紋を把握する
・墓じまいや改葬など先祖のお墓をどうするか考える
・見積もりを取って葬儀社を事前に検討する
・遺影写真の準備をしておく
・自分の死を伝えてほしい人をリストアップ
・送られ方を考える(一般葬、家族葬、直葬)
・お墓、葬儀の費用
(取材をもとに編集部作成)

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明石久美
相続・終活コンサルタント
明石シニアコンサルティング代表、これから相続コンサルネット理事長。ファイナンシャルプランナー。著書に『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』などがある。

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(相続・終活コンサルタント 明石 久美 構成=吉田茂人 撮影=小川 聡 写真=iStock.com)