富士通グループのRFIDタグと手のひら静脈認証を組み合わせたゲート型決済システム

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 販売時点情報管理(POS)レジなど現金を取り扱う機器メーカー各社が、キャッシュレス社会と共存する方法を模索している。日本は現金志向が強く、クレジットカードの手数料が高いなどのキャッシュレス化を阻む壁もあるが、それも時間の問題だ。来るべきキャッシュレス社会でも存在感を示すため、各社は電子マネー向け機器や新しい周辺サービスの開発を進めている。

人手不足に対応
 現金自動預払機(ATM)大手のOKIは、釣り銭を出せる電子マネーチャージ機「CZ―20シリーズ」を商品群に加えた。量販店の最大の悩みは人手不足。キャッシュレス化に伴う多様な決済方法は顧客の利便性を高めるが、レジでの電子マネーチャージなどは店舗の作業効率を下げる。そこで、レジと別のチャージ専用機を提案する。

 また、先の将来の決済やサービス多様化をにらみ、ATM以外の用途に使える“次世代端末”の開発を進める。現金の出し入れやチャージなど基本的な機能を備えたハードウエアで、ソフトウエアを入れ替えることでATMやチケット購入、外貨両替、荷物受け付けなど設置場所に合わせた使い方を提案する。「いずれキャッシュレス社会は到来する」(鎌上信也社長)と見ており、準備を怠らない。
 
 富士通フロンテックは、富士通グループで連携し、無線識別(RFID)タグと手のひら静脈認証を利用したゲート型決済システムを3月に開かれた展示会に参考出展した。タグの付いた商品を買い物かごに入れたままゲートを通過すると、ゲート内に組み込んだリーダーが商品の情報を読み取る仕組み。買い物客は画面で商品を確認し、手のひら静脈による認証を使って決済する。

 ただ、手のひら静脈だけでは、大規模チェーンの会員を認証するのに時間がかかる。そこで、顔認証との組み合わせによる時間短縮も提案する。利用者が端末の前に立った瞬間からカメラで顔を識別し、ある程度候補を絞り込んでから、手のひら静脈で認証する。最大で30万人の中から1人を選ぶ場合でも、実用的な速度で行える。

 POSレジ最大手の東芝テックは、経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の行う実証事業を受託し、流通向けの新しい情報共有システムに取り組んでいる。

情報は宝の山
 2月に、東京都町田市の飲食店やスーパーマーケットで標準フォーマットの電子レシートを採用し、企業の垣根を越えて購買情報を集める実験を実施した。消費者が自分で電子シートのデータ提供を判断し、家計簿管理や健康管理ソフトなどを利用できる。「購買情報は宝の山。情報が集まれば、新しいサービスを開発できるのではないか」と経産省の担当者は期待する。

 また、メーカーから卸、物流センター、店舗までサプライチェーン全体の商品の情報を一元管理するRFIDタグを使った情報共有システムの実証実験にも参画した。食品や日用品にタグを貼り付けることで情報の追跡が容易になり、業務を効率化できる。東芝テックは主力のPOSレジなどの機能を強化しつつ、実証実験やベンチャー企業との連携を通じて新しい分野へビジネスの幅を広げる。

 現金を取り扱う精密機器は、派手ではないが、日本企業が比較的高いシェアを持つ分野だ。時代の変化に追随する力が求められる。